CULTURE | 2021/12/28

2021年バズったエンタメから見えたZ世代の本音『イカゲーム』から『チェンソーマン』『Apex Legends』「星野源」まで


Jini
ゲームジャーナリスト
はてなブログ「ゲーマー日日新聞」やnote「ゲームゼミ」を中心に、カルチャー視点...

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若者は大人たちが考えるよりも元気だ。大人たちがいない場所では特に。

最後に断っておくと、今回の議論は膨大な作品を「エンタメ」として横断的に論ずる上で粗はあったと思う。無論全ての作品を鑑賞した上で執筆しているものの、同じ「繋がりの矛盾」と言っても『チェンソーマン』と『Arcane』でその解釈は異なるし、逆に十分トレンドにありながら紹介しきれなかった作品(藤井風は触れたかった)もある。

ただ、本稿の目的は2021年、注目を集めながらソーシャルな空間で刹那に消費されていくエンタメを、可能なだけ多くの作品から「今」ならではの感性を尊重し、その上で、「Z世代」の生活を彼らの多くが共感できた作品を通じて、少しでもフェアに引き出す点にある。その点において、本稿は「エンタメ」「Z世代」双方への敬意を込めつつ、その価値を少なからず言語化できたと思う。

その上で、各論点でも述べたように、今の若者はデジタルネイティブとしての生活習慣や人間関係を築くものの、それは必ずしも幸福でも、また不幸でもない。そもそも特別なことですらないものとして受け入れている。従って、幸福を無批判的に謳歌するほど愚かではないし、さりとて、誰もがリベラルやエシカルに目覚めて運動に身を投じるわけではない。

本稿で度々引用したレポートに携わった上坂氏によれば、「上の世代に対する強い疑念、諦観を持っている」一方で「Z世代だからみんなリベラルでエシカルなんでしょう」という認識は一面的でしかない理解」なのである。もう一つ付け加えるなら、主にウェブの社会、YouTubeやTwitch、Instagram、Tiktok等で、彼らは「上の世代」から離れた場所で独自の社会を作り上げている。星野源に言わせれば、「僕らそれぞれの場所で 重なり合えそうだ」ということ。

もちろん特定の世代全員がそうではないが、少なくとも概ねの潮流としては、ウェブならではの距離感と媒体で、声を張り上げない範囲で積み重ねていく信頼、理解、尊重、調和、内省、自己愛といった連鎖(※)で、現実も虚構も生きていく……それは、今回紹介した各作品に共通するテーマではないだろうか。

(※)いずれも2021年発売の『ドキドキ文芸部プラス!』に登場する各エピソードのタイトル


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