BUSINESS | 2026/01/26

製品の展示方法も提案すべき
「空間全体」 の構成から壁面グラフィック
デザインを考える

連載:展示会デザイナーが伝える販促空間の「壁面グラフィック」の手法
※本記事は月刊 「Signs&Displays」 の記事から転載しております

SUPER PENGUIN株式会社 代表取締役/展示会デザイナー 竹村尚久

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第6回/デザインの手法―2(全7回)

第6回となる今回は、少し視点を広げて壁面だけでなく「空間全体」から壁面グラフィックの在り方を見てみよう。

販促空間では、空間内にある全てのものが「結果を出す」ためにデザインを行うことが重要になる。それは壁面においても同様で、デザインを検討しているその壁面グラフィックが結果を出すためにどんな役割・機能を持つべきなのかを考えなければいけない。そして「空間」である以上、その役割と機能はその壁面が置かれている状況、設置される商品、想定される接客の方法など、周囲との関係性の中で決まっていくことになる。

今回は、このような周囲との関係性の中で決まってくる壁面の構成方法について、3つの事例をお伝えしていこう。

CASE-1/「製品」を販促する場

雑貨や産業系の部品など、何らかの形あるものを出展する場合、ブース内には当然ではあるが、必ず製品等が置かれることになる。このような時に壁面に書き込むことの多くはその製品の機能等を解説する内容となり、出展者は可能な限り多くのことを壁面に書き込もうとする。産業系の展示会の場合、この手法が一般的となっており、壁面には出力シートや、A1サイズのパネルを多く掲示する、という企業がほとんどだ。このような際の効果的な壁面デザインの手法は、これまでの回で詳細にお伝えしてきた通りだ。今回は、これまでとは別に産業系の展示会に出展する方の多くから相談されることについて解説してみよう。

当社では、展示会ブースをデザインする際に、製品の陳列方法まで詳細に検討するようにしているが、そんな中で産業系出展者の方の多くが、「小さい部品をどう展示してよいか分からない」と悩まれている。このような際、私は陳列方法として展示台の手前部分に、展示台全体を統一するような「帯上のキャプション」を設置するようにしているが、同時に壁面を活用することをお勧めしている。壁面に、その「小さな部品」の拡大写真を大きく掲げると遠目から何を扱っているかが分かりやすくなり、来場者を引き寄せることに繋がる。

この「製品の拡大写真」を壁面に掲示する方法は、雑貨系の展示会でも活用することができる。例えば細かな細工を施したアクセサリーなどは小さい上に数多く設置されるため、見えにくく、結果として特徴が伝わりにくくなってしまう。このような際は、そのアクセサリーを拡大した写真を壁面に掲示すると分かりやすくなる。

小さな商品の展示は、拡大写真を壁面に掲示することで補完することができる

では、ここで雑貨系の展示会の場合の壁面活用方法をお伝えしてみよう。第3回の記事において、壁面グラフィックを考える際には、壁面の前に商品が置かれている状況を忘れないように、という点をお伝えした。雑貨系展示会でありがちなのは、目の前に商品が置かれているにも関わらず、背面の壁に商品の写真が掲示されている、という状況だ。壁面グラフィックを検討している段階、つまりPC上では、その空間全体を認識しにくくなるため、つい商品の写真を入れてしまう。その商品写真がブランディングを想定したイメージ画像ならもちろん問題ないのだが、ただ商品画像を壁に掲示しただけでは、目の前に設置される実際の商品と被ってしまい何とも説得力のない違和感のある陳列になってしまう。

雑貨系の展示会の場合、当社では壁面グラフィックに、その商品を「補足するような写真」を掲示することをお勧めしている。例えば、その商品を製造している工場や職人さんの作業中の写真、そのイメージのもととなったものなどだ。展示台に置かれた商品の背景の壁に、商品の説得力を増す何らかの画像を掲げれば、その壁面全体がとても分かりやすくなり、結果的に多くの来場者が集まる場となってくれる。

展示商品にまつわる写真などを壁面に掲示することも有効

CASE-2/大型機械などを置く場合

展示会によっては、大型の機械等を置くような出展者もいることだろう。このような出展者の方からよくお聞きする悩みが「数を置けない」というものだ。製品のサイズが大きい以上、限られたスペースに置ける台数は決まってくるのは仕方のないことだ。このような時、私は発想を変えた方がいいと考えている。大型の機械を持つ多くの企業は、ショールームを抱えていることが多い。そうであれば、展示会場では一部を見せることとして割り切り、実際にショールームに足を運んでもらうように仕向ければ営業的にも有利になるはずだ。当社ではこのような大型の機械を扱う企業の場合、ブースの壁面上部を活用することがある。小間サイズにもよるが、大型機械を扱う出展者の場合、広い面積のブースにすることが多く、すると必然的にブースの高さも高くすることができるようになる。下記の画像は、壁面の上部に、「その他のラインナップ」を並べて掲示した事例となる。このような壁面掲示方法の利点は、上部に掲示してあるため、出展者はブース内のどこからでも、壁面上部を指さして「あの製品はですね・・」と説明をすることができる。ブースの上部壁面を説明用に使用するという手法は意外に使いやすい方法なので是非試してみてほしい。その際、遠くから読めるサイズの文字サイズであることが言うまでもない。(第3回参照)

大型の機械等を紹介するため、製品ラインナップを壁面上部に記載した例

CASE-3/「無形商材」の場合

展示会などの販促空間では、「形ある商品がない」、つまり「無形商材」を扱っている、という出展者の方も多いことだろう。「当社は形ある商品がないので、どのように展示を考えていいか分からないんです」というのも、多く相談を受ける事項だ。このような場合こそ、本連載でこれまでお伝えしてきた「解説系壁面」の手法(第5回)が役に立つので、是非参考にしていただきたい。加えて、無形商材のブースでは、キャッチコピーもとにかく重要だ。キャッチコピーについては第4回で述べたが、形ある商品がない以上、何を扱っているかを表記するキャッチコピーとサービスを解説する壁面グラフィックの手法が、成否を完全に分けるといっても過言ではないだろう。これまでに記載した記事を是非参照していただきたい。

さて、本記事では、このような無形商材を扱う出展者からよくある相談を扱ってみたい。

壁面に説明したい項目を掲示していくと、通常は、「この壁面にこの内容、あちらの壁面にはこの内容」と壁面ごとに内容を決め、順番に掲示していくこととなる。小さな規模のブースならこれでもよいのだが、小間数が大きくなった場合、良くお聞きする悩みが「手前の壁面で説明をして、その後奥の壁面に連れて行こうとすると、そのまま去ってしまった」というものだ。壁面と壁面の間に距離があるので、なかなか案内しきれない、という悩みだ。

このような時、当社では少々アクロバティックな提案をしている。それぞれの壁面に、それぞれ違うことを記載するのではなく、全ての壁面に同じ内容の記載をしましょう、というものだ。分かりにくいので、細かく説明すると、例えばA・B・C・D、4つの壁面があったとする。それぞれAにはAの内容を、BにはBの内容を、と記載していくのがこれまでのやり方だ。しかし、当社では1つの壁面にA・B・C・D全ての項目を書き込んでしまい、それを4か所設けるという手法を取る。これは、「説明をするものが4つの壁面に分かれている」という考え方ではなく、「4か所の商談場所がある」という考え方になる。

A・B・C・Dの4つの壁面がある場合、それぞれAにはAの内容を、BにはBの内容を、と記載していくのではなく、1つの壁面にA・B・C・D全ての項目を書き込んでしまい、それを4か所設ける。これにより、「説明をするものが4つの壁面に分かれていた」のが、「4か所の商談場所がある」という状況に変わる。

このようにした場合、通常出てくる疑問が、「1つの壁面に4つの事を書き込むなんてスペース的に無理でしょう」となるはずだ。ここで、今回の連載でこれまでお伝えしてきた手法が活かされてくる。第5回の記事で、「来場者は思っている以上に読んでくれない」「大切なことは伝えることであり、壁面だけでなく、手持ちの資料など、設え全体で、空間全体で考える」という趣旨のことをお伝えした。この考え方を取り入れれば、A・B・C・D全てを1つの壁面に入れることは十分に可能となる。この手法は実際に当社でも複数の企業ブースで試してみて、「どこでも商談ができるのでかなり便利だ」とのよい評価をいただいている。

以上、今回は壁面だけでなく、視点を空間全体まで広げて、壁面グラフィックの手法を説明してみた。展示会のような「販促空間」は「空間」であるために、紙媒体とは違いその壁面が置かれている周囲の状況と深く関わることになる。本記事を読んでいただいて、壁面グラフィックは、設置されるもの、説明の仕方など、空間全体の関係性の中で決められていく、ということをご理解いただけたのではないだろうか。

販促空間における壁面グラフィックは、美術館や展覧会のそれとは異なり、何らかの「ビジネス的な結果」を出す必要性がある。このことから「単に美しく何かを描けばいい」というものではなく、そこには何らかの戦略が込められている必要がある。私は日頃、空間デザインの考え方を「アート系空間デザイン」と「ビジネス系空間デザイン」の2種に分けて説明を行っている。

最終回となる第7回はこの2つの空間デザイン思考についてお伝えして本連載を終了したい。

※本記事は月刊 「Signs&Displays」 で2025年2月号から8月号までに掲載された記事から転載しております。

連載:展示会デザイナーが伝える販促空間の「壁面グラフィック」の手法
https://finders.me/series/kqJTU8QIxo5Tr4Qqiu0/


Product Planets by Signs&Displays (月刊サイン&ディスプレイ)
https://signs-d.ne.jp/

SUPER PENGUIN株式会社
https://www.superpenguin.jp/