CULTURE | 2021/03/01

佐賀に移住した中川淳一郎。「わざわざ会いに来てくれる人」がいるなら、地方移住もアリ【連載】コロナ禍の移住・脱東京(1)

聞き手・文・写真:米田智彦 構成:平田提
新型コロナウイルスの影響でリモートワークに移行し、だんだん「どこに住んでも仕...

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地方移住者を増やすには、進学校を各地に誘致

米田:コロナって多分、あと2、3年は終息はしないんじゃないかと思うんです。それどころかポリオの例を考えると、あと4、5年かかるかもしれない。

たとえコロナが収まっても、リモートワークでも結構できることが分かったから、東京にこだわらないで働く人が増えると思うんですよね。企業もオフィスを小さくしたりとか。みんなイケイケでキラキラしたオフィス作って、それに惹かれた新卒を採って……みたいな、そういう流れってあったじゃないですか。そういう価値観は崩れましたよね。

中川:今後、例えば博報堂が入っている赤坂のBizタワーにしてもね、改造して住居になる気がするんですよ、何フロアか。

米田:丸の内のビルがマンションになったら「歩いて2分で出社」とか、そういうことが起こりうるわけですよね。それはすごく大きい。

中川:それを良しと考える人がきちんと残り続けると思うし、周辺の飲食店も続くと思うんですね。ターミナル駅近くの飲食店はいま苦しいと思うんですけど。どう考えてもリモートワークが増えちゃった場合って、オフィスが要らないって流れになるでしょ。不動産業はその方向にビジネスモデルを変えなくちゃいけない。

米田:大転回の時代ですからね。

僕が『いきたい場所で生きる』を書いたときに予想していたのとは、またちょっと違う流れになっていますね。移住や働き方の有り様は大きく変わっていきそうです。中川さんの話とか聞いててもそう。

家族・子育て・仕事っていうのは移住にとって大きな問題で、地方に行ったら仕事がない、じゃあ移住できないじゃんっていう前提があった。でもそれがリモートワークによって覆されつつある。地方に移住する人が増えれば、地方の文化や活性化につながるかもしれない。

中川:最近知り合ったのが、ある生命保険会社の執行役員の女性で、この方は元々東京にいらっしゃったんですけど、いろんな事情があって唐津に移住された。そこは大きな会社なんだけど、拠点が東京と大阪にしかないんですね。そうすると執行役員のような立場の人は、例えば東京に大地震があったというと、大阪に行く選択肢しかない。じゃあもう一拠点持ったほうがいいんじゃないかっていうことを会社に提案したらOKが出て、完全リモートで業務をやって下さいって、今は唐津に住んでいる。それがとても楽しそうなんですね。

米田:会社としても第3の選択肢になりますね。

中川:新卒からいきなりはさすがに難しいかもしれないけど、ホワイトカラーの仕事でも、こういう移住のあり方は全然ありだと思うし。地方移住者を増やす上で大事なのは、進学校を各地にいっぱい作ることだと思うんですね。子を持つ親は良い学校に通わせたいって働くこともあるだろうから、たとえば「開成高校佐賀キャンパス」を作る方向になってもいい。

米田:灘高校新潟キャンパスとか。

中川:そうそう。地方が都心の進学校を誘致するのはありだと思う。世界中から学べる大分県の立命館アジア太平洋大学みたいに、全国各地から学べる高校を作る。例えば都心で受験ができることにして、実際に通うのは鹿児島にするとか、佐賀にするとか。1月に試験を受けたら合格発表もすぐできたら、お父さんもお母さんも移住の準備に2カ月あるわけじゃないですか。そうなればいいのにって思うんですよね。

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