1年かけて1着だけ、最高の服を作る
―― そういったタレント性に頼らないデザイナーズブランドはどうしたらよいと思いますか?
恩地:そうですね…。誰でも作れるものは文字通り誰でも作れるじゃないですか。僕、毎シーズン思うんですけど、デザイナーは半年で30種類ぐらいの洋服を作るわけです。それも、どこかからパクってきたアイデアではなく、コンセプトからなにから全部考えてやるんです。やっぱりそれってすごいことで、そこに勝ち目があるんじゃないかと思っています。
さらに言えばそういうデザイナーがちゃんとメシを食えて稼いでいける世の中を作りたいと思っています。正当に、本当にいいものを作っているんだぞという人たちが、ちゃんとものづくりに集中できる世界、ということです。
先日行われた所有ブランドの展示会。会場では草花を用い世界観を表現した
―― 確かに、理想的な世の中かもしれません。でも実現するとなるとハードルは高そうですね。
恩地:音楽業界のような形をファッション業界の中にも実現できればな、とは思っています。例えば曲が大ヒットすると、それがカラオケとかBGMとかでたくさん使われるわけじゃないですか。そうすると何もしなくても印税が入ってきて、変な話それだけで食っていけちゃう人もいますよね。
そういった仕組みがファッション業界にもあれば、シーズンごとに30種類も40種類も洋服を作る必要は無くなってくるかもしれない。1年かけて1着とか、本当に自分がすごいものを作ってやるって考え方も可能になってくると思うんですよ。それでその1着が本当に素晴らしいものになったとしたら、ファッションって楽しいなって思う人がもっと増えると思うし、作り手としてもファッションだけじゃなく、建築でもアートでもやりたいこと、できることの幅が出てくると思うんです。
やっぱり、ものを作るためのインフラ整備がちゃんとされていれば、もっとこだわったものづくりができるようになるんだと思います。そうすると無駄なものを作らなくてもいいから、すぐ買ってすぐ捨てられるということも少なくなり、よりサステナブルになる。僕はそれが一番いいかたちなんじゃないかと今は思っています。