CULTURE | 2023/05/23

車の閉じた環境でこそ聴くべき現代のルーツ・レゲエ〈ジェブ・ロイ・ニコルズ/Monsters On The Hill〉

※本記事はウェブメディア「JAF Mate Online」にてFINDERS編集部が編集協力を行っている連載「わたしのド...

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※本記事はウェブメディア「JAF Mate Online」にてFINDERS編集部が編集協力を行っている連載「わたしのドライブミュージック」から転載しております

音楽好きの著名人が、月替わりで車やドライブにまつわる音楽との思い出とともに至高のドライブミュージックを紹介します。

今月お届けする4曲の選曲を担当するのは、ラジオDJなどで幅広く活躍するブロードキャスターのピーター・バラカンさんです。

聞き手・構成=柳樂光隆 / 編集=赤井大祐・神保勇揮(FINDERS編集部)

4曲目 Jeb Loy Nichols / Monsters On The Hill 『United States Of The Broken Hearted』

去年の暮れに出会った途端にノック・アウトされたのがジェブ・ロイ・ニコルズの『United States Of The Broken Hearted』。わりと地味だけど、好きなレコード。彼のことは名前だけ知ってたけど聴いたことがなかったんです。でも、友達から突然「気に入ると思う」とURL付きメイルが来たから聴いてみたら、すごく響いたんですよ。調べたらエイドリアン・シャーウッド(80年代からイギリスで活動するダブのシーンの名プロデューサー。ON-Uレーベルを主催)がプロデュースしていて、音作りがすごい。エイドリアンは時々ついていけないハードすぎるダブをやることもあるけど、ここではそれをすごく抑えているんです。

25年くらい前にビム・シャーマンの『Miracle』(エイドリアン・シャーウッドがプロデュース)というレコードがあって、僕はそれがすごく好きだったんです。ジェブ・ロイのアルバムを聴いたときにそれを思い出したんだけど、あとになってエイドリアンが『Miracle』を引き合いに出して、ジェブ・ロイを語っているのを見て、やっぱり!って。レゲエやダブの要素をすごく繊細に使ったり、チェロやトランペットも入れたりしていて、洗練されたすごく趣味のいいアルバムだから車で聴くととにかく気持ちがいい。1か月ぐらいずっと積んで繰り返し聴いていました。

エイドリアンがプロデュースしたものだったら、ホレス・アンディの去年のアルバム『Midnight Rocker』も素晴らしかった。今までホレス・アンディはそんなに聴いてこなかったんですよ。僕は(ホレスとコラボしている)マッシヴ・アタックも好みじゃなかったから。でも新作にはノック・アウトされました。ルーツ・レゲエは70年代の音楽だから、今、こんな音楽をやってる人なんてほとんどいないと思うんだけど、すごく響いた。僕の車は高級車じゃないし、すごく静かというわけではないけど、車という閉ざされた環境で聴くとジェブ・ロイやホレスのアルバムの音のよさがすごくよくわかったんですよ。

1曲目「ピーター・バラカンが秘密の海岸まで友人の車で走った〈ジョージ・ベンソン/Breezin'〉」はこちら

2曲目「初運転はLAのフリーウェイ。ラジオから流れた極上のファンク〈ザップ/Doo Wa Ditty (Blow That Thing)〉」はこちら

3曲目「新しい音楽を見つけるなら車の中。ついつい聴いてしまう一曲〈ジェリー・ガルシア・バンド / And It Stoned Me〉」はこちら

ピーター・バラカン

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1951年ロンドン生まれ。ロンドン大学日本語学科を卒業後、1974年に音楽出版社の著作権業務に就くため来日。現在フリーのブロードキャスターとして活動、「バラカン・ビート」(インターFM)、「ウィークエンドサンシャイン」(NHK-FM)などを担当。著書に『魂(ソウル)のゆくえ』『ぼくが愛するロック 名盤240』などがある。ウェブサイトはhttps://peterbarakan.net