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文:山田山太
世界では、毎年約13億トンもの食糧が廃棄されていると言われており、これは総生産量の3分の1に当たる。だが一方で世界の9人に1人が飢餓に苦しんでいると言われており、不条理な状況が続いている。
しかし、そんな現状に変化をもたらすことが期待される技術がアメリカで生まれ、今注目を集めている。
人工保存料も一切不使用
そもそもなぜ大量の食糧廃棄が起こるのか。その理由の一つとして特に途上国では、農場から都市に運ぶ輸送段階で、冷蔵コンテナなどが足りないといったインフラ不足のため、食品が腐敗してしまうことが多いという。
そこで、ニューヨーク州北部のフードテック企業Farther Farms社は、新たな殺菌技術を開発。気体と液体の特徴を兼ね備えた特殊な加工を施した二酸化炭素「超臨界CO2」を、食品が入った袋に充填することで、細菌を死滅させ、食品の酸化を防ぐことに成功したという。
デモンストレーションでは、通常冷凍状態で輸送される調理前のフライドポテトを、常温の状態で賞味期限をなんと90日以上も伸ばすことに成功。しかも人工保存料は不使用だ。この他にも、野菜やサルサ、調理済みの鶏肉でも、この技術の適用が確認できたという。また、あえて加工済みの食品に焦点を当てたのは、生産元の農家がより経済的な利益を得る助けになることを狙っているからとのこと。
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