EVENT | 2021/04/28

「主人公にならない」ビルメンテのコンサルがベトナムのホテル経営、シイタケ工場まで副業を広げる秘訣 【連載】超副業論!(3)

働き方の多様性や柔軟性を認める時代となり、ここ数年、保守的な立場をとっていた多くの企業で副業を認める動きが増えている。 ...

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「主人公にならない」でどんどん事業をつくる

―― お話を聞いていると稲垣さんの特長はマッチングの妙と、行動力と、初速の早さですよね。

稲垣:あとは「主人公にならない」ってことは大事ですね。分からないまま主人公になると、分かったふりして進まない。だから人に全部任せます。騙されてもいい。たとえそれで利益が全部なくなっても、それぐらい1個なくなったとしても次あるし、みたいな感じでやる。1個の事業に固執して、何が何でも成功させるっていうのはないです。

―― けどそれはすごく今っぽい。そうやって仕事のポートフォリオを組んでいくんですね。

稲垣:ベトナム人がそういう仕事のやり方なんですよ。作ってだめだったらすぐ事業を売るか、捨てる。その繰り返しで、別に失敗を失敗とも思っていない。1年後に訪ねると、全然違う仕事をやってる人も多い。「君、前は電動バイク作ってなかったっけ?」「もうあれやめたやめた」みたいな(笑)。

―― 日本人とは全然違いますよね。日本人は同じ仕事を続けて、職人っぽくなるのに美徳を見出すところもありますよね。

稲垣:日本では企業やビジネスの寿命が永遠だと思っている人が多い気がします。だけど僕は時期性や賞味期限を考えてビジネスをしないと、大やけどをすると思っていて。事業の賞味期限内で、儲かった一部をもらえればいいし、その事業自体別の誰かがやってもいい。何か作るときでも、投資回収が何年で、10年経ったら多分この事業プランじゃなくなるよな……じゃあ売るときはいくらで売ろうかってところまでちゃんと頭に入れて始めます。

―― 日本人では「起業しても保つのは10年で数%しかいない」みたいなことを嘆く人はいるけど、そうであっても別に全然構わないってことですよね。

稲垣:事業のスパンってもっと短くてもいいんじゃないか。だってこれだけ時代が動いているわけだから。

―― 稲垣さんとはClubhouseで知り合ったけど、どんどん新しいことを始められていますよね。

稲垣:37歳になるまでSNSにもYouTubeにも触っていなかったから、浦島太郎状態でバーッとやっているところもあります(笑)。でもみんな面白いことを考えていると思うんですよ。でもみんなどうしたらできるかなって足踏みしちゃう。できない理由はパーツが足りないから、時代が追いついていないからっていうのがあるんですよ。僕はすごく社会に対して不満がいっぱいあるし、いつも疑問を持っている。それが原動力かもしれないですね。

―― 2020年はコロナ禍になって、日本中の企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んだじゃないですか。1つのきっかけで急に仕事のやり方がいっせいに変わることがありますよね。

稲垣:それはすごく僕にとっては、追い風になっています。いま、面白くてしょうがないですよ。今までは「お前、会社にも来んとテレビ会議でお客さんとこ行かずにちょろちょろやってるらしいな」って怒られていたのが当たり前になった。他の業界からすると当たり前のことなのが、ビルメンテナンス業界では新しかったりします。

―― 稲垣さんに会うまで、ビルメンテナンス業界を僕は知らなかったんですが、潰れない業種ですよね。リーマンショックや災害があっても、ビルの清掃のしごとって絶対ありますもんね。

稲垣:ビルがある限り続きますから、絶対潰れないです。しかも利益構造がすごく良くて。年間契約が普通で、売上が下がっても利益も100%変わらない。会社が大きくなるか小さくなるかだけであって、潰れることは少ない。潰れるとしたら人が供給できなくなったときですね。だから今売りに出ているのは人手不足でとか、後継者不足でってビルメンテナンス会社が多いですけど、ほとんど無借金だし、資産価値も高い会社が多いです。

―― その業界に、さらにロボットを入れようとしているわけですね?

稲垣:そうですね。次の段階に行かせようかなと。僕は「ビルメンテナンス業界の魔王」になろうと思っていて。DXが進まないビルメンは潰れてもしょうがないってぐらい、改革していきたいと思います。

―― 面白いお話を聞けました。ありがとうございました!


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