DXを推進させる中でソフトウェアの役割とは
荻原:実は、私たちは7年前ぐらいから、6軸ロボットを作り出しました。なぜかというとニーズがあったからなのですが、これまでは、メカはメカ、エレキはエレキ、ソフトはソフトで開発をして、最後に3つを合わせ、テストをやって、不具合がどこにあるのかを試行錯誤して探るということをずっとやっており、そういう時代が長かった。ところが今回の開発では、モデルベース開発といって、メカ、エレキ、ソフトをシミュレーションしながら動かしていった。すると、非常に短期間に6軸ロボットができたのです。実は、たった7カ月で完成しています。これは非常に画期的なことです。
何を言いたいのかというと、この開発手法では、ソフトウェアの役割というのが、これまでとはまったく異なってきた点です。メカやエレキを制御するだけではなく、ソフトウェアが開発作業すべてを牽引する存在となってきた。
そこから見えてきたのは、いいか悪いかは別にして、ソフトウェアがこの国の産業全てを引っ張っていく存在になってしまったということです。
水谷:私は、ソフトウェアには無限の可能性があると思っています。例えば、人の100倍働いて欲しいという要求があった場合、インターネットにつながっているソフトウエアロボットを活用するとしたら、ひと言指示すればいろんな業務ができて、従来人がやっていた作業の100倍でも働けてしまう。このように生産性を変えられるものとしてソフトウェアというのは非常に重要です。
ソフトウェアの世界で素晴らしいのは、常に新しいテクノロジーが発明され、今までとは違うステージが繰り返し到来し、その変革の流れに乗りながら、世の中の進歩を作っていくことがとても重要になります。
ソフトウェアの重要性はますます高まっているわけですが、残念なことに、日本にはこの分野でGAFAに相当するような大きな存在感を持つ企業はありません。しかし、無いからこそ、これから育てられる余地があるともいえるわけで、そういう観点からも、これからデジタル庁に支援していただきながらソフトウェアの分野を成長させていくことが必要なのではないかと思います。
田中:私も、会長と筆頭副会長が語られたように、ソフトウェアが重要だということに尽きると思います。私が好きな言葉に、「ハードウェアをソフトウェアが超越する」というのがあります。これはハードウェアの性能がソフトウェアによって向上するということを意味します。
先程会長がご紹介くださった6軸ロボットの例も、これまでバラバラに開発されていたメカとエレキとソフトを、ソフトウェアが牽引することで開発スピードを大幅に上げることができるというのですから素晴らしいですね。
ハードウェアの重要度が高いと思われるバッテリーやモーターについても、ソフトウェアのアップデートを行うことで、さらなる性能を引き出せたりするわけですから、ハードウェアに残された競争の余地としては小型化ぐらいでしょうか。日本ではまだまだハードウェアの開発に拘りがちですが、ソフトウェアの活用次第で、本来のハードウェアが有する性能以上のものを引き出すことができることを、もっと知ってもらいたいですね。
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