取材・文:FINDERS編集部
さまざまな現場で活用が期待される「ローカル5G」
鳥取県は2月20日、「鳥取県ローカル5G活用実証試験」の様子を、ミニクラッシックコンサートとともにオンラインにて配信した。
本実証実験は、山陰地方で唯一のローカル5G免許を取得した中海テレビ放送による4K(高精細映像)伝送実験や、会場内の人流測定、テレプレゼンスロボットによる遠隔参加やVR中継など、さまざまな機器を同時に使って遅延がなくスムーズに通信できることを実証するものだ。
ローカル5Gとは、各通信事業者が提供する5G回線技術の免許を民間企業や自治体が免許を取得することで、建物内や施設内などの特定エリアにおいてネットワークを自由に設計・構築・利用できる通信システムだ。一般的な無線ランや 4G 通信よりも高速、高信頼、多数同時接続が特徴。また通信範囲をエリアで区切ることが可能なため、セキュリティの強さも挙げられる。工場や建設現場などにおけるIoT化や農業、防災といったさまざまな分野での活用が期待されている。
「境夢みなとターミナル」に設置されているローカル5G基地局
ローカル5G 4K(高精細映像)伝送実験の様子
ローカル5G 通信下での複数センサーによる人流検知実験の様子
「過去と未来の融合」を音楽で表現
「ミニクラッシックコンサート」では、世界を舞台に活躍するピアニストの大井駿氏、ヴァイオリニストの山根一仁氏が登場。選曲のテーマを「過去と未来の融合」とし、1600年頃から存在する"古い楽器"であるバイオリンを「ハードウェア」に、クラシックの中では新しい1970年代に作曲された楽曲などを「ソフトウェア」になぞらえ、テーマを表現する試みが披露された。
ピアニスト 大井駿氏(写真左)とヴァイオリニスト 山根一仁氏(写真右)
さらに、コンサート中にはデモンストレーションとして、恐らくクラッシックコンサートでは初となるMRデバイスを装着して演奏する試みも行われた。演奏を終えた大井氏は「こうしたバーチャル空間だとお客さんの反応がダイレクト伝わってくるので面白いですね。現代のクラッシックコンサートは皆さん静かに聴いていただくイメージですが、実は19世紀ぐらいまでは下手な演奏家には野次が、上手な演奏家は拍手喝采されるなどお客さんの反応はもっとダイレクトだったんです」と、”最新テクノロジー”が期せずして”過去”と自分たちを結びつけたことについて語った。
MRデバイスを着用して仮想空間で演奏するヴァイオリニストの山根一仁氏
進行役を務めた一般社団法人WebDINO Japan代表理事の瀧田佐登子氏も、近い将来デバイスの小型化・簡易化が起こることで、こういった取り組みがますます拡がっていくことを語った。
コロナ禍において数多く行われたオンラインコンサートだったが、多くは観客がアーティストを一方的に観るものだった。今回のような試みによって、生のコンサートが持つ「インタラクティブ性」と、デジタルならではのアイデアが組み合わさり、過去、そして現在にも存在しない、未来の地平を見せてくれることを期待したい。