あらゆる方向へ問を投げかけ続けるソニーと、独立を貫く任天堂
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このようにゲーマーを巻き込んだ論争を呼び起こした『The Last of Us PartⅡ』と『Ghost of Tsushima』の2本だが、興味深いことにこれらをプレイできるハードはPS4だけだった。つまり、2本ともソニーによるパブリッシングであり、賞レースもどちらに転んでもソニーのものだったのだ。
その上、PS4は7年前(2013年)発売のハード。今年PS5が発売されたことを考えても、既に世代交代時期にあるPS4で最後まで世界に売れるソフトをリリースし続けたソニーのコンテンツ戦略は、圧倒的なセンスと言わざるを得ない。そのPS4も2020年10月時点では世界で1億1400万台販売されており、ローンチ当初はスマホに押され、スペック重視のゲームハードはもう売れないとアナリストに分析されていたのが冗談のようだ。
最後の最後まで爪痕を残し、次世代のゲームをハードとソフト両面から展開したソニーの存在感は凄まじかったが、一方で任天堂とて黙ってはいない。『あつまれ どうぶつの森』は世界中で2600万本も売れ、『リングフィットアドベンチャー』も600万本近く売れた。そしてハードであるNintendo Switchも、2020年11月には6830万台を売る快挙を成し遂げた。
ソニーがポリティカルな姿勢を揺さぶるようなインパクトを与えた(あるいは、与えられた)のに対して、任天堂は徹底してノンポリを貫いた。
『あつまれ どうぶつの森』はあらゆるプレイスタイルを正当化する一方、以前FINDERSで紹介したように、性を問わずあらゆる服を着れられる寛大な姿勢を見せた。『リングフィットアドベンチャー』もコロナ禍で奪われた運動の機会を取り戻してくれたという声も大きく、とにかく遊んでくれるプレイヤー全員を楽しませようという良い意味でエンタメとしての姿勢を崩さなかった。
一方、『あつまれ どうぶつの森』はその人気から大統領選を控えたジョー・バイデンが、ゲーム内で政治キャンペーンを展開。日本でも自民党総裁選中の石破茂が同じくキャンペーンを行っていたところ、ユーザーの声により断念し、任天堂も自ら「政治的な主張を含む表現」を禁止する規約を改めて掲げるなど、ノンポリの意思表示を改めて徹底した。政治を含めた社会の言論に対し、あくまで任天堂は自由であり独立すると強調した形だ。
刀を振るって無双する日本人か、暴力の連鎖に飲み込まれるアメリカ人か、それとも純粋なゲームの世界を追求する任天堂人か。三者三様、あらゆるビデオゲームの価値と、それらに対する声が浮かび上がった2020年の先に、一体どのようなビデオゲームが新しい世界観を築くのか、楽しみでならない。
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