ツイッターの空気感を変えた2人の女性と1人の首相
そんないわば「ギークの世界」的状況を変えたのが、勝間和代氏が2009年7月に歌手の広瀬香美にツイッターのやり方を教え、一気に一般への認知度が高まった時のことだ。ネットにそれほど詳しくない層もこの2人のやり取りを見てツイッターに興味を覚え、これが多数のネットニュースで取り上げられた。そして、9月には浅草キッドの水道橋博士も開始し、芸能人のアーリーアダプターも出始める。
決定打となったのが民主党政権の誕生で、元電通の「さとなお」こと佐藤尚之氏が鳩山由紀夫首相(当時)にツイッターを勧め、首相が本当に始めたことだ。佐藤氏は9月29日に「なぜか鳩山首相とご飯中。居酒屋の小さな座敷。たまに実況できたらします。ついったーも勧めてみる。」とツイート。
これの「いいね」数は152件だが、当時は多かったが今の状況からすると「首相と食事」「ツイッター開始も進言する」というド級のネタにしては少ないといえよう。それだけユーザーは爆発開始前の話なのだ。
こうした状況下、鳩山氏の「ニセモノ」が12月に登場する。「国会でバレずに屁をする方法」などふざけたツイートをし続けた。片山さつき参議院議員などは「片山さつきです!ぜひフォローしてください!為政者は色々な意見に耳を傾けるのがご器量!」と釣られる始末。そんなことから鳩山事務所としても捨ておけず、本当にIDを同月開設する。
かくしてニセモノはツイッターから追放されたが、その後もニセモノはメディアから取材を受けるなどして、2009年末のネット界で発生した珍事となったのだ。
鳩山氏が初ツイートをしたのは2010年1月だが、すぐにガチャピンを抜き去り、日本No.1のフォロワー数を獲得する。同氏が首相を辞任した直後の2010年6月のINTERNET Watchの『鳩山首相、Twitterは続投「これからは人間としてつぶやきたい」』という記事には以下の記述がある。
そして6月23日、「ねとらぼ」には「ガチャピン、鳩山前首相を抜き返す Twitterフォロワー数日本一に返り咲き」という記事が登場。2009年1月にツイッターを開始したガチャピンを鳩山氏が2010年5月に抜き、鳩山氏が辞任した後にガチャピンが抜き返したという内容だ。
ちなみに2009年10月のITmedia NEWSの記事では『ガチャピンの3倍・57万人 Twitterフォロワー数日本一「moooris」さんとは』という記事もあり、名古屋の大学生・mooris氏が取材されなぜフォロワーが多かったのかを答えている。
何やら新しいネットの息吹を感じるワクワクとした時代だったが、先端的な人々の続々参入、鳩山氏の開始、芸能人の開始、謎の大学生がNo.1といった話題性からメディアは一気にツイッターに飛びついた。関連書籍は多数登場し、週刊ダイヤモンドは2010年1月18日に発売された『2010年ツイッターの旅 140字、1億人の「つぶやき」革命』で大々的にツイッターを特集。表紙は事前に募集していたユーザーのアイコンを並べる斬新なデザインだった。
この号の特集内容が当時の空気感を表しているだろう。以下、アマゾンより抜粋。
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【Chapter】 1 ツイッター旋風上陸!
特別対談 ツイッターは流行では終わらない
津田大介×堀江貴文
twitter 入門編 広瀬香美直伝の「使い方」
Column 「つながる力倶楽部」の輪
twitter 中級編 三日坊主にならない「楽しみ方」
Column 携帯電話とiPhoneを使って
Column 鳩山首相の「ニセ者」も登場!
Column 友人のいない私でも「2000人とつながった!」
twitter 上級編 達人・勝間和代の「活かし方」
【Chapter 2】 「やらずに書けるか!」
Column 「ツイッター議員」が続々登場!
Column ツイッターが引き起こすITサービスの地殻変動
Interview 藤田 晋●サイバーエージェント社長
【Chapter 3】 ツイッターで企業も変わる
Column 書店担当者がつぶやく(得)ツイッター本
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