CULTURE | 2021/12/09

ムダに恐れられ差別される「魔都・東京」。集団ヒステリーを生んだ「パーナさん騒動」からコロナ差別まで【連載】中川淳一郎の令和ネット漂流記(30)

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中川淳一郎
ウェブ編集者、PRプランナー
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「何かを書き込むことによって、いいことをした気分になる」という自己満足がデマの連鎖を生む

これらの記述だけ見れば東京が完全にゴッサムシティのような状況になったと感じられるだろうが、「俺の知ってる東京じゃない」の声も出た。私もそう思った。世界屈指の治安の良い巨大都市・TOKYOでこんな事態になるわけがない。この日は、フリーアナウンサーの高橋真麻が浴衣姿でびしょ濡れになりながら「雨がすごすぎて逆にテンションが上りますね!」と開き直った伝説の「テレ東台風花火中継」が放映され、私は片桐仁氏の芝居を見に行っていたが、本当にすさまじい雨だった。

家に帰ってからツイッターでこのような大騒動になっているのを見て「これは面白いぞwwww」と逐一注目をした。そしてネットを介した集団パニックというものを目撃したのだ。これは本当に重要な事件だと心から思った。

この「パーナさん騒動」がもし事実だったら、かつての香港・九龍城やNYのブロンクス、ヨハネスブルグやブラジルのファベーラ(スラム街)やコロンビアやメキシコの麻薬カルテルの本拠地のような状況で、togetterの「魔都東京」という言い方は正しい。

これらだけを見ると、この日、東京で集団レイプと拉致が大量に発生したように感じられるかもしれないが、J-CASTニュースが警視庁に確認したところ「そのような事実は把握していない」というコメントを得たそうだ

私もこの件については、当時東京新聞・中日新聞の連載で言及したが、Wikipediaでは、このように私の発言と能町みね子氏の意見が紹介されている(脚注部分は削除)。

この騒動について、ネットニュース編集者の中川淳一郎は「『何かを書き込むことによって、いいことをした気分になる』という自己満足が横行した」と指摘したうえで「現代社会のデマは瞬時に広がるから注意が必要」と呼びかけている。また、エッセイストの能町みね子は、ツイッターで出回ったデマの内容について「根拠がなさすぎる」と断じたうえで、「便利な道具があってもアタマがついていかないと、関東大震災頃のような低レベルなデマが飛び交うんだなあ」と評している。

そして、この件について妙なオチが付いたのが、この時、ツイッターで連帯したパーナさん達は勝手に2013年7月27日を「ジャニーズ心の日」に認定しよう! と意見を言い合ったのだ。あのな……、デマ騒動で勝手に連携し、ネットにお笑いネタを与えただけなのにそれはさらなるジョークになるのと知性の低さを見せることになるからやめた方がいいぞ……と思ったが、結局こうした記念日は認定されなかった。それでいいのである。

さて、「魔都東京」だが、東京都民はコロナの感染爆発以降、そのような魔都の危険な住民だと思われ、差別されたことだろう。地方都市に行った場合、都民の皆さんは、飲食店などで「あなたどこから来たの?」と恐怖の顔をされながら言われたのではないか。私も何度も言われた。

結局東京という日本最大の都市は、どこか恐れられている面があるし、差別されている面もある。しかし、東京は全国の人々、そして世界の人々を受け入れる深い度量のある都市である。そんな都市の人々がコロナ初期は差別されたが、あれから1年半以上経った今、一部の東京の人でさえもコロナ陽性者やマスクをしない人間を差別するような状況になっているのは皮肉なものだ。


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