出版業界でも「構造的な人種差別」に反対する動きが広まる
アメリカの出版業界では、これまでにも黒人作家に対する構造的な差別があることが囁かれてきた。黒人作家がなかなかデビューできず、人気作家になる機会を与えられないのは、黒人の編集者があまりいないためでもある。また、雇用されても黒人の編集者は白人の同僚に比べて出世の機会を与えられない。黒人の編集者にパワーがあまりない環境では、才能がある黒人作家を見出しても「どうせ売れない」という理由で却下されてしまう。これが構造的な差別である。
6月8日、マクミラン出版社に勤務する5人の編集者が発起人になり、アメリカ出版業界の1300人の編集者が「雇用と採用の構造的差別と、利益のために人種差別を増長する内容の本を刊行すること」に抗議するストライキに参加した。ストライキに参加した人たちは、1日職場を休み、抗議運動をしたり、黒人作家をプロモートする仕事をしたり、「#PubWorkers4BlackLives」と「#PubWorkers4Justice」というハッシュタグを使ってツイッターで抗議したりした。
次に起こったのは、ハーパーコリンズで黒人作家の本を専門に出版するアミスタッド・プレスが始めたキャンペーンだ。黒人作家の本を2冊購入し、「#BlackPublishingPower」と「#BlackoutBestsellerList」というハッシュタグを付けてSNSで告知するというもので、黒人以外の編集者や愛読者の協力を得て大きく広まった。
多くの公立図書館も全米での抗議運動を受けて「人種差別反対主義」読書リストを作り、多くの人が借りられるように普段より多くの本を用意している。パンデミックで紙媒体の本を貸し出ししにくくなっているので、紙媒体よりもコストがかかるにもかかわらず、デジタル媒体(Kindle書籍とオーディオブック)をかなり多く購入したようだ。
ボストン公共図書館のデジタル本(電子書籍とオーディオブック)貸し出しサイト