EVENT | 2021/10/11

商店街の衰退に待った!「数学やデータを駆使したDX時代のまちづくり」元GS金融マンが率いる(株)まちづくり松山を直撃

四国最大の都市、松山。正岡子規や夏目漱石の名作『坊ちゃん』ゆかりの地として知られ、市街地近くには日本三古湯の道後温泉があ...

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まちづくりのプロデューサーとして、世代間ギャップをつなげる

―― 当時、高齢化が進む商店街でまちづくりに関わり始めたとき、加戸さんは27歳。地方では、年長者や保守派の壁が厚いと聞きますが、その点はいかがでしたか?

加戸:よく街の人からは、「順番を待てよ」といわれました。確かに、僕より上の世代は、同級生など横のつながりが強い。戦後の日本のように、終身雇用が成立した時代なら、年功序列のもと、競い合いながら強化したり、成長したりできました。部活動も同じですよね。

ただし、コミュニケーションが縦割りのため、上から降りてくるものに偏りがちな、単線アナログ型の世代だと感じています。

そこにいきなり、「今はIOT(従来インターネットに接続されていなかったさまざまなものが、ネットワークを通じてサーバーやクラウドサービスに接続され、相互に情報交換をする仕組み)の時代で、お金の動きも速いんですよ」と言っても、まるで聞き入れられませんでした。

私は昭和57年生まれのミレニアル世代。私より下の世代は、デジタル世代でもあるので、誰か年長者についていくといった発想はなく、人とつながりを持つことに価値を感じ、新しいものを作っていく考え方なんです。

4つの商店街振興組合を回って、街の人のいろんな意見を聞きながら説得を重ねるなかで、上と下の世代をいかにつないでまちづくりを科学していくか、自分の中でレイヤーが見えてきました。

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データを活用した、「経営目線」でのまちづくり

―― まちづくりを「経営目線」で捉え、「流動性の向上」「サスティナビリティの重視」「PDCAサイクルの徹底」を重視しているのが、これまでの自治体が行ってきた取り組みとは大きく異なります。そこに至った思いはどこにありましたか?

加戸:私は昔から数学が得意で、学生時代は算数の塾講師のアルバイトをしていました。前職ではグローバル企業で金融業を経験し、数学やデータで物事を考えることに慣れています。一方、街の人は、国語で生きていると感じました。

会議のたびに、データに即した建設的な議論がなされていない状況を見て、まちづくりをする上で、データが重要だと考えました。金融の世界では、基本的に「根拠のない商品」は売れないし、作りません。

データ分析サンプル(来街者捕捉カメラ)

かつては子ども向けの衣料品店が多くあった商店街。商店街にあった主力商業施設「ラフォーレ」がなくなり、2008年には、隣町に駐車場を備えた集客力の強いショッピングモール「エミフルMASAKI」ができて、人の流れが変わった経緯がある。

それにともない、商店街に出店していた衣料品店の多くがエミフルに移転する動きもあったという。そこで加戸氏は、アンケートやデータをもとに、「エミフルに多くの店子を取られる脅威がありながらも、当時の商店街は一致団結して対策をとらず、別のことに投資してしまったのでは?」との仮説を立て、検証を始めた。

加戸:まちづくりのために、どんな価値があるものに投資するか?と考えたときに、「商店街に人を集めるため」では抽象的です。あるとき、データを元に、「商店街に中学生の通行量が減っている」という議論があり、「思い出づくり」に投資すべきという結論に至りました。子どもの頃に商店街にいい思い出があれば、中学生になってからも商店街に来てくれるはずです。

スプリングフェスタの様子

それによって、家族みんなで楽しめる「お城下スプリングフェスタ」や「地元アイドルと商店街のコラボ企画」などが企画・開催されることに。商店街では「目安箱」が導入され、住民が主役のまちづくりにも注力し始めた。

また、中央商店街では、事務局費の見直しや省エネのために、アーケード照明のLED化が進められた。

商店街共通のお買い物券の発行をはじめ、消費喚起を目的とした独自のアプリ「SWEET MATSUYAMA」や、誰もが使えるスマートインフラとして、地域の電子マネー「machica(マチカ)」もスタート。

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