日本からもGAFA並みの企業が誕生しうる
―― ブロックチェーン技術者の育成も課題ですね。
伊藤:私にはブロックチェーン開発のため、どれくらいの基礎知識や学力が必要か分かりません。ただし、ずっと取り組んでいるテーマの一つに「大学に行かない選択肢を増やす」というものがあります。高学歴を目指す人はそれでいい。でも一方で、一つだけ強みを持つ人たちがいていいと思っています。たとえばプログラミングの実力があるITの職人みたいな人たちですね。
私はそのために、工業高校改革に力を入れてきました。ちょうどこの春からは、いくつかのIT企業と組み、町田工業高校で「Tokyo P-TECH」という事業をスタートさせています。この事業では、IT企業が工業高校のカリキュラムを作っています。彼らがほしい人材を育て、優秀な子は引き取る。今後はこれを全16校の工業高校で横展開していきたいと思っています。同じ試みを日本工学院八王子専門学校でも5年コースで始めました。おそらくそこでは、5年で飛躍的にスキルアップする人がいると証明できると思います。
入江:IT人材の不足は東京都にとって大きな課題であり、真剣に取り組んでいます。けれど、東大理系の修士やホワイトハッカー、AIの専門家といった非常に高度な人材では、みなさん就職先に米国を選ぶ場合が多いんですよね。日本の企業と比べて給与がいいし、自由に研究ができるから。そういった人材が海外に流出しないよう、まずは産業界に取り組みを呼びかけていきたいと思っています。
―― 最後に読者へメッセージをお願いします。
伊藤:都議会議員の最も大切な役割は、都民のみなさんに幸せになっていただくことです。そのためにも、稼げる都市作りが非常に重要だと思うんですね。日本では昔から、金融よりもものづくりに重きが置かれてきました。しかし、ITで物事が動いていく時代にあっては、それよりも発想力が問われてくる。iPhoneは米国Appleの発明ですが、同じものが作れるだけの技術力は日本にもありました。アイデアがなかっただけなんです。
向こう30年、場合によっては100年間、おそらくGAFAが世界をリードするビッグカンパニーであり続けるでしょう。しかし、日本の潜在力をもってすれば、それに伍するような企業が誕生しうる。シリコンバレーの経営者たちは、若いの頃からみんなでアイディアを出し合い、切磋琢磨しながら成長してきました。だとしたら、われわれ政治家もそういう空間や機会を用意しなければならない。それこそが政治の仕事だと私は考えています。