CULTURE | 2021/06/25

ESG/SDGsを制するか否かが、企業の成長の分かれ道に。社会貢献と利益は一体となる。【連載】森若幸次郎のイノベーションのレシピ(1)

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近年、耳にする機会が増えたESG(環境(Environment)、社会(S...

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「ESG債務」の存在を認識しよう

寺田:日本の大企業のトップ層は、この世界的な流れに乗らなければならないという危機感を感じ動き出そうとしていたとしても、それを社内に浸透させ、同じような危機感を社員一人一人が持てるようにしないとなりません。そうでないと、先ほどの某大手スーパーのように「ESGに準拠していない品物を販売する会社だ」と思われてしまいます。それによって「この会社の製品は取り扱わない」「この会社の提供するものは買わない」「この会社には資金提供しない」という判断をされてしまい、事業にダイレクトにインパクトが起きてしまうわけです。

財務観点を基準としてみればプラスだったとしても、隠れたESG債務を持っている日本企業は多くあります。それを認識し、そこに対して積極的にESG投資をすることは急務です。

ーー 世界的な流れから見ても、ESG債務の解消は「やれたらいいこと」ではなく「会社が生き残るためにやらなければいけないこと」なのですね。

服部:例えば、世界食品最大手のネスレは、自社のESG債務の解消に積極的に取り組んでいます。今月(2021年6月)、ネスレはオーストラリア当局が定めるアクセス・トゥ・ニュートリション・ファンデーション(ATNF)などの国際団体が調査に用いるシステムによって自社の主要食品と飲料を調査したところ、60%以上が「公認された健康の定義」に当てはまらないという事がわかりました。このニュースは、日本では「ネスレ製品は不健康だったんだ」という捉えられ方が多く見られましたが、世界では違います。60%が不健康だったからNOではなく、ここまで徹底してデータを活用し、自社製品を管理・改善しようとする姿勢が高く評価されています。

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