EVENT | 2022/01/14

日本が誇る「世界一のプラごみリサイクル率」に暗雲!?輸出・焼却にストップがかかり注目されるケミカルリサイクル【連載】ウィズコロナの地方自治(3)

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谷畑 英吾
前滋賀県湖南市長。前全国市長会相談役。...

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「世界最高のプラごみリサイクル率」を誇る日本の大きな落とし穴

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ここまでプラスチップと書いてきたのは作品の設定上そう呼ばれているからで、現実社会のプラスチックであることは論を俟たない。『未来少年コナン』の放送と同じ年に開園した東京都立夢の島公園がごみの埋立地であったことは当時の常識であったし、夢の島がプラスチップ島のアイロニーであることも容易に想像できた。

都市化が進むのと合わせてごみ問題が社会課題とされる時代だったし、その一方で、1973年のオイルショックを経て石油の安定確保も大きな不安要因として深刻に受け止められていた。そうした時代背景から生まれたのが「プラスチップの石油還元」という設定なのである。

ここから現代日本の話となるが、新型コロナウイルスの国内感染が本格的に始まり、最初の緊急事態宣言が2020年4月に発出されると、社会のあらゆる活動が一斉に停止することとなった。それは24時間放送が当たり前になっていたテレビの制作現場も同じである。NHKが4月から鳴り物入りで放送を開始した深夜アニメ『キングダム』第3シリーズも、制作スケジュールに多大な影響が生じ放送休止に追い込まれた。そこに5月から急遽代打としてバッターボックスに入ったのがデジタルリマスター版『未来少年コナン』であったのは時代のいたずらであるとも言えよう。

ウィズコロナの時代に世の中の常識は大きく書き換えられていく。プライマリーバランス至上主義だった財務省の抵抗は簡単に排除されて2020年度の国債発行総額は263兆円余と当初予算より109兆円余も増加した。要請ベースに過ぎない緊急事態宣言がエビデンスもなく乱発され、社会経済に大きな傷跡を残していく。非接触の必要性からデジタルトランスフォーメーションは待ったなしの社会課題に昇格し、2020年10月には菅首相が所信表明演説で2050年までのカーボンニュートラルを目指すと宣言した。そして、その影で頭をもたげてきたのはプラスチックごみ問題であった。

2017年7月、米ジョージア大の研究チームが1950年以降に人類が生み出したプラスチック製品の総量が83億トンにものぼり、そのうちごみとなった量は63億トン、リサイクルされたものはわずか9%(5.7億トン)で、12%(7.6億トン)が焼却処分、79%(49.8億トン)は埋立処分や自然界に投棄されたと発表した。

自然界に投棄されたプラスチックのうちすでに1億5000万トンが海洋流出し、新たに年間800万トンが増加している。これらが海洋を漂うと、あるものは沈殿し、あるものは海岸に漂着し、あるものは砕かれて微細化してマイクロプラスチックとなり生物濃縮する。微細粒子は大気中にも舞い上がり、呼吸器にも影響を与えるという。

それまで年間713万トンと世界のプラスチックごみを一手に引き受けてきた中国は2018年以降廃プラスチックの輸入を禁止した。主要な受入先を失ったプラスチックごみは東南アジアに流入したが、台湾、タイ、ベトナム、マレーシアが2018年に、インドネシア、フィリピンも2019年に新たな輸入制限の導入、輸入許可基準の強化を進めている。そして、2019年5月にジュネーブで開かれたバーゼル条約締約国会議は、リサイクルに適さない汚れたプラスチックごみの輸出を規制対象とする改正案を採択、2021年1月から施行された。

これにより日本は、2017年の数字で903万トンのプラごみのうち、輸出してきた140万トン余の処分ができなくなった。そのため、2019年5月には輸出できずに国内滞留した廃プラスチック類のうち産業廃棄物に該当するものも、緊急避難措置として市町村の処理するごみ処理施設などへ受入れることができないかと環境省が積極的な検討を要請している。

しかし、この「焼却処分」が曲者なのである。日本は903万トンのプラごみのうちすでに775万トンは焼却していたが、これをサーマルリサイクルと称してリサイクル率に含んでおり、そのおかげで日本のプラごみリサイクル率は86%と世界最高レベルであると胸を張ってきたのだ。これに冷や水を浴びせかけたのが小泉進次郎環境相である。

日本が急ピッチで推進するケミカルリサイクル

プラスチック資源循環促進法案を審議する2021年6月の参議院環境委員会で小泉環境相は、「今までは、時々この熱回収のことをリサイクルと言う人がいるんですけど、我々はもうそういうことを言いません。これリサイクルじゃないです」と答弁した。当然、カーボンニュートラルの旗振り役も環境相なのである。

焼却処分はエネルギー回収でありリサイクルではないとなると、プラごみの焼却処分は建前上できなくなる。禁止しないまでも積極的に進められないため、例えばプラごみを資源回収せず燃やしている自治体に対する循環型社会形成推進交付金など公的資金の支出は難しくなってしまう。そのため環境省はレジ袋や食品トレーなど家庭のプラスチックごみをリサイクル資源として収集していることを新たな交付条件とする方針を固めた

焼却処分ができなくなった日本のプラごみリサイクル率はたちまち25%へと激減してしまうし、さらに中国への輸出分を差し引けば13%程度に落ち込むことになる。だからといって、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的汚染をゼロにするという「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が2019年6月の大阪G20において日本の主導で採択され、環境上適正な廃棄物管理をするなどとした「海洋プラスチックごみ対策実施枠組」をG20で共有している以上、無法なこともできない。

輸出もできず、焼却もできないプラごみのリサイクルに残されたのは、ガスや石油など化学燃料にするための処置を施すケミカルリサイクルである。2017年に総排出量の4.4%しか占めていなかったケミカルリサイクルは、まさに『未来少年コナン』が示したプラスチップの石油還元そのものである。

ペットボトルや衣服などに再生するマテリアルリサイクルもあるが、この場合は分別や破砕、洗浄などに多大なエネルギーを要することになる。しかし、ケミカルリサイクルであれば、そうしたエネルギーも最小限に抑えることができるのだ。

プラごみを石油還元した場合のCO2排出量は、プラごみを焼却した場合の10分の1以下という試算もある。すなわち、カーボンニュートラルにも貢献することとなる。しかも、そうした地域のプラごみを地域内で油化して地域産業に格安で提供できれば、地域経済の循環や活性化にもつなげることが可能となる。

今、国内各企業はプラごみの石油還元技術の現実化にしのぎを削っており、海外においてはすでに事業化が進んでいる。4月にプラスチック資源循環促進法が施行される2022年は、『未来少年コナン』の描く2008年から14年遅れてのプラスチック油化元年であるとも言える。焼却できない廃棄物としてプラごみに対峙しなければならない自治体にとってもひとつの正念場を迎えることになる。


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