LIFE STYLE | 2025/11/23

石徹白の“集落の記憶”を未来へ
クラファン220%達成で生まれた宿 「助七」 が開業

「暮らしをそのままに」 石徹白の記憶を宿す家

FINDERS編集部

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • line

人口200人を切る山奥の集落に、暮らしの営みを次世代へつなぐ場

岐阜県郡上市の最奥・石徹白(いとしろ)地区。この地に、築150年の古民家を改修した一棟貸しの宿 「助七(すけしち)」 が誕生した。運営するのは、野良着のリデザインや草木染によって地域の暮らしを伝えてきた 「石徹白洋品店」

クラウドファンディングでは目標金額500万円に対して、全国から350名を超える支援が寄せられ、最終的に達成率220%・1,000万円を突破。「ただ古民家を残すのではなく、石徹白の暮らしそのものを未来に残したい」 ―そんな想いが、多くの共感を呼んだ。

書斎. 元子ども部屋 
でい 畳の部屋 - リビング
おくのでい 元仏間 - ベッドの寝室

白山の懐に抱かれ、縄文の時代から人の営みが続く石徹白。昭和30年代には1,200人を数えた人口も、現在は200人を下回る。隣の集落まで十数キロ離れ、陸の孤島とも言われるこの土地には、自然と共に生きるための知恵と精神が息づいている。

宿 「助七」 は、その暮らしの記憶を宿す空間だ。玄関の馬小屋、囲炉裏を囲む 「うちんなか」、仏間の 「おくのでい」。石徹白特有の間取りをそのまま残しつつ、快適な滞在ができるよう丁寧に改修された。屋根裏のギャラリー 「つし」 には、かつて使われていた民具が並び、この地での手仕事とともに生きた人々の姿を今に伝える。

食事は、地域の食材を生かした 「MAGOEMON」 の料理が味わえる。郷土料理のけいちゃん、冬の肉漬けや鍋料理など、石徹白ならではの素朴な味が用意されている。

Gallery つし屋根裏部屋 - 民具ギャラリー
この土地で手仕事によって生み出された生活道具たち。植物繊維で作られたあらゆるものから、ここでのつつましくも、たくましく生きた人々の営みが見ることができる。
Dinner & Breakfast
季節の食材をふんだんに使って、体にやさしいご飯を提供している石徹白のお店「MAGOEMON」と提携。郡上の郷土料理けいちゃん、冬は石徹白特有の漬物・肉漬けやお鍋料理が楽しめる。

石徹白洋品店を率いる平野馨生里氏は、地域の野良着をリデザインし、草木染・藍染を行ってきた人物だ。「暮らしの延長にものづくりがある」という哲学のもと、雇用を生み出しながら、地域に根づく衣服文化を現代に伝えてきた。

今回の宿事業は、その活動の延長線上にある。宿での滞在を通じて、藍染や草木染、服づくりのワークショップも体験でき、石徹白の手仕事と生き方に触れる時間が待っている。

石徹白洋品店店主 平野 馨生里 (ひらのかおり)
1981年岐阜県生まれ。石徹白洋品店店主。慶応大学総合政策学部卒業後、PR会社に就職。郷里の岐阜の地域づくりに惹かれUターンし、結婚後2011年に県内の石徹白集落に移住。12年石徹白洋品店を創業。地域に伝わる野良着をリデザインし、地元の植物で草木染めや藍染めを行う。自然の中で4人の子どもを育てながら仕事をしている。

11月29日には、東京都台東区・ふるかわ庵にて、宿 「助七」 のオープンを記念したトークイベントが行われる。設計を手掛けた 「スタジオ伝伝」 の藤沢百合氏と、石徹白洋品店の平野氏が登壇し、宿の誕生までの経緯や、“暮らしをつなぐ建築”について語り合う。


宿 「助七」
所在地:岐阜県郡上市白鳥町石徹白65-18
定員:最大6名 (1日1組限定)
料金:一棟貸し 66,000円~ (食事オプションあり)

予約サイト
https://itoshiro.org/pages/sukeshichi

石徹白洋品店Instagram

https://www.instagram.com/itoshiroyohinten/ 

助七Instagram
https://www.instagram.com/sukeshichi_itoshiro/

助七オープン記念お話し会
日程:2025年11月29日(土) 13:30~15:00 (13:00受付開始)
会場:ふるかわ庵 (東京都台東区池之端4-15-7)
参加費:3,000円 (お茶代込み・要予約)
登壇者:藤沢百合 (スタジオ伝伝)/平野馨生里 (石徹白洋品店)

予約・詳細
https://itoshiro.org/pages/sukeshichi