CAREER | 2025/09/26

世代も分野も越えてつながる。
慶應SDM神武研究室 「オープンラボ2025」
開催レポート

特集:慶應SDM神武研究室 「オープンラボ2025」 開催レポート
2025年7月11日・12日、スペース中目黒にて開催

文・構成:カトウワタル(FINDERS編集部) 写真:菅 健太(株式会社DALIFILMS )

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研究を社会に開き、学生が向き合う場として

2025年7月11日(金)から12日(土)にかけて、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 (SDM) 神武直彦研究室による 「オープンラボ2025:世の中、きっとシステムデザインでなんとかなる!」 が東京・中目黒のスペース中目黒で開催された。

会場には、修士・博士課程の現役学生や教員、 研究員、修了生、共同研究などで関わりがある企業や政府機関、自治体の関係者、さらには慶應義塾の小中高の一貫教育高や 研究室で行っている取り組みで関係のある小中高生まで、幅広い世代が集まり、にぎやかな雰囲気の中行われた。

オープンラボ冒頭のオープニングセッションに登壇した神武直彦教授は、オープンラボの 「二つの目的」 を明確に示した。ひとつは 研究活動を社会に広く知ってもらうこと。スポーツや宇宙、食、農業、防災まで多様なテーマに挑む研究室の成果を広く共有し、研究の存在意義を社会とつなげる機会にしたいと語った。

もうひとつは学生が研究の進捗や成果をアウトプットすることでモチベーションを高める機会にすること。「ポスター作成やデモの準備など、こういった場を設けることで研究が加速されるのではないかと期待しています」 と説明した。たしかに日々の研究に追われ忙しい学生たちだが、こうしたオープンラボのようなイベントに向け行う準備や発表当日までの一連の経験が、学生にとって自らの研究を深く理解し直すきっかけになるというのだ。

オープニングセッションで語りかける神武直彦教授

多様な研究をつなぐ 「Fail Fast」 の精神

神武研究室は、SDMの理念である 「物事を俯瞰的に捉え、緻密に考える能力」 を実践する場として、「センシング&デザインラボラトリー」 を掲げている。

神武教授によると、研究の軸となる 「センシング」 には二つのアプローチがあるという。

ひとつは 自然科学的アプローチ。衛星データや計測機器を用いた定量的手法で、宇宙から街の明るさを観測して活気を測るといった研究も含まれる。もうひとつは 人文社会科学的アプローチ。インタビューや観察を通じ、人の行動や感覚から状況を捉える。例えば 「体調が悪そう」 と感じる「人によるセンシング」は人文社会科学的アプローチ、体温計で 「38度ある」 と知るテクノロジーによるセンシングは「自然科学的アプローチ」といった2つのことを常に念頭に置き、それらを目的に応じて意識的に使い分けたり、統合したりすることで様々なことを明らかにし、その成果によって社会課題解決に貢献していく。

こうしたアプローチは街づくりや農業、防災、スポーツなど幅広い分野に展開されている。学生のバックグラウンドも理系・文系が半数ずつと多様であり、「宇宙スケールで物事を考える」 という視座のもと、「宇宙規模IoT」 として地球観測衛星や測位衛星、ドローン、スマートフォンなどを活用した研究も進む。

さらに国際的な点も神武研究室の特徴だ。研究室にはイギリス、オランダ、デンマーク、タイの大学からの招聘教員4名を含む13名の教員が在籍、研究員6名、秘書4名が活動を支える。博士課程の学生9名の中には 「そろそろ修了しないとまずい」 と笑いを誘うメンバーもいれば、近年は女性の博士号取得を目指す人も増え、研究室の多様性を一層広げている。

オープニングの最後に、神武教授は研究室の精神を端的に示す言葉として、「Fail Fast」“できるだけ早く失敗しましょう” と投げかけた。

「失敗は改善へのきっかけであり、成功への分岐点を増やすチャンスです。オープンラボですので、今日もたくさんの“失敗”があるかもしれません。それを温かく見守っていただければ」 と語り、発表を前に表情の堅い学生たちの緊張をほぐした。

こうして幕を開けたオープンラボ2025は、トークセッション、ポスター展示、インタラクティブ体験を通じ、研究を社会に開き直し、学生が自らの研究に真正面から向き合う2日間の“実験場”として進んでいった。

会場内で行われたポスターセッションの様子
研究内容を体験することができるインタラクティブセッションのコーナーも設けられた
初日の終了後には懇親会が行われ、人気店Ataの掛川哲司シェフプロデュースによるブッフェが提供された。これも神武研修了生のつながりによるものだ

本特集では、今回2日間にわたり行われた 「オープンラボ2025:世の中、きっとシステムデザインでなんとかなる!」 で行われた8つのトークセッションを一つずつ取り上げ、学生・修了生・教員・企業人、そして未来を担う子どもたちが交わした対話を紹介していく。

ぜひ今後の記事に期待してほしい。


慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 (SDM) 神武直彦研究室
「オープンラボ2025:世の中、きっとシステムデザインでなんとかなる!」 
https://www.kohtake.sdm.keio.ac.jp/openlab2025/

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 (SDM) 神武直彦研究室
https://www.kohtake.sdm.keio.ac.jp/