震災を契機に大きく変わる商品開発
――アイリスオーヤマといえば「そんなものまで」というような充実した商品ラインナップが大きな特徴だと思います。今回のテーマである防災用品も例外ではなく、食品や避難リュックセット、家具転倒防止棒、さらに発電機まで揃っています。そもそもどういった経緯で防災用品を扱うことに?
手代木: 1995年の6月に「家具転倒防止伸縮棒」を発売したのが始まりです。
家具転倒防止伸縮棒
――かなり前から取り扱いをはじめているんですね。
手代木:95年といえば、1月に阪神・淡路大震災があったので、当時の経営社や社員たちがこの震災を受けてこれからは防災用品が必要になるだろうと動きだしたんでしょうね。アイリスオーヤマの前身となる会社が東大阪で創業したことも関係しているかもしれません。
――ここ数年、さらに注目が高まっている避難用リュックセットも充実しています。これはいつから?
手代木:2005年前後、ちょうど私が入社した頃だったと思います。それからマイナーチェンジはありつつも、大きな変化はなかったのですが、2011年に東日本大震災が起きることで、商品を一から見直すことになりました。
――どういった形で見直していったのでしょう?
手代木:今私が所属しているハード事業部は宮城に本部があるので、部署の全員が震災を経験することになったんです。その中で、家で過ごした人、避難所で過ごした人、会社で過ごした人、みんなそれぞれの形で実際に「被災」という経験をすることで、本当に必要な物がはっきりしていったんです。
例えば、以前は防災セットの中にロープを入れてたんですよ。これまではどこの防災セットにも当たり前に入っていた物ですが、実際に避難するとなるとなんの役にも立たないことがわかったんです。
商品見直し前の避難リュックセットJTR-10(過去商品)
――確かに、ロープって避難用のアイテムとしてのイメージはありますが、何に使うのかと聞かれると……。
手代木:震災を経験するまで、本当に必要な物について誰もわかっていなかったんですよね。ですので、例えばこの時から食品を入れるようになったり、女性が使用する生理用品なんかを入れた「避難リュックセット女性用」も作るようになりました。あとはオフィスで過ごす人が多かったこともあり、「避難ボックスセット帰宅困難時宿泊用」というセットも作りました。
現在の防災セット 食品付き2人用 70点 BSS2-70
――実際に避難した時に本当に必要だったものがわかってきたんですね。「帰宅困難者用セット」はどういったものが?
手代木:例えば、ウェットティッシュってこれまでセットに入っていないのが一般的だったんですよ。でも実際に被災された方からは「お風呂に入れないので体を拭きたい」という声がとても多くて、非常に重宝するものであることがわかりました。その中でもアルコール性のものは肌が荒れてしまう人が出てくるということで、ノンアルコール性のものを選ぶ、といったこともありました。今となれば当たり前のように感じるものばかりですが、当初は他社を含めて誰もわかっていなかったんです。
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