CULTURE | 2021/04/06

橋下徹、石原慎太郎、猪瀬直樹と渡り合う芸能界イチのメモ魔。水道橋博士がここまで「記録」に取り憑かれるワケ

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人生とは、伏線作りとその回収

―― 博士は“記録魔”という面では芸能界ナンバー1じゃないんでしょうか?

博士:昔、古川ロッパというボク以上の記録魔がいましたから、もっと他にも居る可能性はあります。でも、実際には芸人でボク以上の記録魔に会ったことはありませんね。記憶がいいひとは一杯いるけど。だから他のインタビューでも言うし本にも書くんだけど、「日記とは何だ?」と言われた時に「日記は人生なんだ」と答えています。人生の中の付箋を貼っているのが日記なんだと。ここでこんなことして、こんな人と会って、こういうことがあったんだってことに付箋をつける。人生を一冊の本だとしたら、あっちこっちの頁に付箋を貼っている。その付箋というのは伏線なんだと思うんです。人生100年時代だと仮定すると、前半50年は全部伏線で、50歳を超えてから10代や20代の頃の伏線回収が現れる。人生に対して付箋を貼るという行為そのものは、まず「出会いに照れない」ことなんです。照れていると伏線=付箋を貼れないから、そんなことが起こりにくいんです。

―― “猛獣使い”みたいな表現もありますけど、世間一般的に言われている怖い人や妖怪みたいな人、特にこの本の中で、そういう人を追いかけることこそ面白いんじゃないかというふうに書いてらっしゃいます。博士さんが猛獣をコントロールできるようになったのはどうしてなんですか?

博士:技術的に上手くなったのは『浅草橋ヤング洋品店(浅ヤン)』(テレビ東京)という番組があったからです。『浅ヤン』のレポーターをやって芸能人じゃない怪人の懐に飛び込んでいくのが飛躍的に上手くなった。例えば城南電機の宮路社長とか、金満家協会の会長とか、周富徳とか、ああいう人の懐に入って「こいつは面白い」というふうに思われることに関して自信を持てたきっかけの仕事です。

もうひとつ、『SRS』(フジテレビ)という番組では格闘家と絡まなきゃいけなかった。プロレスラーや格闘家の人間関係は複雑だから、そこの勘所を知りながら、心の中のヒダに入って、飛び込んで、両方との関係をしくじらないようにする。前田日明も高田延彦もしくじらないのは凄く大変なんですよ。お互いを立て合って、しかも「博士が裏でこんなこと言ってましたよ」と陰口を一回でも言われたら終わり。だからこそ、そういうことがまったくない関係をつくった。

そして『アサ(秘)ジャーナル』(TBS)で政治があるんですよ。これらの番組をやっていた10年間ぐらいは、浅草キッドはほぼタレントと仕事してないんですよ。他にもレギュラー番組だと『ド・ナイト』(テレビ朝日)という社長を称揚する番組をやっていた。社長と格闘家と料理人、周富徳・周富輝とか。プロレスラー、格闘家、特殊な人しか会わないですよ。

博士秘蔵のグッズ集より

―― その中で印象的だったのが博士さんの息子さん、娘さんの名前を高田さんが聞いてきた話です。

博士:ああ、その話は、高田延彦さんがここの家に来て、家族に囲まれて、「博士は子供にどういう名前つけたの?」と言われて、息子のタケシは師匠のビートたけしから貰いました。娘のフミちゃんは尊敬する放送作家の高田文夫先生から貰って、文武両道というかたちになっています。そこの間に末っ子のアキラが入ってきて「アキラ君は?」って言われた時に、うっ、どう答えようか……と(笑)。

―― 普通のプロレスファンでも、昔UWFで前田さんと高田さんは一緒にやっていたから、犬猿の仲だってことを知らないじゃないですか。今どうなっているかなんて。

博士:ちなみに言うとアキラは1月1日生まれで、字はもともと武士の「士」とつけたかった。タケシは武、フミは文で、武士、文士と漢字が三すくみになるから。その年の正月、末っ子が生まれた時に一番最初に「あけましておめでとうございます」というメッセージを送ってきてくれたのが、偶然、前田日明だったということもありました。

それでひょっとして「士」ってアキラと読めないかなと思って調べたら、読めるんですよ。それで名前をアキラにしたんです。だから前田日明から取っているということはそういうことです。この前、阿佐ヶ谷ロフトで「阿佐ヶ谷ヤング洋品店」という配信イベントをやりましたけど、そこに前田さん、高田さん、長州さんに出てもらおうと思って今動いています。

長州さんとは一緒に本を作っているし、高田さんは名古屋で長く番組の共演者でしたし、前田さんとも信頼関係が長いので、それも出来るかもしれません。よく関係者から、この3人の共演が出来るとしたら、要は博士だけだって言われますね。

―― 『藝人春秋2・3』の文庫化に関しては解説をダースレイダーさんと町山智浩さんが書いていますね。どちらも20ページ近くに上るすごいボリュームと内容です。 

博士:ボクの方から1万字以上の徹底解説をお願いしました。ボクは文庫本の解説に関しては一家言があるので、その理由を説明して引き受けていただきました。特に町山さんの解説については、ボクの事務所の人、すごく気を許している人たち全員から事前に「これは書きすぎじゃない?」って指摘されました。「これを発表したら博士が損をするよ」って。でもボクは全部を納得して、覚悟した上で残しているから。むしろ、何時でも「悔いること無く死ねる」と思えるほどの名解説でした。

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