15年以上もの間、世界トップクラスの総合格闘家として、国内外のリングに上り続けてきた青木真也。現在はアジア最大の「ONE」を主戦場とし、ライト級の最前線で活躍。さらに単なる格闘家としての枠を超え、自ら会社を立ち上げるなど独自の活動を行う。
そんな青木は、自らの人生を「物語」としてコンテンツ化していると明かす。その真相はいかに? 異能の格闘家のアップデートされた人生哲学が今ここに。
聞き手:米田智彦 構成:友清哲 写真:有高唯之
青木真也
総合格闘家
1983年5月9日生まれ。静岡県出身。小学生の頃から柔道を始め、2002年に全日本ジュニア強化選手に選抜される。早稲田大学在学中に、柔道から総合格闘技に転身。「修斗」ミドル級世界王座を獲得。大学卒業後に静岡県警に就職するが、二カ月で退職して再び総合格闘家へ。「DREAM」「ONE FC」の2団体で世界ライト級王者に輝く。著書に『空気を読んではいけない』(幻冬舎)、『ストロング本能 人生を後悔しない「自分だけのものさし」』(KADOKAWA)がある。
コロナ禍がもたらした「人生の棚卸し」の機会
折しものコロナ禍により、人々は長い外出自粛生活を強いられた。自由に出歩くことができず、友人知人に会えない日々に、深刻なストレスを溜め込んだ人も少なくないだろう。でもこれは、考えようによっては“人生の棚卸し”を行う良い機会だったのではないかと僕は考えている。
新型コロナウイルスの登場により、人の暮らしや社会の在り方が今、大きく変わろうとしている。しかし、これを単なる「変化」ではなく、世の中から無駄を削ぎ落とすための「早送り」と考える視点があってもいいのではないか。
仕事面でいえば、通勤が省かれてリモートワークが浸透したことはその最たるものであるし、プライベートにおいてもきっと、人生そのものの優先順位を見直す機会になったはずだ。たとえば商売に悩んでいた人は、これを機にリタイアするケースもあるだろうし、結婚や離婚を決意した人も少なくないだろう。
自分はなぜ、この仕事をやっているのか。自分はなぜ、その目標を追い続けているのか。今一度、優先順位やモチベーションを見直す “棚卸し”をして、自分が本当にやり甲斐や生き甲斐を感じるものを見つめ直す。それは人生をシンプルにすることに等しいかもしれない。
かくいう僕は、実はそうした「人生の棚卸し」を、すでに数年前に済ませている。おかげで、今回のコロナ禍においても、生活のスタンスや考え方に一切の影響がなかったと断言できる。なぜなら、自分がやりたいこと、やるべきことの優先順位が、すでに明確化しているからだ。