EVENT | 2021/04/05

マレーシア人が日本で『FF15』制作に携わりながら学んだ「多国籍チームで成果を出す秘訣」【連載】マッキャンミレニアルズ松坂俊のヘンなアジア図鑑(4)

ワン・ハズメーさん(写真左)と筆者(写真右)
今回はマレーシアの独立系ゲームスタジオ「Metronomik(メトロノミ...

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せっかく多国籍のメンバーで仕事をするなら「いかにユニークな結果を生むか」

松坂:素晴らしいですね。あとはゲーム作りだけでなく起業家の先輩としても質問をしたいんです。僕らがマレーシアで始めたスタートアップで、今年から本格的に現地社員募集を始めていくんですけど、「日本人がマネージャーでやっていく」ということに対するアドバイスってあったりしますでしょうか?

ハズ:なるほど。ありきたりだけど「他の人の前では怒らないようにする」とかですかね。あとは松坂さんがそうだという話ではないですが、国籍をベースに上下関係は作らない方がいいなと思います。これは当たり前のようですけど、日系企業を含むマレーシアにいる外資系の企業でよくあるのは、本国社員の方が上でローカル社員の方が下と決めつけてマネジメントをしてしまうケースは存在します。これだとやっぱりパフォーマンスは出ないですよね。

あとは、クリエイティブな仕事を実現するというためには、「落としどころ」に対する意識を変えていく必要があるかもしれません。

松坂:それはどういうことですか? 

ハズ:日本人の言う「落としどころ」って、チーム内の調和を図るための議論であることが多いと思うんですけど、せっかく多国籍のメンバーで仕事をするなら「いかにユニークな結果を生むか」という観点で議論をした方がもっと良くなるんじゃないかと思うんです。

松坂:なるほど。調和のためだけに落とし所を探しがちなんで、ためになる。

ハズ:FF15も、やっぱり日本人の意見だけで進んでいたらああした世界観にはなっていないんじゃないかと思っています。最終的にはユーザーエクスペリエンスを大切にしていくべきだとは思いますが、そこに至る過程は良い意味で空気を読まない、異分子を入れていくのは良いことなんじゃないでしょうか。

松坂:今の話で思い出したんですけど、僕の会社のマレーシア人メンバーの一人と話をしていて、僕らとしては「もっと遠慮なく意見してほしい」と思う一方で、本人としては「周りはみんな年上だし業界経験も豊富だし…」と尻込みしてしまうということを聞きました。そのメンバーの領域では僕の経験が全然少ないので、本心からいろいろ聞きたいんです。ただ、それも「話してよ!」と受け身の姿勢をするんじゃなくて、どんどん自分から引き出していかなきゃダメなんですよね。

ハズ:「マレーシア人と日本人の話」で言うと、ちょっと日本人に憧れ過ぎちゃっているところは感じますね。「日本人の言うことだからこれが正しいんだろう」みたいな感じというか。 

松坂:それは日本人の欧米人に対する態度でも関連するところがありますね。

自分としてはハズさんの「自分の国の誇りになるようなプロダクトを産み出したい」という考えをすごく尊敬します。僕のスタンスとしては日本でずっと働いてきて、マレーシアに新たなマーケットがあると期待してやってきましたし、ある種グローバルなプロダクトというか「国籍関係なく喜んでもらえるプロダクト」を志向してきたところがありました。

ただ、そのうえで僕自身マレーシアが大好きで移住しましたし、「マレーシア発のプロダクト」として応援してもらいながら大きくなっていきたいと思っています。

ハズ:うんうん。そう言ってもらえると僕も嬉しいです。

松坂:経済学者でもアナリストでもない僕の勝手な予想ではマレーシアを含む東南アジア市場は今後10年後ぐらいで日本から“出稼ぎ”にやってくる人がどんどん増えるようになるぐらい経済成長すると思っています。そうした中で今日のお話しにも出てきたように、「日本人が上だ」みたいな目線でやっていると絶対に痛い目を見ます。むしろ「ここで学ばせてもらう」とか「新しい化学反応を作らせてもらいたい」といったスタンスで向き合う事が重要ですよね。

マレーシアに来て感じるのは、先代の日本人が作った素晴らしいJAPANブランドのおかげで日本人であるだけで多くのメリットを享受しているなと感じます。ハズさんと話して次の世代に誇りに思ってもらえるようなインパクトを残すように精進したいと改めて感じました。


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