商店街が抱える課題と次世代のビジョン
松山市の商店街で利用できる電子マネー「machica(マチカ)」の運用は、2018年よりスタート。「まちペイ」として商店街での買い物に利用できるほか、ポイントも貯められる。
「machica」に加盟する商店街の人にも話を聞いた。
1人目は、松山大街道商店街振興組合の理事を務める松原健氏。同商店街にアパレルショップ「Bless」を構え、兄とともに店を経営する。20代の頃は東京のアパレル業界で働き、Uターンするかたちで父から経営を引き継いだという。
親世代から合わせると、42年間続く老舗店舗だ。ちなみに松山の商店街には、祖父母や親の代から長く続く個人商店が多い。
――「まちペイ」を導入してみて感じるメリットは?
松原:とくに年末の抽選会の時期など、商店街独自で使えるチケットを「まちペイ」で発行することで、集客につながっています。若い人はスマホ、ガラケーを持つ人が多い年配の世代だと、ICカードで利用される方が多いです。
昨年、飲食店のキャンペーンがあったときは、ポイントの還元率が高かったこともあり、個人的にもよく使いました。飲食店で貯めたポイントで、うちで買い物してくださるお客様も多くいて、商店街での回流ができていると感じます。
―― 子どもの頃と今で、商店街の違いをどのように感じていますか?
松原:現在、私は43歳ですが、商店街の後継者問題として、20〜30代があまりいないので、我々の世代ががんばりどころとなっています。またここ最近では、松山市内の中心部にもマンションなどが増え、子育て中の若い人たちが増えてきたと感じています。私が子どもの頃は、お祭りなど「楽しい思い出」がいっぱいあって、商店街ももっと活気があったように思います。今後は、商店街の活動を通じて、子どもたちにたくさんの「思い出」を作っていけるような取り組みにも力を入れていきたいです。
これまでのライバルは、商店街の中や近隣のショッピングモールの同業他店でした。今はECサイトにライバルがシフトしていく中で、商店街ならではの身近さ、リアル店舗でコミュニケーションをとりながら買い物する魅力を大事にしていきたいです。
―― 商店街には今までいなかった開拓者であり、新風を吹き込んだ加戸氏への印象は?
松原:情熱のあるエネルギッシュな方で、商店街にルーツがある方だけに、地元にかける強い想いがあると感じています。
IT技術を街に落とし込みながら、今までの当たり前を見直すことで、街にこれまでにはなかった仕組みをしっかり考えていらっしゃいます。
東京はあまりにも情報が多すぎて、取捨選択できない人は生きにくい部分もあります。松山に帰って感じたのは、街はコンパクトで移動の手段もスムーズ、程よくあらゆるものが揃っていて、過ごしやすいということですね。
昔も今も、歩きながらいろんなお店を楽しめる商店街の魅力を高められることに期待しながら、協力できることはしていきたいです。
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次に話を聞いたのは、伊予鉄道松山市駅にほど近い銀天街にアパレルショップを構える、「TOKAGEYA」スタッフの小谷将高氏。高知出身で、勤続15年目。ショップで接客するようになってからは、5年目だという。
1階の店舗には、レディスの質のよいアパレルアイテムが並び、傍には子ども服や雑貨も。2階は若者を中心としたメンズアイテムを揃える。孫の世代からシニア世代まで幅広く利用できる店だ。
――「まちペイ」を導入してみて感じるメリットは?
小谷:うちは戦後直後から商店街で店をやっているので、古くからの地元のお客様をはじめ、40〜60代の比較的年配の女性のお客様が多く、ポイントを貯めるのが好きな世代であるため、喜ばれています。シーズンごとに一定期間の特典として、通常より多くポイントを付与するといった販促でも活用しています。
パンフレットなどの案内MAPでも「まちペイ」が使える店舗が分かりやすく紹介されている。
松山市外のお客様のご利用も多く、うちだけでなく、商店街全体をショッピングモールと捉え、お金がまわるいい仕組みだと思います。支払い方法の選択肢が増えるのも、お客様の利便性にもつながります。
―― 加戸氏に期待することは?
小谷:僕と同じ歳なのですが、自社のことだけでなく、街全体のことも考えていて、「すごいな」と頭が下がります。「TOKAGEYA」は、かつて商店街に何店舗もあったのですが、時代とともにここだけになりました。街や商店街の復興とともに、また店舗が増やせるといいなと思います。
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