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BUSINESS | 2025/03/26

「乾燥地科学」で“地球規模の気候変動問題”と“宇宙開発”に取り組む鳥取大学の挑戦

連載:最先端研究×産学融合で日本を変える!「Jイノベ」の挑戦

鳥取大学 研究推進機構・とっとりNEXTイノベーションイニシアティブ(TNII)

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経済産業省では、長期的・持続的な日本経済の発展のため、大学や、高専等の機関を中心とした研究拠点より、企業ネットワークのハブとして活躍している産学連携拠点を評価・選抜 (国際展開型と地域貢献型の2類型) する 「J-Innovation HUB 地域オープンイノベーション拠点選抜事業」 を令和2年度より行っている。また、令和5年度より 「地域の中核大学の産学融合拠点の整備」 についての補助事業終了後から新たにプラットフォーム型としての選抜も始まっている。

令和6年度についても、令和5年6月25日から7月29日までの公募期間中、5件の申請があり、第6回目として地域貢献型1拠点が選抜された。 本連載では、今回新たに地域貢献型拠点に選抜された鳥取大学  研究推進機構・とっとりNEXTイノベーションイニシアティブ(TNII) の取組等を紹介する。

Jイノベ 地域オープンイノベーション拠点選抜制度

J-Innovation HUB 地域オープンイノベーション拠点選抜制度  地域貢献型拠点 ~鳥取大学  研究推進機構・とっとりNEXTイノベーションイニシアティブ(TNII)

鳥取大学は、2018年に研究推進機構 (ORIP) を設立し、研究シーズの発掘・育成や、企業との共同研究を積極的に進め、研究力及び産学連携体制の強化に取り組んできた。さらに2023年には とっとりNEXTイノベーションイニシアティブ (TNII) を設立、組織対組織の共創連携や技術移転、スタートアップ創出機能を強化し、研究成果の社会実装化を進め、社会貢献に寄与する取り組みを推進している。

このように鳥取大学では、ORIPにより研究力のシーズ発掘・育成を行い、その研究成果をTNIIにより社会実装に繋げるという、研究シーズの育成から社会実装をシームレスに推進する体制を構築してきた。

鳥取大学の全体像

「乾燥地科学を活かして社会に貢献する」~地域から世界へ~

鳥取大学の強みである乾燥地科学は、鳥取砂丘での砂丘地農業から発展したものであり、現在、広く普及しているスプリンクラーや防砂林なども同大学の研究から生まれたものだ。そして、この砂丘地農業を乾燥地科学へと発展させ、地球規模で気候変動や食糧問題などの社会問題の解決に貢献。例えば、地球規模での社会問題の解決を目指すSATREPS (JST/JICA) にも3件採択されており、持続可能な土地管理手法 (SLM) によるエチオピアにおける砂漠の緑化の実現や、スーダンにおけるストレス耐性作物育種技術に基づくコムギの育成の実現など、鳥取砂丘から海を越えた地球規模での社会貢献を実現している。こうした研究による社会貢献は同大学に強く根付く伝統であり、大学憲章にも 「知と実践の融合」 が掲げられている。

~世界から地域へ~

このように、乾燥地科学は、気候変動対応領域、砂漠化対処領域、乾燥地農業領域、社会医療領域など様々な学術領域を包含する特殊な環境に対応する総合科学へと発展を遂げてきたが、ORIP・TNIIでは、世界各国で得られた乾燥地科学の知を活かし、再び地域経済を活性化する取り組みを進めている。

例えば、温暖化により深刻化している作物育成において、環境変化に対応した作物の生育を制御するDX園芸システムの構築や、酷暑化などにも対応できるストレス耐性作物の提供など、乾燥地農業技術を活用した貢献を行っている。

また、地域に多く存在する中山間地の土砂災害の問題や、高齢化により深刻化している熱中症の問題についても、乾燥地科学に基づく水・土壌管理技術や、様々な環境下での社会医学の知見などを活用して、地域課題の解決や新たな産業の創出に貢献している。

地域社会を巻き込み地域経済を活性化させる

ORIP・TNIIの強みは、①全学横断体制のハブとなり本学の強みとなる研究を推進していること②地域社会との密接な連携のハブとなり地域密着型で新規産業の創出を促進していること③社会実装を加速する仕組みを提供していることにある。

① 全学横断体制のハブ機能

鳥取大学では、地域の特徴・ニーズに対応した新規の研究領域開拓のため、異分野融合を可能とする全学横断体制を構築して研究を推進している。本拠点内に全学体制の 「サステナブル研究センター」 を設置し、バイオ・フード・オーガニック部門、宇宙イノベーションシステム部門等を設け、プロジェクトを設定して研究を進めている。

また、鳥取大学が世界をリードしている 「乾燥地科学」 を応用して発展させるために 「乾燥地研究センター」 を全学組織の 「国際乾燥地教育研究機構」 に改組し、本拠点と一体となり地域のイノベーション創出を目指して新たな研究領域の開拓を進めている。

鳥取大学乾燥地研究センターの 「アリドドーム実験棟」

② 地域連携のハブ機能として

また、新規事業を創出するため、地域社会を巻き込んだオープンイノベーションを促進している。例えば、鳥取県と協定を締結し、鳥取砂丘と月面の地表の類似性を活用した 「月面実証フィールド」 をキャンパス内に設置し、乾燥地科学を究極の特殊環境である宇宙科学へと発展させ、宇宙産業の創出に向けてALL鳥取体制で取り組んでいる。また、本学は鳥取県下の全19市町村と包括連携協定を締結し、本学と自治体が連携して地域課題の解決に取り組むとともに、アントレプレナー育成教育や経営人材のリカレント教育と地域社会の活性化に取り組む体制を構築している。

鳥取大学乾燥地研究センターの敷地内に設けられた「月面実証フィールド」

③ 社会実装を加速する仕組み

さらに、研究成果の社会実装を加速する仕組みとして、組織対組織の連携も進めている。例えば、ダイキン工業株式会社と包括連携協定 (10年10億円) を締結し、乾燥地科学を活かした新たな空調ソリューションの創出に向けた取組を実施している。

「乾燥地科学」で挑む鳥取大学の挑戦

J-Innovation HUB地域貢献型拠点への選抜にあたり、鳥取大学 乾燥地研究センター 恒川篤史センター長は、今後の展開について以下のようにコメントしている。

「乾燥地科学」には、2つ顔がある。1つ目の顔は、様々な特殊な環境に対応する科学であり、2つ目の顔は、極限環境に対応する科学である。1つ目の顔に目を向けると、現在、気候変動による温暖化や集中豪雨の発生など、地球規模での特殊環境化が進んでいる。我々は、これまで世界中の特殊な環境に対して、適応・対処してきた豊富な学術知・実践知を有している。これらの知見を活かし、気候変動という喫緊の課題に取り組むことは我々の使命であると考えている。

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つ目の顔に目を向けると、現在、世界中でその覇権をめぐり宇宙開発の熾烈な競争が繰り広げられている。乾燥地科学の歴史は、鳥取砂丘から砂漠へとより過酷な環境、未知の領域への挑戦の歴史である。そして、究極の極限環境である宇宙への取り組みは我々の新たな挑戦であると考えている。特に、月面は、我々がフィールドとしてきた乾燥地と同様に砂(レゴリス)に覆われた世界である。そこで我々の知見を存分に活かしていきたい。」

鳥取大学 乾燥地研究センター 恒川篤史センター長

鳥取大学研究推進機構
https://orip.tottori-u.ac.jp/

とっとりNEXTイノベーションイニシアティブ
https://tnii.tottori-u.ac.jp/