CULTURE | 2021/05/25

eスポーツが「スポーツ」となる功罪。日本代表チームの快進撃にみるマネーゲームの脅威【連載】ゲームジャーナル・クロッシング(6)

LoL Esports Twitterより

Jini
ゲームジャーナリスト
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日本代表「DFM」の快進撃。だがその裏には

このようにeスポーツの中で随一の持続性と普遍性を持つ『LoL』。日本にもプロリーグは存在するのだが、大変残念なことに日本は自他共認める「LoL最弱国」の一つだ。

繰り返すように『LoL』はアフリカと中東、インド周辺を除いては、世界中ほとんどの地域で親しまれている、国際的なeスポーツだ。ここまで世界中で受け入れられたのはゲームの面白さは無論のこと、「古いパソコンでも動き」、「無料で遊べて」、しかも「アイテム課金で格差がつかない」、経済的普遍性が大きな理由だと考えられている。

今でこそ『Apex Legends』など無料で遊べる対戦ゲームは少なくないが、『LoL』が生まれた2009年当時そういったタイトルはまだ少なく、仮に無料でも課金でしか手に入らない強力アイテムが存在するなど、お世辞にも公平とは言えなかった。無料で、しかも後からお金を使う必要もない驚きのコスパによって、アメリカやヨーロッパはもちろん、格差の激しい中国や韓国、ブラジルなどで流行した。

中でも、韓国における『LoL』の熱意はすさまじい。韓国はネットカフェ大国として知られており、2018年時点で、全国に約11800店舗ものネットカフェが存在すると言われる(日本は約1300軒)。また韓国のネットカフェは非常に安価で、例えば最新スペックのPC を揃えた店舗でも1時間わずか50~100円で利用できる。そのため、学校を終えた子供たちが放課後ネットカフェに集まってゲームを遊ぶ文化が根付いており、チームの連携を問う『LoL』は特に親しまれるようになった。またネットカフェの中には5人で1室というチーム専用の練習部屋も用意され、優秀な選手はプロチームにもスカウトされるという。結果、韓国はサッカーにおけるブラジルのような、「LoL最強国」となった。

一方日本のゲーム環境は非常に特殊だ。ネットカフェが流行るわけでもなければ、欧米のように家にゲーム用PCを置く文化も育たなかった。その分、世界中に家庭用ゲーム機を売るソニーや任天堂のお膝元でもあり、近年は『パズドラ』『モンスト』を中心にスマホゲームが流行ったことで、子供たちはスマホとSwitchにかじりついた。世界を見ても、先進国の中でここまでPCゲームが流行らない国というのは珍しい。当然、PC向けタイトルである『LoL』も日本ではまるで流行せず、日本サーバーがありながらその多くが中国、韓国、ベトナム辺りの外国の留学生が占める、バーチャル新大久保状態だった。

数あるeスポーツの中でも圧倒的な人気と歴史を誇る『LoL』と、対照的に『LoL』が流行る土台すらない日本。この対照的な困難を反映するように、日本代表は『LoL』の国際大会では苦戦を強いられた。

『LoL』の国際大会は、欧米や中韓のような強豪集うメジャーリージョンと、日本やトルコなどのマイナーリージョンに分けられるが、マイナーリージョンのチームを相手にしても日本代表はほぼ負けた。全く白星がなかったわけではないが、2015年に初めて公式の国際大会に出場して以降、予選突破はおろか、毎年予選の一回戦で敗退する有様だった。もともと日本の『LoL』プレイヤーが少ない上に、チームの予算も乏しかったため、優秀なプレイヤーがなかなか見つからなかったのだ。

これではいけないと考えたのか、2016年、日本の各チームは、韓国から選手を招いて戦力を強化することを考える。プロ野球における「助っ人外国人」のようなものだ。しかし、韓国からいくら選手を迎えても、海外との差はまるで埋まらなかった。日本チームの予算では雇える選手に限界がある上、日本語と韓国語が入り混じる環境ではコミュニケーションエラーが多発したからだ。特に『LoL』は「チームスポーツ」であり「マインドスポーツ」だと考えられており、多国籍化に伴う選手間の衝突は致命的だった。中には、チームにより外国人選手の持つ在留カードを没収され、チームが処罰を受けたという事例もある。※

※【LJL】Dara選手の引退及びPGM在留カード事件まとめ【リーグ・オブ・レジェンド】

それでも選手たちは交友を深め、共に切磋琢磨していく中で、特に日本の『LoL』界での歴史も長いチーム、DetonatioN ForcusMe(以下、DFM)が抜きんでた実力を発揮するようになり、2019年の国際大会「World Championship(WCS)」においてEU3位のチームに1度とはいえ勝利し、国内は大いに沸いた。しかし、EUは強豪地域といえど所詮3位、まだまだ日本が世界で活躍するのは先か、そう思われていた2021年、事件が起きる。

毎年開催されている国際大会のひとつ「Mid-Season Invitational(MSI)」において、なんどDFMは北米1位に君臨する「Cloud 9」に対して堂々勝利し、さらに韓国1位にして、昨年の世界大会王者「DAMWON KIA」に対しあと一歩というところまで追いつめたのだ。一体何が起きたというのだろうか。

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