被告人が最終陳述で語ったこととは
検察官の質問は終わって、弁護人が追加で質問です。
弁護人「ツイッターの投稿って、自分の中でどういう物でした？」
T被告人「独り言とまでは言わないですが、思いついたことを虚空に投げるような。誰か見てくれればいいし、日記のようなもの」
弁護人「過去のツイートで“バック”これは？」
T被告人「家に帰った…だと思います」
弁護人「“マジで3日でどうやって死ぬんだ”は？」
T被告人「100日後に死ぬワニがアップされてまして…ワニ君が死ぬ様子はなかったので」
元々、主語もない、あとで見返しても自分でもわからないようなツイートが多い中での“私はコロナだ”や“濃厚接触の会”だったんですね。
最後は裁判官からの質問。
裁判官「企業のロゴの重要性ってわかってますよね？」
T被告人「はい」
裁判官「ヤフーやメルカリのロゴは強力ですもんねぇ～」
T被告人「そうですね」
裁判官「ビールグラスに描かれたロゴマークは、アサヒとかサントリーとかサッポロとかキリンなどの大手のビール会社ではなさそうですね」
T被告人「そうです」
と、店のロゴマークとは思っていないって言い分に無理があるんじゃないかと確認してる感じ。
裁判官「なぜ、示談しようと思いました？」
T被告人「あっと、その～…結果として、お店にご迷惑をお掛けしたので謝りたい、と」
裁判官「なぜ、謝らなければならないんでしょう？」
Ｔ被告人「自分の不注意があったので…」
裁判官「お店に迷惑掛かってるのは確認してて、9月に略式起訴。その時に検察官から説明受けましたよね？」
Ｔ被告人「はい。仕方ないと思って同意書を書きました。もし不満があれば、14日以内に正式裁判の手続きできますよと。それで故意って何なのか考えるようになりまして、検察官の言う故意って違うんじゃないかと思うようになりました」
本来なら罰金払って終わりだったので、Ｔ被告人が自ら望んで法廷での正式裁判になっていたのでした。
確かにＴ被告人は店に恨みも持ってないし、騒ぎを起こして喜ぶような狙いがないのも伝わってくるかど、考えが固まって印象を受けてるんですよね…。
第2回公判はこれで閉廷。2021年1月15日に行われた第3回公判は傍聴席が満席で入れませんでした。
そして、2月15日に行われた第4回公判。この日は、論告と弁論が行われました。
検察官としては、前日に逮捕された人がいるニュースを知ったうえで、「私はコロナだ」とツイートしているし、店名の写真も２枚撮影してロゴマークが見える方をアップしていて、未必の故意があると指摘。
ということで、罰金30万円が求刑されました。一方弁護人としては、本件は故意も実行行為性も欠けていて、偽計が立証されていないと指摘。さらに第三者が錯誤に陥って通報しているのであって、訴因も特定されていないと。そして、さまざまな鳥が呟くのを森の中で聞くのがツイッターであり、プロフィールページを見ると、２つの投稿が繋がっているという検察官の見方は例外。しかも、寝不足で注意力低下のよる衝動的なツイートで、ほとんど反応もないので、未必の故意は証明されていないなどと無罪の弁論と行っていました。
裁判官「最後に何か言っておきたいことがあればどうぞ」
Ｔ被告人「結果として迷惑を掛けたのは、謝ります。冗談めかして表現すること以外は考えていませんでした。今は社会人として、いけないことをしたと思っています。その批判は受けます。それが犯罪に当たるとは納得いきません。実名報道されたことで混乱してしまい、“故意があった”という調書が出来上がってしまいました」
と最終陳述をして、閉廷。
判決は10日後の2月26日に言い渡されました。結果は罰金30万円。
判決理由としては、同じツイッターアカウントから59分の間に、２つのツイートをしていて、コロナの感染者が飲み会に参加していると思われる可能性が高いこと。当時はマスク以外に感染防止策はなく、風評により客足が遠のく可能性もあって、店側も110番通報と消毒をしているのであるから冗談とは評価できないと。
そんな判決理由を30分程朗読して閉廷でした。長い裁判だった…。SNSで何かを投稿したとき、それで喜ぶ人もいれば悲しむ人や怒る人もいるってのは想定しておかないといけませんね。他人に見せるつもりもないノートに鉛筆で「私はコロナだ」って書いて、うなぎ文だなぁ…って一人でニヤついているのとはわけが違いうでしょ。飲み会で撮った紙焼きの写真を挟んだアルバムに「濃厚接触の会」って書くのとは全然違いますよね。Ｔ被告人としても反応を期待してたはずなんですよ。SNSを使ってたんだから。意外と自分の気持ちって伝わらないものなのです。