自腹で備品購入・事業開発するうちに独立へ
―― そこから独立されたのはどうしてだったんですか?
稲垣:業務改善やインフラ整備を進める中で、稟議書だとかいろんなハードルがあって進められないことが多くでてきました。それで自腹でいろんな掃除道具や備品・ソフトを買ったりサービスをつくって、それを会社で使うってことをよくしていたんですよ。あまり良くないことなんですけど。
―― それはすごい。
稲垣:双方向の教育OJTのオンラインツールもそのとき自腹で作りました。新しくビルメンテナンスの仕事に入った人がTODOを見て業務が覚えられるツールです。TODOに沿って作業をしたらその様子を動画でアップしてもらう。それに対して、管理者はレビューが送れる。このサービスを会社で売り始めたあたりから、徐々にエスカレートして……自分の事業と会社の事業が混在しちゃう状態がしばらく3、4年続いて。僕が最大にお金を使って最大に失敗したのは、設備点検のマニュアルが見られるウェアラブルグラスの開発です。
―― ARで見られるんですか?
稲垣:そうです。このガジェットはサン電子さんが作っているんですけど、中のソフトを開発しました。設備の点検箇所は携帯が通じないところばかりなので、このソフトは全部オフラインで使えるようにしたんですよ。ビッグサイトのスマートグラス展にも出させてもらったりして、完成プレセールが去年の4月予定だったんです。
―― 2020年の4月というと、新型コロナウイルスの流行で緊急事態宣言が出たころですね。
稲垣:そうなんです。そのせいで契約が全部飛んじゃって。これは別で稼がないかんと。それでビルメンテナンスのITコンサルタントをやるようになったんです。
ウェアラブルデバイスを開発する中で、ある問題点に気付きました。設備点検の動画マニュアルは現場で作らなくちゃいけないんですけど、現場で業務にあたる人たちは、動画を撮ることができない。どうやって撮ったらいいのか、どうやったら分かりやすいのか考えれば考えるほど撮れなくなっちゃうんです。そもそも現場にスマホがない。じゃあまずはビルメンテナンス業界のITリテラシーを高めようと思ったんです。
―― なるほど。
稲垣:でもビルメンテナンスのITコンサルタントっていっても前例がない。そこでYouTubeでまずアピールしようと100本ビルメンテナンスのノウハウを上げ続けたんです。5月から毎日。
―― 毎日っていうのはすごいですね。
次ページ:スマホを顧客に配り連絡を待つ営業スタイル