CULTURE | 2021/07/15

「仕事を持って離島に行こう!」名前がない宝物にときめき、心を開放してビジネス感性を磨く。デザイナー・ウジトモコが感じた二拠点を楽しむための条件【連載】コロナ禍の移住・脱東京(3)

朝8時、博多港発の高速船・ヴィーナス号に乗って、長崎県の離島・壱岐島を目指した。船はジェットフォイル(フォイルはairf...

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ブランディングは、1年後から3年後くらいに成果がわかる

―― 移住当初は「壱岐しごとサポートセンターIki-Biz(イキビズ)」のコンサルタントに採用という形で来られたのですよね。

ウジ:はい。職員として雇用していただき、肩書は「デザインコンサルタント」で。火曜日から土曜日まで9時〜17時勤務。でも、フリーでデザイナーしていた時代も、17時に終わることの方があまりなかったですし。副業していいし、届出を事前に出して休みも取れるから東京に戻って講演もできるし。「これなら全然できる!」って思いました

―― Iki-bizが2020年8月に閉所になってからは、フリーに戻られたんですか?

ウジ:元々渋谷に自分の会社が作ってあって、今は、そちら経由の仕事をメインにやっています。今も「移住」とはあんまり謳っていなくて、「ワーケーション」とか「二拠点」って言ってます。実際、東京を捨ててきたわけでなく、「ちょっと行ってきます!」みたいな感じでしたし。だから帰れば「いつもの東京」がそこにあって、特に何も問題ないです。

でも、壱岐島にいると、朝陽がのぼって「きゃー」、風が吹いて「ひゃー」、魚がいっぱい泳いでて「わー」、大雨が降って「大変〜!」、こんどは花が一面に咲いて「素敵〜」、夜には星が煌めいて「きれい〜」……私にとって、島の毎日が「事件」の連続なんですよ(笑)。

あとは壱岐島って、渡り鳥が結構やってくるんです。壱岐市のテレワークセンターがある場所が鶴亀触(つるきふれ)っていうんですけど、本当に鶴とか渡り鳥たくさんいて。「きゃ〜、鳥が飛んでる〜!」ってなります。

―― 新著では壱岐の神社の写真や壱岐に来てからのエピソードが多数引用されていますが、本を書くことは決まっていて壱岐が内容に入ってきたのか、それとも壱岐に住んでいる流れの中でこの本を書くことが決まったのか、どっちなんでしょうか?

ウジ:前者ですね。元々ビジネスマン向けの本を書こうっていう企画は出版社さんから頂いてたんですけど、リーダーシップっていうことをトピックにしようと思っていたんです。デザインをきれいにするってよりは、物事をどうその取りまとめたりすればいいかっていう切り口で、マネジメントする人やリーダーシップを持つ人に役に立つような感じで。この本に書かれている「一点の法則」とか「重力の法則」とかってセミナーで以前から、よく、使ってたんですよ。

「一点の法則」(あれもこれもとゴチャゴチャさせず、最も伝えたい一要素に絞ってデザインすること)

いずれも『これならわかる!人を動かすデザイン 22の法則』(KADOKAWA) より

「重力の法則」(数値だけで「ここが中心だから正しい」と判断するのではなく、自分の目で判断して位置の微調整を行うこと)

―― ウジさんの本の魅力は「すべてが理論的に説明されており、再現性が高い」ということだと思います。地方創生にしても、たまたまスーパータレントがいたとか、すごい素材があったとか、そうしたシンデレラストーリーをみたいなものを追い求めがちかと思うんですけど、そうじゃなくて「この理論をマスターすれば、みんなある程度できるんだ」という希望をもらえる感じがします。

ウジ:ありがとうございます。壱岐に来てからは、自分が思ってた理論・法則みたいなものがやはり正しかったと完全に後押しされましたね。例えば「一点の法則」とか。

こっち来ると、何もないじゃないですか。何にもないところにある鳥居とかがめちゃめちゃ目立つんですよ。

同じことを観光名所に関して言うと、せっかく素晴らしいありのままの自然が残っているところに「謎モニュメント」とかを突然作って、一点悪目立ちとかしちゃうのだけは避けないとなって思ってて。

―― ちょうど先日書いた、木下斉さんの『まちづくり幻想 地域再生はなぜこれほど失敗するのか』(SB新書)の書評記事で、コロナ対策の臨時交付金でつくられたイカの巨大モニュメントについて触れたところでして…。

ウジ:もうね、あるあるすぎてね、泣けてきますよ。自治体は地方交付金や地方創生予算などでまとまったお金が入ってきますが、その地域に一番あった遣い方までは教えてくれないですよね。なので東京のコンサル、専門家を雇ってそもそも何をすればいいのかというところから知恵を出してもらうわけですけど、「一瞬で多額のお金を使ってアピールするのがうまい人」あるいは「一瞬だけ盛り上がるけど長期的には何も生み出さないプランを提案する人」がはびこったら、島は豊かになるどころか、むしろ貧しくなってしまいます。

私、この本で一番キーなのは「制限の法則」だと思ってるんです。お金があることでアイデアが陳腐化したり競争力がなくなったりする可能性ってすごくありますよね。やっぱり、無いことで人間はクリエイティブになり、色々考えるし、動くんですよね。

壱岐はすごく素敵なビーチがたくさんあるんですけど、糸島みたいにおしゃれなカフェがほとんどないんですよね。なので私、今朝コーヒー豆挽いて、ポットに淹れてお持ちしたんです。自分でポットに入れたコーヒーにすごく癒される日々です(そして、カフェ代もかなり浮いてます)。

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