デジタル庁への提言・課題について
荻原:デジタル庁の人員は500名と決まっていて、うち100名が民間人であるといわれており、正直それでできるのかなという不安があります。一番足りないと思われるのがプロマネで、各企業が単独でプロマネを出すのはなかなか厳しく、そこがネックになっていると思います。
また、ちょうどデジタル庁のシステム開発が始まるであろう2年後ぐらいには、エンジニアの取り合いが起こることが危惧されています。エンジニア獲得に向けた競争により、予算の限られる国が不利になって、開発が遅れてしまうことが恐れられています。
であるなら、コロナ禍の中で職を失ってしまった方もかなりいらっしゃるので、デジタル教育を受けていただき、我々の産業に入っていただくチャンスと考えてはいかがでしようか。国はそこを絶対に支援するべきだと私は思っています。
この国の未来を支えるデジタル人材の不足を解消するために、国は本腰をあげるべきであると私は主張し続けております。
田中:私も荻原会長のご意見に1000%同意します。コロナ禍で失職されてしまった30代、40代の方がデジタル教育を受けて活躍してくれれば、国のDXにも、企業のDXにもメリットがあるし、習得したデジタル技術によって新たな活躍の場を得られる人たちにとっても大きなチャンスとなるはずです。なんでやらないのでしょう。
水谷:これまでは省庁間の縦割り行政もあって、なかなか難しい面もあったようですが、デジタル庁の誕生によって旧来の縦割りを解消する動きが広がっていくことが期待されます。
例えば新型コロナで病床が逼迫しているわけですが、厚労省の管轄もあれば、文科省が管轄する大学病院や都知事の管轄する都立病院もある。それらが1つになってコントロールできれば、もっと効率的なことができるわけです。これと同様のことがいろんな分野で起こっています。
厚労省関係でも、健保もあれば年金もあって、それぞれがバラバラに動いているから届け出も別々に出さなければならない。同じ省庁内でも1つになっていないものがあり、ネットワークは総務省のシステムを使わないと繋がらない。このように省庁を跨ってやっていることを、デジタル庁が音頭を取り、一元管理していけば、非効率なやり方を変えられるのではないかと期待しています。
先程電子インボイスについてお話ししましたが、CSAJ理事の岡本さん、名誉会長の和田さんが、平井大臣を訪問し、電子インボイスの標準化について、デジタル庁のフラッグシッププロジェクトにするとのお話をいただいたそうです。我々の自動化の取り組みが、早速デジタル庁のご支援をいただけるようになりました。
この先も、年末調整や健保の申請など、複数の届け出を出さなければならない手続きを、1つ出せば、関連するすべての手続きが完了するような社会が来なければいけません。我々もボランティアのようにはなりますが、デジタル庁と協力して、あるべき日本の姿へと変革していけるのではないかと非常に期待しています。
CSAJ副会長 田中邦裕氏(さくらインターネット株式会社 代表取締役社長)
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