EVENT | 2021/05/12

中学生で社会起業した動機は、シリア難民を助けられなかった経験、社会課題の当事者への思いと違和感から【連載】Z世代の挑戦者たち(2)

連載「Z世代の挑戦者たち」では、社会にインパクトを与える活動をする21世紀生まれの若者たちの声を紹介している。
第2回...

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連載「Z世代の挑戦者たち」では、社会にインパクトを与える活動をする21世紀生まれの若者たちの声を紹介している。

第2回は、2004年生まれの山口由人(やまぐち ゆうじん)さん。中学生のときに一般社団法人Sustainable Gameを立ち上げ、国連が掲げる2030年までの目標SDGs(Sustainable Development Goals)を企業や若者が具体的なアクションにつなげる支援を続ける。

山口さんが起業に至ったきっかけやドキュメンタリー映画監督の側面、そして今後のビジョンについて話を伺った。

山口由人 (やまぐち ゆうじん)

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2004年生まれ。高校2年生。一般社団法人Sustainable Game代表理事。ESGをテーマに中高生と企業の共創環境を構築するサービスを展開している。また自身のアート作品を通して収容されている難民を支援し、日本の入国管理局収容所の人権問題の映画監督として活動。2020年にAshoka Youth Ventureに認定。

文・聞き手:米田智彦 構成:平田提

シリア難民を助けられなかった経験が社会的起業の動機に

―― 山口さんは中学生から起業したり、とても活動的ですがその源泉はどこにあるんでしょうか?

山口:私は生後4カ月から約12年間、ドイツで暮らしました。そのときの経験がSustainable Gameを立ち上げたきっかけの1つです。小学5年生のとき、シリア空爆のニュースを観ました。ドイツはその当時難民受け入れを積極的にやっていて、私の家の近くにも難民キャンプが作られました。歓迎する雰囲気があった一方、反対勢力もいて治安がどんどん悪くなっていきました。

銃の乱射事件が学校の近くで起きたり、バスに乗っていると急に警察がバスを止めて、大きな引っ越し荷物を持った難民の乗客を降ろしたり……。ドイツの中では僕ら日本人もマイノリティでした。公園で遊んでいたら「ブラックニンジャ」と呼ばれて土を投げられたこともあります。シリアの難民の方々も自分に近しい状況にあると感じていました。

でも道を歩いていて難民らしき方に「パンをくれ」って言われたとき、怖くて逃げちゃったんです。社会問題に対して何かをしたいなって思うけど、実際にはできない。そんな葛藤を抱えたまま、ドイツから日本に帰国しました。

―― そこからSustainable Gameの活動にどうつながっていったんでしょうか?

山口:中学1年生の夏休みに、学校主催でSDGsについてのワークショップがありました。ドイツにいた当時から抱いていたSDGsのイメージは「2030年までの世界最大の社会実験」。でもワークショップでは030年までの目標を教えるだけで、どのようにその社会実験に私たちが参加するべきか、考える機会があまりなかった。そこに違和感がありました。

そのあと東京都主催の「東京公共交通オープンデータチャレンジ」というコンテストにアプリのプロトタイプを作って提出したら、審査員特別賞をいただけたんです。コンテストの会場にはベンチャー企業の経営者や「これから技術で世界を変えてやるぞ」と熱い志を持った方がたくさんおられて、「中学生の自分でも社会実験に参加できるんだ」という自信につながりました。

それから知り合いの高校生たちとつくった任意団体で始めたのが、ゲーミフィケーションを導入した教育プログラムです。これがSustainable Gameの元になっています。

―― それはどんなプログラムなんですか?

山口:SDGsの17個の目標を集めた丸いルーレットをつくり、回したテーマでフィールドワークをするんです。例えばルーレットで「ジェンダー」と出たら、「ジェンダー」の視点で街を歩いてみる。そうすると、コスメのコーナーには女性の店員しかいない違和感に気付いたりします。そうやって課題を発見するプログラムを作るのはすごく楽しかったです。

それからSDGsの教育プログラムをパッケージ化し、企業のCSR部門の方にオフィスをお借りしてプログラムを提供し始めました。マイノリティ化している社会問題に対して、自分の知識や過去の経験を活かしてどう向き合っていくのか、状況を理解していくかが大事だと思います。

例えば渋谷の街の中にシリア難民の方が歩いていても、そのことにそもそも気付くことができないかもしれない。難民の方でもスマホを使いますし、服装や見た目だけでは分からない。一方で彼らはすごくつらい経験を持っていて、現在も問題を抱えている。どう一人一人がそれに気づき、参加するのか、まず体験してもらいたいと思っています。

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