坂の街・長崎に誕生した「樹洞」のようなホテル体験
長崎市にある有限会社中村塗装は、築30年の空きビルを改修したシェア型ホテル「HOTEL URO(ほてる うろ)」を2025年8月1日に開業した。長崎の地形と建築が織りなす独特の景観を背景に、かつて地域に親しまれたカラオケ店を塗装技術と建築再生ノウハウで蘇らせた。
プロジェクトの舞台は、屋外階段を中心にカラオケルームがまとわりつくスキップフロア構造の建物。水回りを共用化することで改修コストを抑えつつ、多様な滞在スタイルに対応できるホステル業態を採用した。1階は通り抜け可能な街路のような公共空間に、白く塗り上げた階段には音と光の演出を施し、最上階は街を一望できるラウンジとして再生。長崎らしい複雑な街並みと建物の個性を活かし、都市とつながる立体的な宿泊体験を構築した。
ホテルのコンセプトは「URO(樹洞)」。木の中に空いた洞のように、街の中でふと立ち止まり記憶をとどめる余白の場を目指す。客室はコンパクトなダブルルームや女性専用を含むドミトリーを備え、共用シャワーやラウンジ、階段テラスを設置。屋上からの景色、アールのついた壁面、壁の塗装、階段に響く自然音まで、細部にわたり世界観を統一している。

施設の象徴でもある階段空間「FAAH Terrace」では、長崎出身のサウンドアーティスト坂本豊による音響作品を展開。電子音で再構成した自然音とアンビエントミュージックが溶け合い、都市と自然、現実と仮想が交差する音環境を創り出す。最上階の「FAAH Lounge」からは、額縁のような窓越しに長崎の街並みを望むことができる。
1階にはカフェ「FAAH」とバー「zzzzz」を併設。日中はコーヒーの香る静かな空間でくつろぎ、夜は選りすぐりの酒とともにゆったりと過ごすことができる。
中村塗装にとって初のホテル運営となる本プロジェクトは、塗装技術による建築再生の新たな可能性を示す試みだ。代表の中村巧氏は「街並みに調和しながら、新たな文化を創造する拠点として育てたい」と語る。








HOTEL URO(ほてる うろ)
所在地:〒850-0831 長崎県長崎市鍛冶屋町6-10
交通:長崎電鉄思案橋駅徒歩4分、めがね橋駅徒歩5分
構造:鉄筋コンクリート造地上8階建
客室:ダブルルーム7室、ドミトリールーム20室
併設施設:Cafe FAAH(9:00-17:00)、Bar zzzzz(17:00-22:30 金・土)
公式サイト
https://hotel-uro.jp/