CULTURE | 2023/12/30

「戦争とテクノロジー」「SNSと分断」「2020年代のクリエイティブ」からFINDERSの2023年を振り返る(編集部・神保編)

神保勇揮(FINDERS編集部)

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編集部の赤井に続き、年末年始期間にぜひ読んでいただきたい2023年のFINDERSオススメ記事を紹介します。

今の「戦争とテクノロジー」の話は100年前にもしていた?

2023年がどんな年だったかというと「戦争とテクノロジー(というかAI≒ChatGPT)」一色だったなという印象が強いです。

その意味で1年間ずっと頭の中に残り続けていたのがこの記事でした。

そして戦争は世界中の日常に溶け込む ウクライナと「総動員」とその後の世界

元WIRED編集長、現在は黒鳥社主宰の若林恵さんによる、架空インタビュー形式の名物連載「だえん問答」がFINDERSで一回限りの復活となった寄稿です。博覧強記の若林さんらしく、「この話とこの話がつながるのか!」という発見に満ちあふれつつ、ウクライナ侵攻がどう推移したかなどの知識は不要で、むしろ軍事や国際政治に興味がない人に読んでいただきたいです。

特に、第二次世界大戦前後の時期において、民間であっても多くの活動が否応なく戦争遂行と結びついてしまう、いわゆるハイブリッド戦争に関する議論がなされていたこと。つまり既に100年前にも同じような議論や実践がなされていたにも関わらず、今も同じようなことが繰り返されている構造に衝撃を受けました。2024年も生成AI関連サービスがますます便利に進化していくと思われますが、個人的にも「100年前の戦争とテクノロジー」というテーマは来年以降も折に触れて勉強していきたいと思っています。

「分断の時代」を乗り越えるための倉本圭造対談三部作

ここからは連載記事を中心に、反響が大きかった記事を紹介します。

10年間粛清を続け「伝説の天才」まで降格…「習近平3選」は何がどうヤバいのかを改めて語る 倉本圭造×福島香織対談(1)

大半の人が嫌がる「PTAの悪習」はなぜ改革できない?日本の議論が「無意味な罵り合い」に終わるワケ 倉本圭造×岡田憲治対談

SNSで「敵」の悪口を書き連ね、仲間内だけで褒め合っているだけでは無意味 「本当に社会を変える」のに必要な戦いとは何か?倉本圭造×橋本直子対談(前編)

倉本圭造さんの連載「あたらしい意識高い系をはじめよう」では今年、3つの対談記事を掲載しました。中国政治、PTA運営、難民・入管法問題という、それぞれ全く異なる話題を扱っているようでいて、すべて2010年代を通じて大きな問題でありつづけた「分断」をいかに解消できるかという観点で貫かれており、全て同じ問題意識を共有しています。

「結局のところ、2020年代は分断を超えて実際の戦争が始まってしまった(もちろん「紛争」はそれまでもずっとありましたが)という意味において、事態はより悪化してしまったと言えるわけですが、これらの問題をめぐって当事者ではない人の間でも、X(Twitter)でも毎日のように言い争いが起こっています。そうした中で少しでも対立する意見を受け入れる術はないか、あるいは「意見は対立しているけれど筋が通っていると思える人」を見つけられる一助になれば幸いです。

AIでクリエイティブを加速させるための「4つの指針」

人間がAIに「模倣」ではなく「創造」させるための「4つの指針」AI研究者とアーティストを両方経験して見える風景【AIはクリエイティブの何を変えるのか】

去年の画像生成AIに加えて、今年後半は音楽生成AI「Suno AI」も大きな話題となりました。AIに「◯◯風の作品を作らせる」だけでなく、これまでにないクリエイティブを生み出す一助とするためには何が必要なのか。人間の創造性とAIとの関係の歴史をまとめ、その未来像について考察した著書『創るためのAI 機械と創造性のはてしない物語』を記した徳井直生さんのインタビューで語られた「4つの指針」は、今後もより重要になってくると思います。

2020年代を「やっていく」ためのインタビュー

「state」を開発した清水幹太が語る、 仕事と趣味が切り分けられない時代にクリエイターは何をつくるべきか問題

PARTYやBASSDRUMにおいて数多くの興味深いクリエイティブを生み出してきた清水幹太さんが、個人としてたった一人で開発し運営しているSNS「state」。背景にあるSNSの諸問題もそうですし、「本業を充実させるか副業を頑張るか」問題もそうですし、個人的には「2010年代は本当に終わりを迎えたな…」と感慨深くなったインタビューでした。大量の大きな問題を抱えつつも、2020年代、なんとかやっていかねばなとやる気をもらえる内容になっていると思います。

大きなチームを率いて、役に立たないとわかっていて、誰が買うかもわからないものを作るための秘訣

「すぐには役に立たず、誰が買うかもわからない」初回分が即完売した世界初「一般人が買える量子コンピュータ」はなぜ開発できたか

高須正和さんの連載「高須正和の「テクノロジーから見える社会の変化」」より。自分もこのネタをいただいた時に驚いたのですが、量子コンピュータってもう一般でも購入できるんですね。すぐには役に立たず、誰が買うかもわからない、でも強烈にワクワクはする。そういったプロダクトにコストをかけて販売するというのはかなりリスキーな取り組みではあるわけですが、それを可能にしたエコシステムがどのように成り立っているかを解説しています。

「海外で成功する日本人」の共通点

海外移住に大失敗した日本人に共通する「ある傾向」…円安時代でもチャレンジしたい人に知ってほしいこと

吉田和充さんの連載「オランダ発スロージャーナリズム」より。一時期「円安+海外でのインフレを加味すると、日本と比べてこんなに給料が違う!」という話題が結構盛り上がっていた気がしますが、最近あまり聞かなくなってしまいました。吉田さんにこの話をうかがう際、いつも「(言語・文化を共有する)日本である程度仕事ができなければ、海外で働くのはもっと難しい」とおっしゃります。もちろん、環境次第で活躍できる・できないは人それぞれ大きく変わりますが、今、目の前でできることをしっかりやり遂げるということも常に意識していたいです。

2023年、結局解決しなかったTwitterの「次」どうするか問題

Twitterはいよいよ限界?もう引っ越ししかない?2023年のSNSとの付き合い方を考える

渡辺由佳里さんの連載「幻想と創造の大国、アメリカ」より。イーロン・マスクによるTwitter買収、良くも悪くも強権的な振る舞いによって改善されることもあるのかと思いきや、悪化した点は無数に挙げられる一方、良いところはほとんどなかったですね…。ちなみに来年1月3日朝には渡辺さんによる、この続編的な記事を掲載する予定です。こちらもより一層頭を抱えたくなるような問題を扱うことになるのですが、ぜひお読みいただければと思います。