CULTURE | 2021/01/20

電車の座席シートを切り裂きまくった60歳男性、実は鉄道ファン?ドアにバッグが挟まった腹いせに復讐【連載】阿曽山大噴火のクレイジー裁判傍聴(21)

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阿曽山大噴火
芸人/裁判ウォッチャー
月曜日...

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判決の言い渡しで、裁判官から異例の質問

最後は裁判官からの質問。

裁判官「ストレスを解消するために楽しんでいたってのもあったんですか?」
R被告人「そういうものあったかな、と」
裁判官「もしね、今後電車乗っててシートを切り裂いている人を目撃したらどうします?」

切られたらシートを見掛けること自体が珍しいのに、現行犯でその状況に出くわすことはないと思うんだけど、見掛けたらどのような行動をするのかと問われて、

R被告人「その時はやってる人に声を掛けようかと思ってまして、一緒に警察署に行こうかと考えています」

と、まさかこういう質問が飛んでくるのを想定していたのか、犯人を連行すると考えているようです。相手は刃物持ってるから駅員に連絡する方が安全な気もするけど、シート切りの先輩として、犯人の気持ちを理解できるかもしれないですね。

裁判官「声掛けるとあなたに良いことあるの?」
R被告人「自分と同じことを繰り返してほしくないので」
裁判官「その心がけ、亡くなるまでずっと続けてくださいね」

と、死ぬまでの約束をしたところで質問終了。

この後、検察官が懲役1年6月を求刑して、初公判は閉廷です。

初公判から3週間後の1月14日に判決が言い渡されました。結果は、懲役1年6月執行猶予3年。判決理由としては、繰り返し行われていて、シートを切り裂いた幅も長く、大胆で悪質な犯行であると指摘。しかし、被害の一部を弁償しているし、内妻が監督を約束していて、前科もないので執行猶予を付けたという内容です。

これで終わりかと思いきや、

裁判官「4つの起訴状を省略せず、しでかしたことをあえて読み上げました。判決の理由で、“大胆かつ悪質”と言いましたけど…、言っちゃあ悪いですけど、いい大人がよくこんなこと繰り返してくれましたねぇ、と。自分でしたこと、子どもに伝えられない犯罪じゃないでしょうか?」

と判決の後に、質問をしたんです。ものすごく珍しい。説諭をする裁判官はいるけど、質問をする裁判官がいるなんて。そして、R被告人に子どもがいるって話は出てきてなかったので、幼い児童たちって意味でしょうかね。その答えが、

R被告人「そうですね…。なんで…、繰り返しやってたのか、今となっては…」

裁判官「精神的苦痛を与えたことも考慮して償ってください」

とアドバイスして閉廷でした。

前科がないんだから、59年間犯罪とは無縁だったのにねぇ。よっぽど大切にしてたバッグが見つからなかった怒りが座席シートに向かってしまったんでしょうかね。本人さえも、よくわかってないのかな、と感じましたけど。


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