「コミュニケーション」と「教育」が災害を乗り越える鍵に
最後にこの日の感想を聞かれた3名。今村氏は、「やはり専門家と市民とのコミュニケーションが大切。災害についてもわかっていることと、そうでないことを共有する」「そして国際的なスタンダードな知恵というものを作っていく必要があると思います」と、市民と政府、そして各国のグローバルな「繋がり」や意思共有の重要性を再度強調した。
「一般の人たちが問題だと思われがちだが、人々をソリューションの一部として考えなければならない」と語ったのはガリア氏。「結局どんな事故や災害でも、まず現場にいるのは一般人。彼らの動きがなにより大切になります。そして一般人が適切な動きをするために、やはり準備、つまり教育が一番大切なんです」と話した。
そしてタン氏は、「台湾では市民とのコミュニケーションがうまく効果を発揮したんです。それはトップダウンではなく、各方面の専門家とのコラボレーションによるものでした」と話す。日本でも話題を集めた、柴犬の写真を使った手洗いなどの啓発ポスターを例に、「専門的な情報をいかに市民と共有するか」という点においてメッセージの伝え方を含むコミュニケーションの重要性を語った。
「専門家たちは子供の視点を無視したりもしますが、そうではなく、専門家や政府、一般市民がパートナーシップを組み、情報を受け取った民間がスキルとして発揮していくことが大切です」と、やはり首尾一貫して政府と市民が相互にコミュニケーションを取る対等な関係構築の重要性を説いた。
『DX時代のインフラ強靭化、防災ITの推進』と銘打たれた講演であったが、3者からのメッセ―ジはアナログからデジタルへの様式変化などではなく、いかにして政府や専門家が市民とコミュニケーションを取り、適切な情報や認識をインプットしていくか、ということに尽きるものだった。
もちろん、その過程においてテクノロジーが資するものは大きいが、テクノロジーの発達それ自体がズバッと問題を解決してくれるとは誰一人として語らなかった。なるほど、タン氏が普段から市民と言葉を交わすために膨大な時間を割く理由がわかってきたではないか。