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趣味や遊びで成長し、「部活」が新規事業になって働く会社【連載】遊ぶように働く〜管理職のいない組織の作り方(18)
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  • 2019.02.06
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趣味や遊びで成長し、「部活」が新規事業になって働く会社【連載】遊ぶように働く〜管理職のいない組織の作り方(18)

「納品のない受託開発」を提供するソニックガーデンは、全社員リモートワークで本社オフィスがない。さらには、全社員がセルフマネジメントで管理職もいない。管理をなくして遊ぶように働きながらも、ビジネスは順調に成長することができている。その自由と成果の両立を実現する経営に隠された謎を紐解く。

倉貫義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役

大手SIerにてプログラマやマネージャとして経験を積んだのち、2011年に自ら立ち上げた社内ベンチャーのMBOを行い、株式会社ソニックガーデンを設立。ソフトウェア受託開発で、月額定額&成果契約の顧問サービス提供する新しいビジネスモデル「納品のない受託開発」を展開。会社経営においても、全社員リモートワーク、本社オフィスの撤廃、管理のない会社経営など様々な先進的な取り組みを実践。著書に『「納品」をなくせばうまくいく』『リモートチームでうまくいく』など。「心はプログラマ、仕事は経営者」がモットー。ブログ http://kuranuki.sonicgarden.jp/

新著『管理ゼロで成果はあがる ~「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう』 

新規事業より「部活」だから遊ぶように働く

前回は、組織の成長に伴い発生するセクショナリズムと、それを未然に防ぐために全員が兼務するスタイルについて書きました。一つの部署に専属しないことで、セルフマネジメントが身につくだけでなく、さまざまな利点があることを紹介しました。

全員が兼務にしている最大のメリットは、セルフマネジメントで各自が時間をコントロールできるということです。それに加えて、私たちの会社では第6回「お金を稼ぐよりも時間を稼ぐために働く会社」で紹介したように、空いた時間に好きな仕事ができます。

その仕事の時間中にできる自分の好きな仕事や活動のことを、私たちソニックガーデンでは「部活」と呼んでいます。部活といっても、フットサルやジョギングをするわけではありません。たとえば、興味のある技術の調査をしたり、オープンソースに貢献したり、社内で使うツールをつくったり、新規事業になるようなサービスを開発したり、さまざまです。

受託開発で稼ぐことに使う時間以外に、好きなことをする時間を以前は「新規事業」と呼んでいました。受託開発と新規事業を両輪で回していく戦略だったからです。

しかし「新規事業」と言った瞬間に、面白さよりも面倒臭さが勝ってしまうようになりました。エンジニアにとって新しい技術に触れることは好きで楽しいことでしたが、営業したりマーケティングしたりは空いた時間でやりたいと思えるものではなかったのです。

それに、新規事業と言ってしまうと経営者としては投資に対する効果を考えてしまいます。きちんと取り組んで進捗しているか気になるし、芽の出ない新規事業は閉じないといけません。せっかく好きなことをしようというのに、それではうまくいきませんでした。

そこで、いっそのこと「部活」と呼んで放置することにしたのです。部活であれば、使うお金は部費ですし活動を認めることは福利厚生みたいなもので、経営側も取り組む側も気楽になったのです。そうすると不思議なことに新しいサービスや事業が誕生したのです。

ガン患者が自分にあった病院を探すことのできるサービス「イシュラン」や、学校の先生の忙しさを軽減・サポートする「所見.com」、打刻レスというユニークな勤怠管理サービス「ラクロー」など、さまざまなサービスが部活から生まれてきました。

トップダウンに計画しても生まれなかった新規事業が、好きなことで遊ぶように働く「部活」を続けたことで生まれてきたのです。

「ハッカソン」で1日かけて遊ぶように働く

自由に使える時間の使い方は部活の他にもあります。たとえば、「ハッカソン」という社内イベントを定期的に行なっています。ハッカソンとは、ハックとマラソンを掛け合わした言葉で、集中的にずっとプログラミングするイベントのことです。

私たちのハッカソンでは、普段の業務でのプログラミングから離れて、好きな技術や挑戦したいことに取り組みます。

それも何日も前から社内イベントとして準備をおこない、当日は丸一日かけて実施します。当然ですが、平日の昼間です。そのため、その日は通常業務は進みません。つまり、ハッカソンに参加する人はセルフマネジメントした上で時間をつくって参加するのです。

私たちにとって、ハッカソンは本気で取り組む遊びです。そのままビジネスやプロダクトになることはほとんどありませんが、それでよくて過程そのものを楽しむものなのです。エンジニアにとっては、新しい技術に挑戦する機会にもなります。

ハッカソンでは、普段の業務では絡むことのない仲間同士が一緒になって取り組んだりすることで、新しい人間関係が築けたり、より一層の連帯感を生むことができます。当然のことながら、ただ話をして過ごすよりも互いの力量もわかるので仕事もしやすくなります。

そのため、ハッカソンには採用の選考中の方にも参加してもらうことがあります。それで交流を図ったり、実力を計ったりするのです。

ときには合宿形式で行うときもあります。地方に集まって泊まり込みで24時間のハッカソンをするのです。ハッカソンをがんばった後の翌日は近くを観光して帰るのがパターンです。ワークとバケーションを合わせた言葉で「ワーケーション」がありますが、それをもじって私たちは「ハッケーション」と呼んでいます。

遊びでやっているハッカソンやハッケーションから新しいプロダクトが誕生することもあります。それは思わぬ産物ではあるけれど、本来ゼロイチが生まれるのはこういう遊びからなのかもしれません。経営の言葉で言えば、イノベーション創出の機会になります。

「アクティビティ」にすれば遊ぶように働く

上手なハッカソン運営のコツは、ある程度のルールとゴールを決めること。簡単すぎると面白くないし、難しすぎても楽しめない。対戦形式にするなら、圧倒的な実力差になっても面白くはない。拮抗するから楽しいのです。楽しくするには工夫が要ります。

ハッカソンも業務時間に行うので業務の一環と言えます。業務時間であっても、どうすれば楽しくなるか考えるというのはハッカソンだけに限らず、どんな仕事にだって応用できます。それが「仕事を遊ぶ」という発想です。

フットサルをしたり、コンピュータゲームをしたり、絵を描いたり、何か遊びをしているときに人は夢中になって、あっという間に時間が過ぎていきます。集中しよう!なんて思っていなくても集中してしまうのです。そんな夢中になるように仕事でもできたら最高だとは思いませんか。

そもそも仕事と遊びの境界は曖昧なのです。たとえば、旅行先でよくあるガラス工芸をつくる体験(アクティビティ)がありますが、あれは旅行者は楽しんでやっていますが、昔はそれを仕事にしている人がいたはずです。逆に、大昔の人が現代のスポーツジムで運動している人を見たら「なんの仕事をしているのか?」なんて思うかもしれません。

だったら、仕事を義務と捉えるよりも、権利だと思った方が楽しめるはずです。スポーツも趣味でやっている人もいればプロでやっている人もいますが、やはり夢中になって楽しんでやっている方が強い。それは仕事だって同じです。仕方なくやってる人に比べて、楽しんでやってる人の方が生産性も高くなるでしょう。

そもそも新しい企画を立てるような仕事は、それ自体が楽しいものだし、仲間とブレーンストーミングなんて楽しさしかない。ひとりでする創作活動は苦しいけれど、それこそクリエイターに与えられた喜びでもあるのです。

どうしても嫌な仕事だって、時間を区切ってタイムアタックにしてみるとか、誰かを巻き込んで二人で一緒にやる共同作業にしてしまえば楽しくなる。仕事を遊べるかどうかは、工夫次第ではないでしょうか。

仕事なのに「ゲーム感覚」で遊ぶように働く

仕事を遊ぶというと不謹慎に思う人もいるかもしれない。仕事とはつらく苦しいからお金がもらえるんだという価値観の人もいるかもしれない。そういう考えもわからなくはないし、そういう時代もあったのでしょう。

しかし本来の仕事とは、価値を生み出すことです。対価を払ってもらうだけの価値を生み出すことができれば、それは仕事になります。その価値を作り出すプロセスを楽しもうが苦しもうが、対価を支払う側にとっては関係ありません。むしろ楽しく働いている人たちの方が、顧客にとっても嬉しいですよね。

私たちの会社のプログラマたちは、自分たちの職業に誇りを持って、腕を磨いて技術力を高めていきたいという価値観で働いています。彼らを観察していて気付くのは、どんな仕事も彼らにとっては自分の腕を磨くための糧の一つだと思っている節があるということです。

だから、なるべく未知の技術に取り組みたいし、より良い作り方を身に付けられるような仕事を好みます。それはまるでドラゴンクエストのようなゲームで遊ぶようなもので、仕事とは経験値を得るための冒険みたいなものに思えてきます。

私たちの会社は全社員がリモートワークで在宅勤務をしているにもかかわらず、毎日顔をあわせてザッソウ(雑談・相談)しながら一緒に仕事をしています。それができるのは、バーチャルオフィスと呼ばれる一緒に働いている感覚になれる仮想空間があるからです。

毎朝バーチャルオフィスにログイン(出社)して仕事に出かけて、仕事が終わるとログアウト(退社)します。これってオンラインゲームをやっている方だったらわかる感覚で、仲間とゲームをするのにサーバーに入って集合するみたいなものなのです。

こうなるともはや仕事も遊びのようで、仕事の環境すら遊びのようになると、もう毎日ゲームして過ごしているようなものだと錯覚してしまいます。それで成果が出るのだからなにも文句はありません。

外から見て遊んでいるのか働いているのかわからない。それこそが「遊ぶように働く」ということなのです。


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