Wi-Fiに関するストレスを解消してくれる次世代規格「Wi-Fi EasyMesh™」とは?
―― Wi-Fiを不安定にする要素とそれに対する対策方法はなんとなくわかりましたが、とは言え家の構造的にどうにもならないということもあります。それこそ床暖房を挟んでしまうとか、壁や床に使われている建材の影響を受けてしまうこともありそうです。
そうですね。このように不安定となる要素に対して、現在はWi-Fi 6という規格によって対応しています。理論値としては従来の約1.4倍となっており、先程もお話しましたが、これまで実測値としてなかなか超えることができなかった1Gbpsを実測値として出せるようになってきています。
Wi-Fiの進化の歴史。教えてバッファローより
――ではさらに進化していけば、いずれはまったく気にする必要がなくなるということでしょうか?
そうではありません。新しい規格だからといって電波の強度自体は上限があるため、そこは変わりません。現在は「組み合わせて使う」という考え方にシフトしています。現状多く利用されているのが「中継機」。特にコロナ禍以降、2020年に爆発的に売り上げも伸びており、2017年と比べて国内での販売台数は全メーカー合わせて199%にも達します。
ですが、中継機はあくまで「中継」するだけのもので、例えば中継先の電波を使用している部屋から親機に近い部屋に移動しても、中継機の電波を掴みっぱなしになっている、といった融通してくれない部分も多々あります。
―― あくまでデバイス側で切り替えなければならないのですね。
ですが、最近はこれらの解決策として「Wi-Fi EasyMesh™」という標準規格がでてきました。いわゆる「メッシュWi-Fi」と呼ばれるものです。
―― この「Wi-Fi Connected Home」でも導入されているとおっしゃっていたものですね。
簡単にいうと、メッシュWi-Fiは、親機と中継機が連携し合うことで、中継機の先までを「一つのエリア」として振る舞うようになります。先程お話した「端末の繋ぎ変え」の問題は、「Wi-Fi EasyMesh™」の場合端末が親機と中継機の間を移動しても、途切れることなく、シームレスに接続し直してくれます。
画像提供:バッファロー
またルーター間の移動と同時に、帯域も状況に応じて接続しなおすので、例えば2.4GHzに接続した状態で電子レンジを使うと通常であれば速度が落ちるといったことが起きますが、干渉を検知して自動で5GHzに接続するといった調整をしてくれるんです。
これまでメッシュWi-Fiは無線のみの接続でしたが、「Wi-Fi EasyMesh™」では有線を交えた接続が可能になりました。これによって予めどうしてもWi-Fiの届かない部屋では有線接続をするといった対応もできるようになりました。他にも「Wi-Fi EasyMesh™」の規格を用いたものであれば、異なるメーカーのWi-Fiルーター同士をメッシュとしてつなげることもできるため、弊社としても「Wi-Fi EasyMesh™」の普及に取り組んでおります。
―― なるほどルーター側で起きるユーザーの不都合はかなり減りそうですね。
手前味噌ではありますが、先程申し上げた、距離、妨害物、電波干渉と設置場所を気にしていただきつつ、「Wi-Fi EasyMesh™」を採用した機器に乗り換えていただくことで、今お住いのご自宅でも、しっかりしたWi-Fi環境を構築していただけるかと思います。
当然、まだまだある程度人が面倒を見なければなりませんが、「Wi-Fi EasyMesh™」という規格の普及と技術進化によってどんどん改善していきますので、是非期待していただければと思います。
〈編集後記〉
ものづくりの現場には歴史がある。誰もが知る企業ともなればなおさらだ。創業者の牧誠はオーディオ業界の厳しさを目の当たりにし、すぐさま当時最先端のパソコン業界へと舵を切った。その中でわずかな商売の隙間をみつけてはいそいそと種を植え、育てることを繰り返してきた。手本のような商売人、そして技術者の姿だ。
日本では「イノベーション」が起きないと言われて久しいわけだが、牧は現代の日本が求めてやまない「アントレプレナー」であり「エンジニア」だったわけだ。もちろん牧だけではない。ここらで一度、バッファローをはじめとする日本企業が築き上げた歴史と、その過程で生まれた愛すべき失敗の数々について、過剰に称賛するでもなく、過去の栄光だと唾棄するでもなく、社会全体で真剣に分析するべきかもしれない。きっと学ぶことは多いはずだ。
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