CULTURE | 2021/06/03

オリンピッグだけじゃない!東京五輪を100倍楽しく見る怒涛の炎上史【連載】中川淳一郎の令和ネット漂流記(24)

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中川淳一郎
ウェブ編集者、PRプランナー
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ダサ過ぎる舛添と呑気過ぎる小池

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その後ネットで多数取沙汰されたのは2019年、トライアスロンの水泳会場で基準値を超える大腸菌が検出されたことだ。これについては「ウンコ五輪」などと揶揄される結果となった。これまでロクな話題がないが、東京五輪をめぐってのネットは本当にロクでもないものが多い。いくつか振り返ってみよう。

【舛添要一前知事時代のボランティアの制服がダサ過ぎと評判】

制服を着た男女に挟まれ、満面の笑顔のスーツ姿の舛添氏を覚えている方もいるのではないだろうか。ポロシャツにネクタイ柄が付き、帽子には日の丸が帯状に多数並んでいる。ネット上では「ダサ過ぎる」「李氏朝鮮の王宮守衛の服に似ている」といった声が出た。その後就任した小池百合子都知事は容赦なく舛添氏時代に決まったデザインを撤回。青を基調とした市松模様のポロシャツや防寒着などをお披露目した。確かに舛添氏時代と比べればファッショナブルだが、今見ると完全に『鬼滅の刃』的なのである。

とはいっても、舛添氏の件についてはデザイナーも気の毒だ。何しろボランティアだと一目で分かり間違われないデザインかつ正装感を出せるポロシャツであれ、というコンペの条件があったのだから。確かにこのデザインはすべてを満たしている。

【小池百合子知事の暑さ対策が呑気過ぎる件】

連日36度を超えるなど、東京の暑さが問題視されたが、小池氏はミストシャワーの設置を推進すると発表。これはまともだったが他があまりにも呑気というか、「江戸時代か!」と言いたくなるようなものだらけだった。日本らしい観光PRになるとはいえ、「よしず」と「浴衣」が出た時は唖然とする人が続出。さらにネットの人々を呆れさせたのが「打ち水」と「かぶる傘」だ。特に「かぶる傘」については得意げにプレゼンする脇でダサい傘をかぶる都庁職員の男性が気の毒だという書き込みも多数だった。

五輪をめぐるドタバタ劇で気の毒だったのは、マラソンコースに施した遮熱性舗装である。2019年にカタールで行なわれた世界陸上の女子マラソンで棄権が相次いだことから、IOCは突如マラソンコースを札幌に変更。300億円が無駄になってしまった。

【ボランティアの条件悪過ぎ問題】

早朝の競技については、終電で会場入りすることが話題となった。また、暑さ対策として水やお茶、塩アメを提供するとされた。国内競技団体との会合では、ボクシング団体の関係者がこれに異議を唱えた。水やお茶では体内の塩分濃度が薄まり、さらに発汗して塩分が失われる危険性に言及。塩アメでは十分ではないのだという。そして、お茶には利尿作用があるので、さらに水分が失われるとも指摘された。

【東京五輪エンブレム騒動】

これが最大のネットを揺るがしたできごとだ。2015年7月に決定したエンブレムについては、盗作疑惑が発生。その後、このエンブレムをデザインしたデザイナーの過去の作品の多数が剽窃扱いされ、同年9月に撤回されるまでネットの炎上を一手に引き受けた感がある。撤回の発表では組織委の武藤敏郎事務総長がしきりと「一般国民には理解が得られない」と発言。この時に「上級国民には理解できるんですねw」などとネットには書かれ、2019年の池袋暴走死亡事故に関連し新語・流行語大賞トップ10に入った「上級国民」が誕生した。

こうして振り返ると、麻生太郎氏が「呪われた五輪」と言ったのはあながち間違いでもないことが分かる。だが、基本的にはネット上での難癖が目立ったといえるのではないだろうか。その分野の専門家やプロが必死に考えたであろう案がネットの一般国民にとっては揶揄の対象になり撤回に追い込まれる。これを見事に辿ったのが東京五輪である。さて、7割が反対している今夏の東京五輪開催だが、また「民意」が撤回させることができるか?

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