EVENT | 2021/07/05

日本でテレワークが進まない「5つの要因」。経営陣・中間管理職・現場が明日からすべきことはこれだ!【特集】進まない・続かないテレワーク 2021年の課題

特集記事【「テレワークで社員監視ばかりするダメ上司」が生まれるワケ。部下を病ませもサボらせもしないマネジメントを考える】...

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社長の「あれ考えとけ」な丸投げパターンは「裏にあるニーズ」を読み解け

―― 次は「社長や上層部が聞く耳を持たない」の逆パターンと言いますか、社長がビジネスバズワードみたいなものを拾ってきては「これをうちの会社で導入できないか何か考えてみろ」と司令が下るものの、ただでさえ忙しい通常業務を減らしてくれるわけでもなければ識者などを呼んだ研修・サポートをしてくれるわけもない、というような会社も結構ある気がしています。

沢渡:丸投げされるわけですね。これもよくあると思います。

―― そこではとりあえず「やってる感」を示すためにブレストを開催してレポートを書いてみるものの、当然ながら次のアクションは起こらずウヤムヤになり、しばらくすると社長がまた別のバズワードを見つけてくる…ということが繰り返されると、沢渡さんの本でもたびたび言及される「抵抗勢力になる中間管理職」が誕生するのではないかと思っています。

沢渡:こうしたケースの場合、トップも丸投げするだけでなく汗をかく必要があるのは大前提ですが、現場目線のより実践的な考え方として「トップに汗をかいてもらうためにはどうすれば良いか」を考える必要があると思います。

例えば社長が「DXをやれ」と言った場合、その裏にある真の目的が何なのかを推し量る必要があります。不採算事業をやめることなのか、利益率を上げることなのか、あるいは新しく採用した社員の定着率を上げることなのか。

それがハッキリすると、デジタルを使って仕組みを変えることによって、どうすれば不採算事業がやめられるのか、既存事業の新規顧客開拓に寄与できるのか、フルリモートで採用候補者とつながるハードルを下げられるのかなど、そういう問いを立てながら社長にも当てに行く人が必要です。

私はこれからの時代の組織を引っ張るのに求められるのは「ファシリーダー」の役割なんじゃないかと思っているんです。リーダーとして単にカリスマ型、統制型で引っ張っていくだけでは限界がある。なので、ファシリテーション能力を用いて相手の意見を引き出したり、あるいは異なる立場の人同士の「景色合わせ」をしたりしながらメンバーをモチベートして率いていく、リーダー+ファシリテーターがファシリーダーです。

「当社はオンライン会議もチャットツールも使用禁止」はもはや取引先に「迷惑」

―― なるほど。つまるところ社長とも「景色合わせ」が必要であることには変わりないということですね。

沢渡:はい。ただテレワークに関して別の観点で根深い問題だなと思うところは、従来の統制型、製造現場の管理主義的な仕事の進め方は、テレワークの「相手を信頼し監視もしない、権限移譲的なオープン型」とは真逆の考え方なんですよね。特に製造現場型の仕事のやり方は、四六時中メンバーが同じ行動をすることを良しとし、目の届く範囲内に管理者とメンバーがいる。そうした会社は、その場にいない相手と信頼関係を結びながらコミュニケーションを取って成果を出していく仕事のやり方を経験したことがないので、管理する側もしんどいし、指示を受ける側もしんどいのですよ。

統制型マネジメントの組織と、オープン型マネジメントの組織の違い

変わりたくないベテランや中間管理職を見ていると、仕事をする、あるいは部下を管理するということへの考え方が20年、30年進化していないんですよね。そういう企業は研修を新卒入社時と管理職就任時にちょっとやっただけで、あとはずっと会社の中にいるだけ、外の世界に触れなくても生きてこられてしまう人が大勢います。新しい知識を取り入れたり、スキルをアップデートしたりする機会がないのです。

――そうですね。

沢渡:そうした会社でデジタルワークのような新しい仕事のやり方にアップデートしていくためには、マネージャーも一般社員もマインドチェンジとスキルアップが必要です。私も経営者や人事部門に対して「テレワーク自体を目的化する必要はないですが、デジタルで社員や取引先とつながって滑らかに仕事をすることは、これからの時代は文房具を使える、パソコンやメールを使えるのと同等に求められるビジネススキルですから、ITと教育、ITと人材育成にとにかく投資して下さい」という話をよくしています。

もっと具体的な話をすると、会社から「DXせよ」「イノベーションせよ」と言われ、複数企業でコラボレーションプロジェクトが始まることが最近多いですよね。それでキックオフミーティングを開き、今後も機動的に意見交換をしていきましょうとなった際、どのツールを使うかというタイミングで「うちはZoomはダメでTeamsしか認められていないんですよ」ならまだしも、「オンライン会議もチャットツールも禁止されているのでメールでお願いします」と言われた時に他の会社はどう思うかということです。とてもDXもイノベーション出来る気がしないですよね。

加えて、最新ITを積極活用するワークスタイルに慣れておかないと、最近はエンプロイアビリティ(雇用者としての能力)という言い方をしますが、人材としての価値を伸ばすことはできない。それは雇用する会社にとっても損をする話です。DX以前に、デジタルエクスペリエンス、つまりデジタル技術を恐れずに触ることから始める必要があります。そして、そうした成長の環境を万全に整えた上でもなおも変わろうとしない、改善の見込みがない、あるいは組織の足を引っ張る人に関しては、最終手段で厳しい処遇をするしかないと思います。

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