EVENT | 2025/08/12

「農家はカッコいい」
ジローラモ氏が語った地域と人をつなぐ
有機栽培米プロジェクト

「GIRO米フェア」を締めくくる特別イベント「GIRO米NIGHT」を開催

文・写真:カトウワタル(FINDERS編集部)

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日本の農業と食の未来を考える夜

東京大学・駒場第二キャンパス内の 「食堂コマニ」 では、パンツェッタ・ジローラモ氏が手掛ける “GIRO米プロジェクト” で栽培された福島県産GIRO米を使ったランチメニューを提供する 「GIRO米フェア」 が、2025年7月14日から8月8日まで行われた。

そして8月7日、このフェアを締めくくる特別イベント 「GIRO米NIGHT」 が開催された。会場には農業・食・地域課題に関心を持つ参加者が集まり、生産者と直接語り合える貴重な場となった。

イベントの冒頭には、食堂コマニがある東京大学生産技術研究所を代表し、東京大学副学長吉江尚子教授が登壇。「今年ほど米が話題になったことはなかったと思います」と切り出し、日本として農産物や食に関する課題に取り組む重要性を強調した。

次に、今回提供された有機栽培米 「GIRO米」 の生産地である福島県から駆け付けた福島県農林水産部鈴木幸則技監が、福島県産の農産物や海産物をはじめとした福島の魅力をPR。

続いて、ジローラモ氏とともに取り組む有機栽培で課題となる除草作業を軽減する自動抑草ロボット 「アイガモロボ」 を開発した株式会社NEWGREEN中村哲也副社長が、東日本大震災をきっかけに有機栽培米に携わるようになった経緯や開発の思いを語った。

東京大学副学長、東京大学生産技術研究所教授の吉江尚子氏
福島県産の農産物や海産物をPRする福島県農林水産部の鈴木幸則技監
「アイガモロボ」 を開発した株式会社NEWGREENの中村哲也副社長

自然と真摯に向き合う農家とともにつくるお米

そしてこのたび、ジローラモ氏と株式会社SORRISOを設立し、本格的な有機栽培米のプロジェクトを進める長手洋平社長が登壇し、GIRO米プロジェクト立ち上げの背景と現状を説明。「耕作放棄地を再生するには、労働力と継続的な収入という2つの課題がある。作るだけでは生活の継続性が生まれない。販売や流通まで支え、農家が安心して続けられる仕組みが必要です」 と述べ、参加者には 「食べるだけでなく、作る現場にもぜひ関わってほしい」 と呼びかけた。

参加者に熱く語りかける株式会社SORRISOの長手洋平社長

そして会場が待ち望む中、ようやくジローラモ氏が到着、軽やかな身のこなしで登場し、客席からは笑顔や拍手が広がった。

この日のテーマは 「日本の農業と食の未来」。ジローラモ氏は、長年テレビや雑誌などでイタリア流のライフスタイルを伝えてきたが、数年前から有機栽培米を軸にした農業プロジェクトを本格的に始動させている。全国各地の農家を訪ね、田んぼや畑に入り、時には地域行事や地元の食文化にも深く関わってきた。

そんな彼が、なぜ今 「農業」 に力を入れるのか ──その背景には、地方で目にした現実と、そこから生まれた強い思いがあった。ジローラモ氏は、まずはその理由をいつもの軽快な語り口とともに語り始めた。

「農家はカッコいい職業です。僕は日本人じゃないけれど、日本に長く住み、お世話になってきた。その恩返しとして農業をやりたいんです。農家がしっかり収入を得られれば、若い世代も戻ってくる。だから全国でこういう活動を広げ、農業をもっと魅力的に見せたい。土に触れると元気になります。自然や地域の人とのつながりが生まれるし、農業は人を幸せにできるんです」

と切り出したあと、日本の農業が直面する高齢化と担い手不足の現状にも話を広げていった。

「会津若松では義理の家族の縁から農業を始めました。高齢化が進む地域でも、地元の人と一緒に田んぼに入り、草取りをして、収穫の喜びを分かち合っています。淡路島でも農地再生を進めていますが、ただ米を作るだけじゃない。カヤックや釣りなど、その土地ならではの自然を楽しむことも一緒にやる。そうすると都会から来た人も『また来たい』と言ってくれるんです」

さらにこうした地元での交流から生まれたエピソードで、会場の笑いも誘っていた。

「淡路島で作業してたら、地元の人が『昼前にちょっと一杯どう?』って焼酎を出してきたんです。『いやいや、これから仕事なんだけど…』って言いながらも乾杯しちゃう(笑)。そういうのも含めて、現場は本当に人間らしい時間が流れているんですよ」

また当日会場に駆けつけたGIRO米プロジェクトにともに取り組む元木農園元木博人さんらを壇上へ呼び込み、現場でのリアルな苦労ややりがいも語られた。ジローラモ氏は笑いを交えながらも真剣に耳を傾け、「こういう生の声をもっと多くの人に届けたい」 と語った。

GIRO米生産者の元木農園の元木博人さんとジローラモ氏

質疑応答では、熊本や富山など全国からの参加者が発言。 「子どもや若者を農業に関わらせるには?」 という質問に、中村氏は 「小学校の授業でアイガモロボを使ったプログラミングやお米作りを取り入れている」 と具体例を紹介。ジローラモ氏も次のように応じた。

「子どもたちに現場体験を提供し、新しい世代のリーダーを育てたい。今日のように10人から始まっても、やがて1万人が関わる動きにできます」

トークセッション終了後は、懇親会が開かれた。GIRO米でつくった特製おむすびや、福島県産の食材をふんだんに使用した料理、福島の地酒が振る舞われ、参加者同士が食を囲んで交流。ジローラモ氏や生産者らを中心に、会場のあちこちで輪ができ、農業や食をテーマにした活発な意見交換が続いた。

今回、東京大学生産技術研究所で “食堂から広げる日本の食の可能性” をコンセプトに掲げる 「食堂コマニ」 で行われた 「GIRO米フェア」と「GIRO米NIGHT」 の取り組みは、日本の農業をめぐる課題と可能性を共有し、都市と生産地をつなぐ新たな交流のきっかけをつくる場となったのではないだろうか。読者の皆さまも、機会があればぜひこうした活動に積極的に参加してみてほしい。今後も 「GIRO米プロジェクト」 に注目していきたい。


有機米|GIRO米 オンラインショップ
https://giropj.base.shop/

ジローラモの有機米プロジェクトInstagram
https://www.instagram.com/giro_mai/

ジローラモの有機米プロジェクトTikTok
https://www.tiktok.com/@giro_mai_project

ジローラモのジローちゃんねる Panzetta Girolamo.
https://www.youtube.com/channel/UCq9U45AQ5jW_XTdlB77BYYw