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“デジタル後進国”の未来を拓くAIベンチャーの提言|平野未来(シナモン代表取締役社長CEO )【連載】スタートアップ&ベンチャー 異能なる星々(2)
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  • 2021.06.01
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“デジタル後進国”の未来を拓くAIベンチャーの提言|平野未来(シナモン代表取締役社長CEO )【連載】スタートアップ&ベンチャー 異能なる星々(2)

VUCAと呼ばれる不透明な時代のただ中で、新たな道を切り拓くため立ち上がった有志たち。彼ら彼女らは何を見据え、前例のないゲームチェンジへ挑むのか。独自の発想で時代の先端へと踊り出たクリエイターに光を当てた前企画「テック&カルチャー 異能なる星々」(全17回)に続き、新進気鋭のスタートアップ&ベンチャーにファインダーを定め、そのビジョンをひも解く連載インタビュー。

今後の社会のカギを握るAI(人工知能)。各社が人材獲得にしのぎを削る中、国内外に100名以上ものAIリサーチャーを抱え、大きな存在感を発揮しているAIベンチャーがある。

独自開発のビジネス向けAIソリューションを展開するシナモン(2016年設立)。CEOの平野未来は「日本人の働き方を変えたい」と語る一方、内閣官房IT戦略室で本部員を務めるなど、AIによる社会変革に意欲を見せる。コロナ禍であぶり出された“デジタル後進国”たる日本の状況を前に、オンライン取材にてそのビジョンを聞いた。

聞き手・文:深沢慶太 

平野未来(ひらの・みく)

シナモン代表取締役社長CEO。1984年、東京都生まれ。2006年、東京大学大学院在学中にネイキッドテクノロジーを起業し、iOS/Android/フィーチャーフォン向けアプリ用のミドルウェアを開発。12年にシナモンを設立、事業開発拠点をシンガポールに置き、スマートフォンアプリ事業を展開。16年に帰国し、AI事業へ方針転換。独自のAIプロダクトとコンサルティング事業を展開する。20年より内閣官房IT戦略室本部員および内閣府税制調査会特別委員、21年より内閣府経済財政諮問会議専門委員に就任。その他、IPA未踏ソフトウェア創造事業へ2度採択されるなど、国内外にて受賞多数。プライベートでは2児の母。

日本有数のAIベンチャー、立ち上げまでの道のり

ーー 株式会社シナモンは「シナモンAI」という呼称で、企業のAI活用支援事業を展開されています。具体的には、どんな内容になりますか。

平野:弊社の事業は大きく分けて、AIプロダクト事業とAIコンサルティング事業の二つになります。元々は独自のAIプロダクト開発に始まり、次にAIの活用効果を企業のコア業務に組み込んでいくことで、ワークスタイル変革やDX化など、より大きなインパクトにつなげていきたいと考えています。

ーー これまでに複数の会社を立ち上げていますが、最初の起業は学生時代に遡りますね。

平野:はい、2006年、東京大学大学院に在学中のことでした。大学では機械工学と情報工学を専攻する傍ら、SNS向けのマーケティングエンジンを制作するなどしていました。その頃にウェブ2.0の波が来てインターネット上で扱う情報量が圧倒的に増え始めたのですが、このままでは膨大な情報の中で欲しい情報にアクセスしにくくなると考え、複雑ネットワークを用いてレコメンデーションエンジンを作成する研究に取り組みました。

その中で最初の会社を立ち上げたのですが、当時はフィーチャーフォン(ガラパゴス携帯、ガラケー)の全盛期。物理ボタンによるテンキー入力で、ウェブで広まりつつあったインタラクティブな仕組みに対応するにあたってさまざまな制約がある中、フィーチャーフォンでもPCと同様のユーザビリティを実現するようなプラットフォーム開発を目指して会社を立ち上げました。

ーー その会社を11年にミクシィへ売却後、新たなスタートアップとしてシナモンを設立されています。なぜ、AIに焦点を定めようと考えたのでしょう?

平野:実は、12年にシナモンを設立した当初はスマートフォン向けのカメラアプリを手がけていました。シンガポールを事業統括拠点としてベトナムにも開発拠点を開設し、現地で優秀な人材を数多く抱えていたのですが、事業的に伸び悩み、方向転換を余儀なくされました。その中で、自分たちのリソースを活用してできることは何かと考え、AI事業に方針転換することにしたのです。16年のことですね。

ちょうどその翌年に第一子を出産したのですが、日本へ帰国して育児をしながら事業に取り組む中で、今の社会で当たり前になっている働き方に大きな疑念を抱くようになりました。一言でいえば、大枠として決められた仕組みがあり、それに人間の側が合わせているために、さまざまな不都合が起きている。「この子が大人になって働く頃には、誰もが自分の能力を活かして自由に働けるような状況になっていてほしい」という想いが強くなっていきました。私の周りからも、手入力で書類制作を延々やっているなど、同じような声を耳にする機会が多々ありました。そうした面倒な仕事をITの力で解決できるのであれば、その分の時間を家族と過ごしたり、趣味に没頭したりすることで、よりハッピーな生き方ができるようになる。そしてAIは、そのためにこそ役立つ技術だと確信したのです。

次ページ:100名以上のAI人材を抱え、他にない提供価値を確立

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