CULTURE | 2021/04/06

橋下徹、石原慎太郎、猪瀬直樹と渡り合う芸能界イチのメモ魔。水道橋博士がここまで「記録」に取り憑かれるワケ

ノンフィクションの名手、沢木耕太郎は、「ノンフィクションを書くには、運を味方につけなければいけない」とエッセイで語ってい...

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見城さんに忖度する箕輪くんはむしろ被害者

―― ちょっと言いづらいかもしれないんですけど、文中でもカミングアウトをされていた、鬱になったことについてお聞かせ願えますか。

博士:実はボクは鬱には何回もなっていて、これが3回目ぐらい。今回鬱になったのは2019年にやった「8.4 HATASHIAI」(※)で、幻冬舎の箕輪(厚介)のパンチで前歯が3本折れた。体重差20キロあるんだよ。25歳若くて体重20キロ差があって、相手セコンドの青木真也から「とにかくぶつかれ!」と言われて思いっきり飛び出してきているから。体重の乗ったパンチが思い切り入って歯が3本折れちゃって、それで入れ歯になったのよ。

※堀江貴文のオンラインサロン「堀江貴文イノベーション大学校」から誕生した、格闘技未経験者(素人)同士による対戦イベント。(『藝人春秋3』でも大きく言及されている)百田尚樹『殉愛』に関するトラブルの見解を巡りTwitter上で口論となり、ではこのイベントで拳を交え決着をつけよう、という博士からの提案があり対戦が実現した

インプラントをつくる間をずっと入れ歯にしなくちゃいけなくて、その違和感がすごくて夜中に気持ち悪いから入れ歯の先のところをチョキチョキと切っちゃった、歯茎みたいなところ。そしたら入れ歯がずれちゃって喋れない。それでテレビの現場に行ってもまったく喋れないんだよ。

―― それって…箕輪さんにも原因があるじゃないですか?

博士:いや、違う。むしろ彼は巻き込まれた被害者だよ。町山さんも『3』の文庫解説で書いたように、彼自身が元々ボクに巻き込まれているから。あと『殉愛』の編集には関わっていないし、完全な被害者。ただそんなに見城徹さん(幻冬舎社長)の気持ちを忖度してさ、見城さんの犬として、ボクと殴り合いをやる必要もないとは思うけど。

箕輪さんからのセクハラ被害を訴えたA子さんのことだってひどくない? A子さん自身がアップしたYouTube動画を観たことある?(現在は非公開)「私はもしかしたら殺されるかもしれないんで、このYouTubeを残します。箕輪さんが何をしたか全部言います」って。あんなことを若いシングルマザーの女性に言わせてしまう、そういう上の人たちが日本にいるかと思うと、本当に情けなく思う。確かに彼女はそのことを受けて、病んでいると思うし、思い込みだけの虚言の部分もあるのかもしれない。こうした動画をアップすること自体も逆効果な面があったかもしれない。でも、そこまで被害者本人に言わせている要因を作る君らはどうも思わないの?って、テキーラ一気飲み事件もそう。DHCの社長の差別発言もそう。さんざん普通の人は晒し者にして叩くのに、お金や権力のあるひとは、特別扱いして、忖度するのテレビの内側の人間も、よく平気でいられるねーって思う。本当ああいうのが不思議だよ。

泰葉さんにもこの間会ってお話ししたけど、当時本当に泰葉さんがおかしかったのは間違いないから。(春風亭)小朝さんに対してもそうだし、当時、ボクの知り合いに書いた手紙だってひどいし、夜な夜な電話がかかってきて途中から電話も受けなくなったけど……。でも見離してはいないの。今はすごくメンタルも良くなってるから「本当にあなたは歌を歌えば良いから、あなたの本分、素晴らしい芸は歌であってそうやって喋って他人の悪口を言うのが芸じゃないから」っていうのを言いながら、また打ち解けて喋ったから。今もメール交換しているけども。

だけど見城徹さんが、「水道橋博士というのは松居一代とか泰葉と同じヤツだから相手にしないことに決めた」みたいなことを、SNSの「755」に書くわけ。それは本当に出版人のトップとして卑劣じゃない? ボクは見城さんの仕事も作ってきた本も本当に影響を受けてきたし、尊敬していたから、そういうことを言っている見城さんをおかしいといさめる部下がいないというのも本当におかしいと思う。

―― 僕も編集者として、見城さんは尾崎豊や村上龍のような、いわゆる反逆の人というか権力に向かって作品をつくっていくような人物と本を編んできた編集者としてすごく影響を受けましたが、どうしてこんな風になってしまったのかと。

博士:権力に近づいて、「癒着」を公言して、どんどん政商化していっているけど、そんなの若者に対してカッコ悪いですよとなんで言えないのと思うよ。若者の志を折るじゃん、Abema TVの冠番組で安倍首相を招いてひたすらヨイショするみたいなことをやっていたら。せめて放送じゃないところでやってほしいよ。

今度、阿佐ヶ谷の大読書会の2回目をやるんだけど、そこに見城徹や箕輪厚介を呼ぼうとしているんです。来ないとは思うけど、でも来てくれた時に彼らを潰そうとか、斬りつけるとか思ってはいないのよ。そうじゃなくてお互いに誤解があったから誤解を正そうよ、あるいは権力者を持ち上げておべっかを言うような、それを指摘されたら、その人たちをメディアから干すとか降ろすとか、そういうことをするような権力の使い方みたいなのはやっぱ辞めようよって言いたいのよ。そういう影響力とか、カッコいいですか?

『殉愛』もそうだけど、100%事実だって煽っておいて、そこに対しておかしいって言った読者に裁判をちらつかせたりとか、そんなのただの市井の民だよ。権力者でもないし、小説家でもないし、ジャーナリストでもない人たちだよ。ただの善良な読者が事実関係を調べてネットで書いた指摘に対して、訴訟をちらつかせて、黙らせたり、あんなひどいことをするのはボクは許せないんだよ。ひとこと「間違っていました」「ミスでした」って言えばいいのに。ボクは他の百田尚樹の本がダメだって一言も言ってないし、発言を含めてボクが問題にしてるのは『殉愛』だけだから。

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