1万円のTシャツを売るのが一番難しい
―― お話を聞いていると、ファッションブランドってかなり地道なビジネスだと気付かされました。正直、一発当てて荒稼ぎみたいな印象もあったので。
恩地:有名になって高額の限定商品リリースを連発して一気に稼ぐ、みたいなところもありますね。ネガティブな意見も多いですが、ビジネスとしてはすごく正しいなって思います。
――しっかりビジネスを成功させているわけですもんね。
恩地:そうですね。あと、それはブランドビジネスの面白みでもあって、ファッションブランドって最初はすごく大変だけど、ある程度ブランドの価値が世の中に広まった瞬間に、勝手に売れていくようになるんですよ。普通はコストを投下した量に比例すると思うのですが、広告を出したりしなくても、ブランド名やロゴが入っているだけでドンドン売れていくんです。そうなっちゃえばもう勝ちですよね。
――ある種ブランドの到達点という感じですね。でもそれは恩地さんのやってらっしゃるようなブランドとは反する考え方なんじゃないかと感じます。
恩地:そうですね、マス向けの低価格ブランドでも、ハイブランドでもない僕たちのような中間層のブランドは、カルチャーを作っていかなければならないんです。例えばアーティストのMVで使われたりとか、あのシーンで流行っているだとか、何かに裏付いたカルチャーを作っていくことが重要だと思っています。
例えば、1万円ぐらいのTシャツって売るのがすごく難しいんですよ。ファストファションの1000円のTシャツだったらもちろん売れますし、ハイブランドの5万円のTシャツも買う人がたくさんいるんですよね。でも僕たちが扱うような1万円ぐらいの価格帯となるとちょっとだけ高いというか、何かしらの理由付けとなる背景なりが無いと買わないんです。
僕はブランドビジネスって「最強の詐欺ビジネス」だと思っているんです。ブランドの力を使い、どんなふうにして目に見えない価値を感じていただくか。そして最終的に買ってもらうか、ということです。