EVENT | 2022/01/20

「業績低迷で非上場化」から7年越しの大復活。ローランド三木社長が語る、未来の楽器メーカー論

世界的な知名度を誇り、ミュージシャンたちから愛され続ける日本発の楽器メーカー・ローランド(Roland)。ライブハウスや...

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楽器×IoTでまだまだ残される進化の余地

―― 他の分野で、今後取り組んでいきたい事業や領域があれば教えてください。

三木:当社の2020年度〜2022年度の中期経営計画では、以下の4つのキーワードを掲げています。

生み出す:イノベーティブなゲームチェンジャー商品や、Roland Cloudのような新サービスの立ち上げ
伝える:コロナ禍以降、楽器を始めたいという人に対して、新商品だけでなく既存商品の魅力もより伝えられるよう、マーケティング能力を強化する
届ける:部品のひっ迫、コンテナ輸送コストの上昇といった厳しい環境にある中で、調達・生産・供給・販売、サービスからリピートまで、サプライチェーンを世界一のレベルにする
支える:上記3つを含む経営課題の達成状況を見える化し、人材育成や社内の活性化に努め、社員のエンゲージメントを高める

加えて、2020年にはRoland Cloudに並ぶ新施策として、各楽器用の音源を共通化したプラットフォーム「ZEN-Coreシンセシス・システム」の提供を開始しました。

これまでのローランド製品はシンセサイザー音源、ドラム音源、ピアノ音源などを、楽器ごとにそれぞれ別のソフトで動かしていたため、「シンセサイザーで作った音が電子ピアノでは使えない」「良いドラムの音を作っても、再生できる環境がなくライブやDJの現場で使えない」という問題が発生していました。ZEN-Coreシンセシス・システムではそうした問題を解決できると同時に、ハードウェアのプラグインにもデータ互換性も持たせました。今後は音色だけでなく楽器フレーズのデータ互換も生まれるようになるかもしれません。

これによってRoland Cloudを通じて古い楽器の音源も使えるようになりますし、友達が作った音や、あこがれのミュージシャンが演奏していた音色データを自分の楽器で鳴らすことができる。単に膨大な数の音色を使えるだけでなく、他人がクリエイトした音色も使えるようになってくれば、強力なエコシステムができるのではないかと考えています。

―― ロックバンドのライブの後、ファンが「どんなエフェクターをどう接続しているのか」を知りたくてステージを撮影するということが頻繁にありますが、それに近いことがネットで実現できるかもしれないということですね。

三木:楽曲そのものやフレーズは著作権の問題が生じてしまうでしょうが、ユーザーコンテンツとして「あのミュージシャンのあのサウンドを表現できる楽器・ソフト・エフェクターと設定はこれです」という情報であれば今でもいろんなかたちで発表されていますよね。

―― そうですね。加えて近年ではミュージシャン自身が楽曲のパラデータ(トラックごとのデータ)を公開してリミックス・コンテストを開催することも珍しくなくなってきました。

三木:それがより簡単にできるようにすることは大きいと思いますし、そうした世界ではDAWソフト(楽曲制作ソフトウェア)と音源プラグインだけ、つまりソフトだけで完結してしまっており、ハードウェアメーカーとしては中々そこに入っていけないという問題がありましたが、ZEN-Coreというシステムでハードとソフトが連携する、あるいは、ハード自体がクラウドに直接つながれるようになれば、この壁が壊せるんじゃないかと。

そして、それができるのはローランドだけなのではないかとも思っています。


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