EVENT | 2025/08/07

この夏の大阪は台湾一色!
「奇跡の島」が見せる129のカルチャー体験を楽しむ

グラングリーン大阪から中之島まで、街角で出会う台湾カルチャーに浸る

文・写真:池田美樹

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街全体で繰り広げられる台湾文化の祭典

この夏、大阪の街を台湾文化が席巻している。

深海生まれのキャラクター「a-We(アーウィ)」が街のあちこちに登場し、グラングリーン大阪の文化施設「VS.」では没入型アート展示が繰り広げられている。大阪市中央公会堂では最新テクノロジーと文学が融合した企画が並び、週末の中之島では日本最大の台湾文化祭「TAIWAN PLUS」も開かれる。

台湾文化部が主催する「We TAIWAN 台湾文化 in 大阪・関西万博」は、万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」に呼応し、「What a Miracle! 未来を応援する、奇跡の島」をコンセプトに、2025年8月20日まで街全体をキャンバスにした文化の複合型イベントを繰り広げている。

38組のアーティストが参加し、129のプログラムを8月2日から20日まで大阪市内各所で開催されているこのイベントは、SNSで早くも「大阪市内に現れた台湾パビリオンそのもの」と絶賛されている。一体なぜ、これほどまでに注目を集めているのだろうか。

安藤忠雄建築で体感する「台湾スペクトル」

会場のひとつであるグラングリーン大阪内の文化施設「VS.」では、没入型展示「台湾スペクトル」が行われている。VS.は安藤忠雄氏が設計監修した最新の文化空間だ。

「VS.」は2024年9月にオープン。施設の大半が地下に埋まり、3つのスタジオからなる

展示は「台湾本色」「光織(こうし)自然」「島嶼声譜(せいふ)」の3つのテーマで構成。「台湾本色」は国立台湾美術館が収蔵する作品を題材とした没入型ビジュアルシアターで、日本統治時代から戦後、現代へと、時代を超えた美術作品群を居ながらにして体験できる。

「スケッチ写生をする人」を主人公に、映像技術を駆使したアーティストたちの筆致や色彩を再構築している

「光織自然」では台湾の染め織り文化や工芸を紹介。天然の植物から採取した染料で染めた布や繊維芸術で島の自然を表現し、台湾の自然や色彩とのつながりとその源流へと来場者を誘う。

「台湾色彩スペクトル」と名付けられた展示は台湾の植物から抽出した天然染料の研究成果を紹介
奥は陳景林氏が制作した藍染山水作品「母なる台湾の河」、手前は楊偉林氏が島の暮らしと自然環境を表現したインスタレーション「回遊」

「島嶼声譜」はにぎやかな展示だ。台湾特有種の生物にインスピレーションを得た神獣のインスタレーションの並ぶ中で、寺廟祭典の銅鑼や太鼓、台風が通過するときの風雨、田園の鳥の鳴き声、都市の市場の喧噪など、台湾の日常にあるさまざまな音をコラージュしたサウンドシアターに浸りながら、目と耳で台湾のミックスカルチャーを体験することができる。

視覚とサウンドアートが巧みに織り交ぜられた空間で記憶をめぐる旅に導かれる

深海生まれの人気者「a-We (アウィー)」現象

このイベントのもうひとつの注目株が、台湾を象徴するオリジナルキャラクター「a-We(アウィー)」だ。台湾の著名デザイナー・方序中氏がデザインしたこのキャラクターは、深海で「ピコッ」と誕生した不思議な生命体という設定で、頭と脚で「T」、足元で逆さの「W」の形を描くユニークな姿をしている。早くもグッズを集めるコレクターが登場し、街ではa-Weグッズを身につけて街を歩く人たちの姿が見られるようになった。

中之島上空に浮かぶ巨大なa-Weバルーンは、このイベントの象徴的な存在として多くの人の目を引いている。オンラインゲーム「a-We POKE POKE」も5月から世界同時公開さており、大阪市内20カ所以上を巡る街歩きゲーム「a-We TO GO」も展開されるなど、デジタルとリアルを横断する仕掛けも話題を呼んでいる。

中之島公園の川辺付近に浮かぶ直径2.8mのa-Weバルーン

中之島エリアで展開される多様なプログラム

VS.での没入型体験に加えて、中之島エリアでも多様な文化プログラムが展開されている。

映画体験
では、1960年代から2020年代まで台湾を代表する10作品を厳選し上映。さらに1970年大阪万博で台湾電影公司が制作した『万博追踪』の修復版も特別上映される。

最新テクノロジー
の分野では、世界19カ国で上演され話題となった「黄翊とKUKA」が8月4日まで日本初演された。人間とロボットが共に舞う圧巻のパフォーマンスだ。また、ヴェネツィア国際映画祭にも参加したVRインタラクティブ公演「フリーユアヘッド〜脳を解放しよう」も開催されており、台湾が得意とする分野を超えた創造性を体感できる。

文学の世界
では「マジカル台湾」台湾文学展が大阪市中央公会堂で開催され、魔幻・霊異・神仙鬼怪の視点で台湾文学を紐解く。また、「こども本の森 中之島」では台湾絵本展「台湾絵本、佮意啦(ガーイーラー)」も開催されている。絵本は文字がわからなくても絵で直感的に理解できる優れた媒体で、子どもたちが台湾文化と日本との関係を体感するのにぴったりだ。「台湾原住民」「台湾の民間故事」「台湾の生活」など7つのテーマに分けられた50冊の絵本は、会期終了後に同施設に寄贈される予定だという。

絵本は「台湾原住民」「民間故事」「生活」「食文化」「宗教」「芸術工芸」「自然」の7テーマで約50冊を展示

中之島の屋外パフォーマンスでは、大阪市中央公会堂前の東広場で二代目兄弟ユニット新勝景掌中劇団による布袋劇(人形劇)「デーモンハンター伝説・白光剣の再現」がプロジェクションマッピングと組み合わされて現代的に生まれ変わっている。また、芸術報國による全長4.2メートルの大型人形劇「アイラ:中之島の出会い」が圧巻だ。5人のダンサーが共同操作する巨大人形の迫力もさることながら、操り手たちの動きそのものが見応えがあり、場面が移り変わっていく演出も楽しい。初日の公演では多くの人がカメラを構え、歓声を上げながら鑑賞していた。子どもたちにも大人気で、こうした「言葉のいらないパフォーマンス」の持つ普遍的な魅力を実感させられた。

未来からやってきた小学生アイラが絵筆でこの世界の文化や自然を記録し、未来の仲間たちに伝えるというストーリー

大人気間違いなしのマーケット体験では、日本最大の台湾文化フェスティバル「TAIWAN PLUS」が大阪に初上陸。8月9日(土)・10日(日)、16日(土)・17日(日)の週末に中之島公園で開催され、100以上の台湾ブランドが集結する。台湾グルメ、デザイン、ライフスタイルブランドなど、多彩な台湾カルチャーを実際に手に取って体験できる。会場では台湾のデザイナーやクリエイターと交流し、観光では経験できない台湾の「今」を感じることができるだろう。

キャラクター、アート、パフォーマンス、文学、絵本、映画、マルシェ。さまざまな切り口を用意することで、誰もがどこかで台湾カルチャーとの接点を見つけられる。それがこのイベントの最大の魅力だ。

安藤忠雄建築で台湾アートに包まれ、a-Weのバルーンを見上げながら中之島を歩き、パフォーマンスに歓声を上げ、週末はマーケットをそぞろ歩く。何度も台湾に足を運ばなければ体感できないカルチャーを、この夏の大阪で一度に楽しめる文化の祭典。ぜひ街に出かけて台湾文化の奥深さを発見してみてほしい。きっと、知らなかったこの島の一面に出会えるはずだ。


We TAIWAN 台湾文化 in 大阪・関西万博
会期:2025年8月2日(土)〜8月20日(水)、
   万博会場特別公演:8月26日(火)〜28日(木) 大阪・関西万博会場内
会場:VS.(グラングリーン大阪内)/大阪市中央公会堂/こども本の森中之島/中之島エリア他
入場:無料 (一部事前予約制)

公式HP
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公式SNS
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