四国最大の都市、松山。正岡子規や夏目漱石の名作『坊ちゃん』ゆかりの地として知られ、市街地近くには日本三古湯の道後温泉があって、気軽にアクセスできる。
江戸時代初期からの城下町として発展してきた松山であるが、2015年を機に人口減少が進み、65歳以上の人口も25%に(※)。多くの地方自治体同様、超高齢化社会に突入した。
地元のそうした状況に早くから危機感を抱き、商店街を中心にまちづくりに乗り出したのが、今回紹介する、株式会社まちづくり松山だ。
実はこのほど、まちづくり松山の取り組みが評価され、「イノベーションネットアワード2021」にて経済産業大臣賞を受賞している。
地方都市を活性化させる取り組みについて、代表取締役社長の加戸慎太郎氏に松山市内で話を聞いた。
※http://www.city.matsuyama.ehime.jp/kurashi/fukushi/korei/koureisyajinkou.html
取材・文:庄司真美 写真:FINDERS編集部
加戸慎太郎
株式会社まちづくり松山 代表取締役社長
1982年松山市湊町生まれ。2005年に慶應義塾大学 経済学部を卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。その後、地元に帰省し、家業のアパレル事業を継承。2014年より松山銀天街商店街振興組合の理事長に就任。同年、株式会社まちづくり松山の代表取締役社長に就任するほか、愛媛県商店街振興組合連合会 副理事長、愛媛県商店街振興組合青年部連合会 会長を務める。2015年より一般社団法人お城下松山 理事長に就任。2016年からは株式会社愛媛FC取締役となる。2017年、全国商店街振興組合連合会 青年部 部長、2019年に株式会社エヒメスポーツエンターテイメント取締役を歴任。2021年9月、全国商店街振興組合連合会の副理事長、愛媛県商店街振興組合連合会 理事長に就任。
松山市は松山城を望む中心部に「松山大街道商店街」「大街道中央商店街」「松山銀天街第一商店街」「松山銀天街商店街」など、アーケードのある大きな商店街が4つのエリアに分布。若い人からお年寄りまで幅広い年代が行き交い、買い物客でにぎわう。
今ならまだ間に合う!地元・松山の商店街で復興事業を決意
加戸氏は、ゴールドマン・サックス証券に勤務するなかで、リーマンショックなどさまざまな社会の推移を経験。やがて2009年、地元・松山に帰り、父が商店街で運営するアパレルショップを引き継ぐことになったとき、街の現状に危機感を感じたことが契機となった。
―― 地元で事業を引き継ぎ、松山の街に抱いた当時の心境はいかがでしたか?
加戸:松山に帰って来て感じたのは、少子高齢化を含めて、いろんな問題がガラパゴス化しているということ。“失われた30年”ともいわれますが、デジタルに関しても日本は30年遅れています。
「今なら、まだ間に合う」と思いました。地元で育ち、これまでの人脈を活かして、自分の力を試せる場と捉えました。
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