余命2年、ステージ4のガンを患った父親
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弁護人「27万円、何に使う必要があったんですか?」
L被告人「仲間を応援するためのコンサートチケットの購入、自分のチラシの印刷、レッスン代、ケータイ代などです」
弁護人「お金は両親に相談すればよかったんじゃないですか?」
L被告人「ガン治療で闘いながら働いている父、パートしている母に心配かけたくなかったです」
弁護人「余計盗みやれないでしょ!」
L被告人「今思えばそうです」
さっき証言台に立ったお父さんはガンだったんですね。尋問を聞いている分には元気そうではあるんですけど。
弁護人「3月1日の件は、何のお金が必要だったんですか?」
L被告人「自分のための生活費…」
弁護人「一緒に住んでるんだから、食事は出るんでしょ?」
L被告人「やっぱりいつも作ってもらうのは申し訳ないな、と。そういう気持ちもあって…」
弁護人「だったら働こうとは?」
法廷にいる人が全員訊いて欲しかったであろう質問です。証人尋問のときからずーーっとモヤモヤしてた部分なので。その答えは、
L被告人「音楽の仕事しか考えてなくて…。今、思えば、何故音楽以外の仕事をしなかったのかと過去の自分に言いたいです」
どうやら、被告人も知りたがって、モヤモヤしてるようです。
弁護人「音楽以外の仕事はやらないんですか?」
L被告人「音楽以外の仕事…アルバイトをしながら、そのお金を音楽活動に使えと父にも言われていたので」
弁護人「(音楽関係者の)周りの友人もやってるでしょ?」
L被告人「はい。まず、そうするべきでした」
と、ストイックに音楽以外で収入をやらなかったことを悔いていました。
弁護人「あと、盗み繰り返す人は治療とかカウンセリング受けて治すこともあるんですけど、病院の診察受けます?」
L被告人「3カ月前は受けようと考えてました。でも、病気ではないと私自身思ってまして」
弁護人「じゃあ、何のせいなの?」
L被告人「何のせい…。自分のせいであって、警察に捕まって、両親、友人、仕事仲間に心配迷惑をもう掛けられないので」
弁護人「それは前回の裁判で考えなかった?」
L被告人「お金が欲しいという考えがありまして、次は見つからなければ大丈夫という考えが先走ってしまいました」
困った表情を浮かべる弁護人。被告人としては、正直な気持ちを述べてるんでしょうけどね。また、「見つからなければ」発言をしてしまうとは。
弁護人「うーーん…、必要なら治療受けてくださいね」
L被告人「ん?…、あ、はい」
と、強引に病院に行くと約束です。
弁護人「打ち合わせでも言ってましたけど、また執行猶予欲しいんだよね?」
L被告人「はい」
弁護人「酌むべき点がないと、執行猶予中の犯行で再び執行猶予ってなかなかないんですよね。酌むべき点があるんですか?」
L被告人「両親が70代で、どちらも仕事をしております。父は、余命2年のステージ4と言われております。自分が両親を守らなければならない立場にあるんです!」
お父さんは医者に余命を言われていたようです。前刑の裁判の判決は懲役1年6月執行猶予3年。今回の刑と合わせると、余命である2年より長い服役になるのは確実です。証人尋問での涙は、そういう意味もあったんだろうな、と。
被告人の言う酌むべき点を聞くと、
弁護人「それは前から分かってたんじゃない?」
L被告人「本当に本当に情けなく思います!」
弁護人「自分のやったことって、お父さんを守るとか以前の話じゃないです?」
L被告人「もちろん、そうです。ゼロから人間をやり直す覚悟です」
と、熱い被告人と冷めた弁護人のギャップ…。言葉だけは一人前なんですよね。再度の執行猶予は難しいっすよ…と言わんばかりの雰囲気で弁護人からの質問は終了。