南房総市在住の映像ディレクターで、YouTubeチャンネル「房TUBE」を運営する岡氏(おかじ)智美さんが館山市内で撮影した、街の様子
文:神保勇揮(FINDERS編集部)
気象庁をして「関東上陸では最強クラス」と言わしめた台風15号。千葉県南部を中心に甚大な被害が生じており、今も停電や断水などで多くの人が苦しんでいる。現在何が起こっているのか、何か自分にできることはないかと思いネットやSNSで検索をかけても、断片的な情報しか見当たらず全体像が掴めないため、不安でもどかしい気持ちになる。
そんな中でFacebookを覗いていると、以前FINDERSで取材をさせていただいた永森昌志さんが被害に遭ったという投稿があった。永森さんは新宿でシェアオフィス「HAPON」を運営する傍ら、生活の拠点を南房総市に移し、築300年の古民家をリノベーションしたシェアスペース「ヤマナハウス」の運営にも携わっており、6月には編集部一同でヤマナハウスにお邪魔したばかりだった。
南房総で暮らし、新宿で働く。シェアオフィス「HAPON」・永森昌志氏が語るデュアルライフのクリエイティビティ
https://finders.me/articles.php?id=117
リフレッシュ効果で意外と仕事サクサク!話題の「ワーケーション」やってみました【FINDERS編集部×千葉・南房総】
https://finders.me/articles.php?id=1213
この記事もまた、無数にある「断片的な情報」のひとつに過ぎないだろうし、被害に遭った方がいまこの瞬間に役立つものではないだろうが、自分と同じように情報不足でもどかしく思っている人、現地に救援物資を届けたり、ボランティアに向かおうとしている人、そして「今後の備え」の参考になればと思い、永森さんの体験談をお届けする。
台風当日から3日間、何をしていたか
台風が上陸した9月8日深夜、南房総市の山間部にある平群町(へぐりまち)の自宅にいた永森さんはこの時点で停電に遭遇。「ずっと地震が続いているような揺れで、停電した真っ暗な中で近隣の人と『朝まで様子を見よう』とLINEで連絡を取り合っていました。半日ぐらいは基地局が生きていたようで、スマホに電波が入ったんです。眠ってしまうと危ない目に遭うんじゃないかと不安で、朝までずっと起きていました」と語る。
翌日9日の朝、自宅から車を出そうとしたところ倒木が道を塞いでいたため、近所の人と協力してチェーンソーで分解しながら除去した。
寝不足かつ残暑が厳しい中での作業だったこともあり、熱中症気味になってしまった永森さんはそのまま自宅で休息を取った。
翌10日は車を出して館山や岩井などに向かったところ、SNSでも多数写真が流れている建物被害を目撃。
岡氏智美さんのFacebook投稿より
すでに自宅周辺ではスマホの電波が届かなくなっていたため、電波が入る場所を探しながら仲間と連絡を取り、ヤマナハウスの様子を見に行った。
「ヤマナハウスは築300年とはいえしっかりとした作りだったので、建物自体は大丈夫でした。ただ最近建てた倉庫の扉が飛んだり、玄関付近の床板が飛んだり、ホコリや雑草、ゴミなどで中はグチャグチャになってしまいました。ただ近くに仲間が住んでいることもあり、最低限の復旧はできると思います」(永森さん)
そして本日11日、未だ停電とスマホの電波が届かない状態が続いており、永森さんは電波が入る場所を求めて車で木更津駅付近に移動し、スマホなどの充電と各所への連絡を行い、17時ごろにSkypeでインタビューに応じていただいた。
避難所や給水所などの情報は伝わっているか
千葉県南部に展開するチェーンスーパー「おどや」でも食料品がほとんど完売状態となっていた(永森さん撮影)
台風通過後、自治体やNHKのHP、東京電力のTwitterアカウントなどで避難所や給水所、充電スポットの場所やスーパーの移動販売車の営業情報、停電の復旧動向などが逐次掲載されているが、そもそもスマホの充電が切れてしまったり、電波が入らなければ一切チェックできない。永森さんもまた、情報不足に悩んでいたようだ。
「市の放送は流れてはいるものの、昔ながらのスピーカーなので非常に聞き取りづらいです。テレビが映る場所に行ってみても皆さん承知の通りあまり報道がなく、ネットがつながらない人は電池式のラジオを持っていないと何も情報が取れていないのではないかと心配です。近くに住む70代のお爺さんも『ここまで酷い被害は生まれて初めてだ』と話していました。
また道路が封鎖されていたこともあってか、10日時点では報道陣もあまり見かけませんでした。(上でFacebookの投稿を埋め込んだ)岡氏さんのような映像ディレクターが現地の模様を撮影し、NHKなどに送っているようです」
なお、ライフラインに関しては永森さんの自宅は断水はしなかったものの、地元スーパーではカップ麺などインスタント食品は完売、ガソリンスタンドは長蛇の列となっている。
南房総市に隣接する、安房郡鋸南町(きょなんまち)に住む地域おこし協力隊員の清水多佳子さんのFacebook投稿より
「僕の自宅は断水しておらず、ガスはプロパンガスだったのでお湯はなんとかなったんですが、停電が続いているので蓄電器や発電機を用意しておけば良かったと後悔しています」(永森さん)
いま求められる支援、そして備えておくべきことは何か
あくまで「9月11日夕方時点で永森さんが感じていること」ではあるが、いま求められる支援は何かを訊いてみた。
永森さんのFacebook投稿より
「停電はだんだん復旧しており、飲み水や食料もなんとかなってきているのですが、この周辺は瓦屋根の家が多く、吹き飛んでしまった際の応急処置に使うブルーシート・ロープ・土嚢袋と、作業ができる職人さんが最も不足していると感じます。プロでなくとも多少のDIYスキルがあれば需要はかなりあると思いますし、たとえスキルがなくともモノを運んだり片付けたりするたくさんの人手が必要になると思います。ボランティアを希望してくださる方はぜひお願いしたいです」
また「今から振り返って、台風被害の備えとして何を準備しておけばいいか」という質問には
・屋外にある吹き飛んでしまいそうなものを片付ける
・懐中電灯の用意(スマホで代用すると電池の減りが早まる)
・保冷剤とペットボトルなどに凍らせた水の用意(停電しても冷蔵庫機能を延命できる)
を挙げてくれた。
なお、支援物資については「個人で郵送・宅配便を頼んでも、最も需要のある被災直後に届くことはありません。僕も申し出をいただくのですが、申し訳ないと思いながらお断りしています。それでも届けたいと思ってくださる方は、直接現地まで持っていくしかないと思います」とのこと。また、現地でのニーズは場所・時間によっても大きく変わることにも注意が必要そうだ。
加えて「何か支援をしたいけれど、何をすればいいかわからない…」という人は、今すぐできて確実に効果のある「寄付」という手段がある。
ふるさと納税の仕組みを活用した「ふるさとチョイス災害支援」というウェブサイトがあり、すでに南房総市への寄付も可能だ。クレジットカードも使える。
恥ずかしながら今まで筆者はふるさと納税を活用したことがなかったが、今回は試してみたいと思う。また今回の台風被害に遭った皆さんのライフラインが一刻も早く復旧することを祈っています。