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阿曽山大噴火
芸人/裁判ウォッチャー
月曜日から金曜日の9時~5時で、裁判所に定期券で通う、裁判傍聴のプロ。裁判ウォッチャーとして、テレビ、ラジオのレギュラーや、雑誌、ウェブサイトでの連載を持つ。パチスロもすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。
JRに怒りを覚えて、カッターで座席を切り裂く
2021年最初なので、今年も気が向いた時に読んでいただければ…と新年のあいさつっぽく。
年明けすぐに東京では緊急事態宣言が発出されました。去年4月の緊急事態宣言の時は、刑事裁判が1日数件だけ、民事裁判に至っては1カ月半もの間、すべて取り消しで0件。今回も裁判の件数は少なくなるんだろうなぁと思っていたら、刑事裁判は連日70件以上あるし、民事裁判は500件くらい行われているんです。ほぼ通常営業。霞ヶ関は7割をテレワークにするって話だったから、裁判もZoomとかで傍聴できるのかと期待したのに。全然、緊急な事態って雰囲気じゃないです、東京地裁は。
さて、本題です。
罪名 器物損壊
R被告人 無職の男性(60)
起訴されたのは4件。2020年9月8日21時13分、JR荻窪駅~JR西荻窪駅を走る東京メトロ東西線の電車内で、R被告人がカッターで座席シート(7万7790円)を切り裂いた件。9月16日21時17分、同所を走る東西線の電車内で、R被告人がカッターで座席シート(11万2420円)を切り裂いた件。9月20日17時48分、JR中野駅~JR阿佐ヶ谷駅を走る東西線の電車内で、R被告人がカッターで座席シート(2万8820円)を切り裂いた件。10月3日19時5分、同所を走るJR総武線の電車内で、R被告人がカッターで座席シート(7880円)を切り裂いた件。
東京メトロ東西線が3件、JR総武線が1件の座席を切られるという結構珍しい事件です。この辺を利用しない人のために説明しておくと、会社は違えど乗り入れの都合で同じ線路の上を走る車両です。被害額を見比べるとJRの座席はリーズナブルな仕上がりのようですね。
検察官の冒頭陳述によると、R被告人は高校を卒業後、職を転々として犯行当時は清掃の仕事をしていたとのこと。前科はなく、今回が初めての逮捕だそうです。
2019年の夏、R被告人はJR中央線に乗り、ドアに寄りかかって出発を待っていたところ、ドアが一瞬開いてすぐ閉まったことでバッグを挟まれることがあったらしい。さらにその年の暮れには、定刻前にドアが閉まって中央線に乗れなかったり、2020年8月には忘れ物をした時の駅員の対応が悪いと感じてJRに対して怒りを覚えていたそうです。それでR被告人は電車内で座席シートを切ることを繰り返していたとのこと。
逮捕当日の10月3日、被害を知った私服警官がR被告人の後をつけ、R被告人が座席に座った後に右手を背中の方に回して、立ち去った後にシートが切れていたので逮捕に至ったというのが事件の流れです。警察に尾行されてるくらいだから、目星はついていたんでしょうね。あと、それくらい被害件数も多かったんだろうなぁと想像できます。
法廷には情状証人として15年間同居している内縁の妻が出廷。今後の監督を約束していました。
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