LIFE STYLE | 2020/10/05

黒人以外の命は大切ではない?略奪を肯定している?BLM批判者の4つの反論に答える【連載】幻想と創造の大国、アメリカ(19)

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渡辺由佳里 Yukari Watanabe Sc...

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反論③BLM支持者は暴動・略奪をスルーするか肯定している

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むろん、それだからといってBLMに関連した抗議デモで起こっている破壊や暴力行為を正当化するつもりはない。抗議デモの最中に建物の破壊や暴力行為が起こっているのは事実だ。しかし、それらはBLMの組織的な暴動ではない。BLMはスタートの時点から根本的に「非暴力的な市民不服従」である。BLMに賛同し、活動に参加している大部分の人たちは、暴力行為に反対している。

報道で目立つためか、BLMの大半が暴動だと思いこんでいる人はアメリカにもいる。だが、紛争関係の研究分野で最もよく使われるArmed Conflict Location & Event Data Project (ACLED)のデータによると、93%以上が「平和なデモ」なのだ。

さらに、ACLEDのレポートによると、「メディアが略奪と破壊行為に焦点をあてているにもかかわらず、デモ参加者が広範囲にわたる暴力的行為を行ったことを示唆する証拠はほとんどない。デモが暴力的に変化した場所では、暴力を扇動するために(デモに)潜入した工作員がいたという報告がある」「白人優越主義のストリートギャング組織であるAryan Cowboysとつながりがあるヘルズ・エンジェルスが、商店の窓を叩き割っている場面が目撃されている」「(BLMデモ参加者の)暴力や破壊的行為は、主に、南部連合軍指導者の彫像を破壊するといったことに向けられている」ということだ。最近では、トランプを支持する極右の新ファシスト集団「プラウドボーイズ」がBLMのデモ参加者に暴力を振るう事件が多発している。

暴動を起こしている人たちの中には、正義感で破壊行動を正当化する人もいるかもしれない。また、抗議デモに便乗する犯罪が目的の人もいるだろうし、レッドソックスがワールドシリーズで勝った時にボストン市に繰り出して建物や車を破壊した、サッカーにおけるフーリガンのようなノンポリの便乗タイプもいるだろう。パンデミックで家の中に閉じ込められてフラストレーションを募らせている人にとっては、興奮する場面なのかもしれない。だが、それはBLMの本質とは無関係である。

反論④警察予算削減や解体に賛成するなんて、治安維持は一体どうするんだ

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それでは、よく話題になっている「警察の予算削減」や「警察の解体(と再編成)」という要求についてはどうだろうか?

特に最近のデモでは、これらのスローガンが目立つし、ジョージ・フロイド事件が起こったミネアポリス市では、市議会が警察の段階的な解体と代替組織の再編を議決した。だが、実際には、それほど大きな変化を求めるのは大多数ではない。いくつかの世論調査が行われており、そのいずれもアメリカ人の大部分はBLMを支持しているが、警察の解体や予算削減の支持は少数である。2016年の大統領選挙でトランプが僅差でヒラリー・クリントンに勝った激戦区のミシガン州で、地元紙デトロイト・ニュースとWDIV-TVが共同で行った9月の世論調査では、投票する可能性が高い有権者の58%がBLMを支持しているが、警察の予算削減を支持しているのは18%でしかなかった。

それより前の全米を対象にしたギャラップの世論調査でも、大部分の国民がBLMを支持していたが、警察の解体を求めるのは15%しかない。それらの世論調査をまとめると、大多数のアメリカ人はBLMを支持し、警察には解体ではなく改革が必要だと感じている。

このギャラップの調査には日本人にとって興味深い結果がある。「警察の取締り方法に大きな改善が必要である」と答えたのは国民全体の58%だったが、人種別になると割合が変わる。最も多かったのは黒人の88%で、これは納得できる。だが、次に多かったのは(よく警察のプロファイリングの対象とみなされている)ラテン系ではなくアジア系であり、なんと82%が「大きな改善が必要」と答えたのだ。ふだんはおとなしくしているので目立たないアジア系の住民が、警官に対して信頼感を抱いていないことを示す結果だ。

とはいえ、それらの人でも大部分は警察の解体や予算削減を求めてはいない。それよりも、警察が軍隊のように武装するために予算を使うのではなく、その部分の予算を精神疾患者のケア、職業斡旋、ホームレスの保護、薬物依存のケアといった別の形の「犯罪予防」にまわすことや、地域の住民と警察との親密な信頼関係を作ることを求めている。

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